東京シングルず

新田にのこ

第1話 東京一人暮らし(初)





まあまあ晴れた朝




オレは築35年の3階建アパートの1階、102号室の前で腕を組みながら、


何回も塗り直したであろう年季が入ったエンジ色の扉を見つめた




「ここがオレだけの城、かぁ」




東京で、オレの人生初めての一人暮らしが始まる!






早瀬 次郎はやせ じろう、27歳




千葉の自宅から通えるというだけで選んだ適当な私立大学を卒業後、


とある会社に就職したがあまりにもブラックだったので2ヶ月で退社し、


その後4年間ちょい、たまにバイトをするだけでプー太郎として過ごしてきた




何せ、東京に近い千葉の某市に実家がある


親はぶつぶつ言いながらも長男可愛さに養ってくれた




まだ若いしなんとかなるっしょ、と呑気に構えていると、


高校の同級生の1人が結婚したという噂を耳にしてしまった…!




なんだか色々焦ったオレは、割と頑張って就活、人手不足も手伝ってかなんとか就職できたのだ


しかも東京で!




暇な間にやっていた3Dモデリングや動画編集の腕を買われたらしい




良かった…本当に良かった…


が、すでに妻を養い(しかも妊娠中らしい)家のローンを払っているという同級生の足元にも及んでいないが




「ま、まあいい。さて、オレの城に入るかな」


すごくレトロな鍵をガチャと回した




なんとなく独特の匂いがする


まだ"自分の家"じゃない感じだ




がらんとした古い木の床の部屋にオレの荷物が少し、


予め運び込んでいた段ボール5箱のみ




「ゲームみたいに、少しずつ家具を揃えていこう!」


と考えて、家具は全然買っていない




前の住民が置いて行ったという洗濯機をそのままもらったが、ちょっとカビ臭い


「うーん、漂白剤で汚れ落ちるかな」




あとでドラッグストアで洗剤系を買ってこよう、そうだ指定ゴミ袋も…


「メモしないと忘れるやつ」


オレは"その他"と書かれている段ボールからペンとスケジュール帳を取り出した




「ゴミ袋…」




そう書いた時




バババババ




と大きな音がして、




オレが立っていたところのすぐ横に、爆音と土煙のようなものと共に天井から色んなものが落ちてきた!


それは結構重そうな家具などの塊で、


真下にいたらオレの命はヤバかっただろう




驚きのあまり脳みそが働かず呆然としていると、


その塊がモゾモゾバキバキボロっと動き、




中から女の人が出てきた!





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