032 : うるさい冷蔵庫

【今回のお題】

 怒った冷蔵庫/消えた靴下/不機嫌な月曜日

 

【完成した作品の味わい】

 すこしふしぎな日常



   ★   ★   ★



 家電が人格を持つようになって久しい。うちの冷蔵庫も例外ではない。


「最近、ビールを飲み過ぎでは?もっと控えた方が良いですよ」

「あまり野菜を摂っていませんね。もっと食生活に気を配ってください」


 健康増進法が改正され、様々な商品について、健康に気を配ることが要求されるようになった。

 特にキッチン家電は食生活に直接関わるもの。

 AI技術を駆使し、使用者の健康についてアドバイスをする。

 健康のためには仕方がないと思う反面、……正直うるさい。

 ここまで人間のように喋らなくてもいいのではないか。

 せっかく気楽な一人暮らしをしているのに、これじゃまるで母親の小言だ。

 黙って冷やしてくれればいいのに。



 ある夏の土曜日。

 高校の同窓会に参加し、友人たちと遅くまで飲んだ。懐かしい話に花が咲き、酒が進む。

 気が付けば朝日が昇り始める時間。始発電車で自宅に戻った。


 朝から蒸し暑い。

 エアコンをつけるが、すぐには涼しくならない。


「うへぇ~、暑ぃ~」


 服を脱ぎ散らして、パンツと靴下だけになる。それでも全然涼しくならない。

 足も火照っている。何とかしたい。

 ……そうだ!

 冷蔵庫に目が行った。



 昼過ぎ。

 パンツ一丁でリビングに転がっていた。頭が痛い。飲み過ぎた。

 服があちこちに散らばっている。

 我ながらダメな癖だなと思いながら、拾い集める。

 ……靴下が、見当たらない。


 その時、冷蔵庫が不機嫌な声を上げた。


「やっと起きましたか。早く来てください!」


 持ち主を呼び出す家電ってどうなんだ。

 こちらは体調が悪いというのに。


 ふらふらと近づくと、冷蔵庫が怒鳴った。


「腐ったものを入れないでください!」


 開けてみると、そこには――靴下。

 俺の足の匂いをたっぷりと吸収した、しっかりと冷えた、昨日の靴下があった。


 思い出した。

 「冷やしたら気持ちいいんじゃないか」と思って、突っ込んだんだった。


「まったく……食品衛生のことも考えて下さい」


「すまん……」


 月曜日。

 出勤前に冷蔵庫からエナジードリンクを一本取り出して飲む。

 冷蔵庫はまだ不機嫌だ。


 とりあえず、体によさそうなサラダでも買って入れてみるか。




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