第2話世界の色彩

リルを家に迎えた光は、幼馴染みの神楽蓮に相談した。蓮は最初こそ驚いたが、光の真剣な様子を見て協力することに決めた。

「とりあえず、そのカウントダウンが止まる条件を探るしかないだろ」蓮がクールに分析する。「『人間の心』ってのがちゅうしょうてきだな」

「うん。でも、リルはこの世界のこと、何も知らないんだ」

翌日から、光はリルに様々な「人間らしい体験」をさせてみた。初めて食べたコンビニのおにぎりに感動するリル。公園で猫を追いかけるリル。光は、無邪気にはしゃぐリルを見ていると、自然と笑顔になれた。

「光、空ってこんなに青いの?」

「そうだよ」

「雨の匂いって、切ないんだね」

リルは、光が普段見過ごしていた世界の美しさを、一つ一つ拾い上げていった。

光は、そんなリルの純粋さに次第に惹かれていく自分に気づき始める。

同時に、蓮もまた、リルの存在によって少しずつ変化していた。普段は無口な蓮が、リルにだけは優しく接するのだ。

「蓮は格好良いね。光は可愛い」リルは無邪気に言う。

「うるさい」光は照れる。

光は、リルが消えてしまうという恐怖を感じ始めていた。カウントダウンは着実に進んでいる。48:00:00。光の心には、温かい感情と切ない痛みが混在し始めていた。

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