世界設定がバグってるらしいが、俺は今日も平常運転です。〜気づいたら神様より強かったけど、そんなつもりはないんです〜

@takegeeeee

バグ、発生しました。

気づいたら、青空の下だった。

草原。風。鳥の声。

……仕事場の蛍光灯のチカチカじゃない。


「……あれ、俺、徹夜明けで帰宅中だったよな?」


確かに、PC前でバグ報告書を打ってたはずだ。

エラー内容:「地形データが消失します」。

あれを修正して……そのまま寝落ちしたような。


「……まさか転生、ってやつ?」


口にした瞬間、頭の中に何かが流れ込んだ。

ステータスウィンドウ。見慣れたUI。

というかこれ、前職のデバッグツールじゃねえか。


```

【システム権限:開発者】

【モード:デバッグ】

【スクリプト修正権限:ON】

```


「おいおいおい、バグだろこれ。

 転生者にデバッグ権限つけたら世界終わるぞ」


俺がそうつぶやいた瞬間、

地面がビリッと光った。


──ピコーン!


《地形データを修正しました》

《不整合エリアを黄金の道に変換しました》


「……なんで修正走るんだよ。」


目の前にできたのは、金ピカに輝く一本道。

あっけに取られて立ち尽くしていると──


「そこの方! あなたが……“聖道の創造者様”ですか!?」


振り返ると、白いローブの女の子。

腰までの金髪。慈愛に満ちた笑顔。

典型的な「聖女」だ。


「え? あ、いや、俺はただ通りかかって……」


「大地が光り、道が生まれたのです! 神話に記された“再誕の御業”!

 貴方こそ、新たな時代の導き手……!」


いやいやいや。

ただバグ修正走っただけだから。


「おい落ち着け。俺はただ──」


「どうか、この国を救ってください……!」

そう言って、彼女は地面にひざまずいた。


周囲の村人たちもざわざわと集まり始める。

「救世主様だ!」「神が歩まれた道だ!」

やめろ、そういうのは宗教戦争の原因になるやつだ。


「……おい、本当にやばいやつだこれ。」


そう呟いたらまた頭の中でピコーンと音が鳴る。


《フラグ生成:救世主ルート開始》

《対象:聖女リリア》


「ちょ、勝手にフラグ立てんな!?」


──こうして俺は、異世界最初の日にして、

神話の一部に組み込まれてしまった。


……まだ昼飯も食ってないのに。

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