平穏な学園生活 その1

 ホームルーム15分前に席に着席するとクラスメイトたちは何やら透の事を見て騒めく。

 話の内容を聞き耳をたてると内容はどうやら昨日の戦闘のことだっだ。

 すると先に登校していた亮太が近づき透に昨日何があったのかスマートフォンを操作しながら聞く。


「昨日戦闘したそうだな、それでどんな奴と戦ったんだ?」


 こめかみを抑えながらうーんと唸りながら名前を思い出す。


「確か、乾荒って名乗っていたような」

「あっ、見つけた見つけた。乾荒」


 本来は閲覧出来ないはずの乾荒のプロフィールの内容を亮太は見ていた。


「乾荒、身体190cm、体重85kg、男のプロフィールを見てもつまらねぇな」

「俺もその辺は興味ねぇよ。つーか女子の見るなよ。ヘンタイ。いいからあいつの試験結果を教えろよ」

「成績は筆記試験は下から2番目。ウチに入学出来るボーダーラインギリギリで能力ランクはSランク」

「頭に血が上っていふとはいえ、頭良さそうに見えなかったからな。逆によくギリギリだったな。つーかアレでSランクか」


 白紙で出したアホゥが何を言っているだと言いそうになるくらい呆れた顔をするしかない亮太。


「感覚を麻痺るな、土系統の能力の場合、ゴーレムを生成しかも色々ギミック付きで出来ればSランクはいくぜ普通。登録されている能力者で世界でSSは約1万人、Sランクは約10万人の割合なんだぜ。Sランク行くだけで能力者として優秀なんだよ」

「それで、総合順位20位って言うのはホントか?」

「それもホントみたいだぜ。特に俺らの世代は能力者ランクでSS以上が4人Sランクが10人だぜ。そこから筆記試験や実技試験での内容を合わせて決められているみたいだな」


 すると亮太はへぇと感嘆の声を漏らしプロフィールを凝視する。


「乾っていう奴は精密性は不得手だが特に火力と発動速度に関してはお前と同等の成績を出しているな」


 透は昨日の戦闘を思い出す。確かに能力の火力は十分あったなと思い出した。

 透のその姿をみて亮太は諦めた顔して吐き捨てる。


「なあ言っただろ静さんに迷惑かけるじゃねぇーよ。俺が何か言われるかもしれないじゃねーかよ。ったく、構わずケンカを買うなよ。全く」


「まあ、悪かったと思っている」


 不機嫌そうな顔して謝る透。


「そう言って何度こっちが迷惑したか」


 その態度にため息をつく亮太。そして気を取り直ししてニヤニヤしながら聴く。


「で、実際のところどうだったの乾荒っていう能力者は」

「確かに成績通り、そしてアイツの大言壮語通り、能力は強かった。正直ナメてた。能力を使わず戦ったのはちょっと反省、反省」

「へえーそりゃあ興味深い。お前が反省するなんて珍しいものを見た気がする」


 目を細め先ほど以上にニヤニヤする亮太


「とはいえ、能力頼りのチンピラだよ。やっぱり近接戦はただのゴミだよ」

「軍の格闘術や本格的な武術をやってたお前が相手ならチンピラごときの近接戦なんてヒヨコレベルだろうよ」


 そんな話をしていると


「おはようございます」


 教室に入って来て挨拶をしてくれたのは白神アリスだった。


「おいーす」

「うすつ」


 二人にも短く挨拶を返す。


「ねえねえ、アリスちゃん。昨日こいつの戦闘見てたんでしょ。どうだった」

「・・・・・」


 ここ2日で理解したがアリスは感情を表に出すことがほとんどないようだ。

 しかしこのとき少しだけは辛そうな顔をしたがすぐにいつもどおりの顔となり


「そうですね、あの戦いぶりはどこが素晴らしくて憧れるところがありました」

「へぇー素晴らしくて憧れるねー」


 そして亮太は透をアリスに会話が聞こえない位置に連れてた。


「お前なにしたの?あれか白馬の王子様的なことでもしたのか?」

「アホか、さっき説明しただろ。ほぼ舐めプでやっただけだ」

「じゃあー何でアリスちゃんはあんなことを言ったんだ?」


 亮太は眉をひそめてそんなことを聞く。


「さぁな。ただ一つ言えることは、あいつは強くなりたいと思っている。理由はわからないし興味もないがな」

「ほえーそうなんだ。なんだかお前そっくりだな、手段はお前の方が最悪だがな」


 チラリとアリスの方を向くとため息をつく。なぜなら右隣の席に座った白神アリスが頓珍漢なことをしているからだ。

 席に着こうとして滑って机に頭をぶつけたり、本を読もうとして本が逆さになったりしていたら誰でもため息をつくであろう。


(昨日は、さすがにやり過ぎたか?それに表情はいつも通りだが凄く動揺しているなーどうしようかな、いいやめんどくさー)


 はーっと先ほど以上に深いため息をする透であった。


「みんなおっはよー。そろそろホームルームだから席に座ってねー」


 透がセンチメンタルな気分になる中そんなこと関係なしに唯は教室に入って来て元気な声が教室中に響いた。

 そしてタイミングよくチャイムの音が鳴り響き、クラス委員長の御沙希が号令をする。

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