第10話 ギルドマスターに出世していたかつての美人教え子



 模擬戦のあと、レイナに『うちの騎士団に入ってくれない?』と声をかけられたが俺は首を振った。


「ありがたい話だ。あと20年若かったら飛びついていたかもしれん……だが、今の俺には荷が重い。それ、権力の近くにいるとどうも身構えちまうんだ。あんなことがあったから……」



 なんでもかんでも正論をぶつけてしまう俺の性は権力に近い騎士団でも不和を起こす可能性だってある。



「じゃあ、官庁の文官とか。昨日だって、すごく感謝されてたでしょ?」

「それも嬉しいが……俺はまだ、もう少し自由でいたい」



 レイナは少し残念そうな顔をしたがすぐに笑った。


「じゃあ、そのうち気が変わったら声かけてね。あなたみたいな人材はそうそういないもの」



 だから俺はもう一度冒険者として生きてみることにした。


 王都のギルドで登録し直せばいい。

 過去のことは気にせず、新しい地でやり直すにはちょうどいい選択肢だ。



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 ただ、登録のためにギルドに足を踏み入れた瞬間から、少し嫌な予感はしていた。



 受付に並んでいた男たちが俺を見るなりニヤつく。



「なんだよおっさん。冒険者志望か?」

「この歳で命張るとか正気かよ?」

「ま、せいぜい今日中に食いっぱぐれないように頑張りな!」


 こういうのは昔からいる。

 いわゆる業界特有の洗礼というものだろう。


 新人に対して高圧的な態度を取ることでひ弱な人間が冒険者にならないようにするために長年培われてきた慣習というものだ。


「励ましありがとうよ――――そうだ。励ましついでに俺と手合わせでもしてくれないか」



 こういうときはシンプルに力で認めさせるのが1番だ。



「おう、望むところよ!」



 ――――5分後にはその男たちは床に転がっていた。



「ま、参った……」

「やべぇよ、こいつ。ただのおっさんじゃねえ……」



 ギルド内がざわつく中、奥から現れたギルドマスターらしき女性の声が響いた。



「騒がしいと思ったらあんたか……フランツさん」


 俺はその声を聞いて目を丸くした。


「……リリアか?」


 そこにいたのは、かつての同僚――――いや、俺が教育係として指導した新人だったリリア・アストレア。



 優秀で、誠実で、正義感に満ちた女性だった。



「まさか、あんたがこっちに来るとは思わなかった。何年ぶりだ? どうしてここに来たんだ? まさかわたしに会いに来たとか?」



 ケラケラと笑いながらも突然王都に姿を現した俺のことを不思議に思ったのか怪訝な表情を見せる。



「――――なんかあったのか?」

「相変わらず勘が鋭いな」


 俺はこれまで自分の身に起こったことを素直に話した。


 追放されたこと。

 その首謀者がライネルであること。

 騎士団にお世話になっていること。


 話し終えるころにはリリアの顔は真っ赤になっており大量の魔力がその身体から漏れ出していた。


「クソったれだな……あいつ。よし、今すぐ殴り込みに行くぞ」

「待て待て待て。普通に問題になるからやめておけ」

「――――冗談だよ。だが、わたしの怒りは本物だ」

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