第8話 初デート
土曜日の朝。真はアラームが鳴る数分前に目を覚ました。今日は、結衣との初めての「女子のデート」の日だ。心臓は既に、高まる期待と未知の領域へ踏み出す不安で激しく脈打っていた。ベッドから抜け出した真は、毎朝の習慣となっている身体のチェックを終えると、部屋の鏡の前に立った。制服ではなく普段着で外へ出る日は、特に自分の体を意識してしまう。鏡に映るのは、あの日から成長を続ける思春期の女の子の体だ。その事実が、真に小さな「自己肯定感」と同時に、抗いようのない羞恥をもたらす。
(女の子の体で、結衣とデートに行くのか……)
真は深く息を吸い込み、自分の鼓動を鎮めた。
真はパジャマ姿のまま、一階のリビングへ降りていった。ママの美和と咲が既に食卓についている。
「おはよう、真。早く食べちゃいなさい。今日は忙しいんでしょ?」
ママはトーストを焼きながら言った。真はトーストをかじりながら、決心を固めた。今日は特別な日だ。失敗はしたくない。
「あのさ、お母さん。今日、結衣とデートだから…… 髪、セットしてもらえる?いつものひとつ結びじゃなくて、ワンピースに似合うような、何か可愛いの」
美和は、真が自分から「可愛らしい髪型」を要求したことに、驚きと喜びで顔を輝かせた。
「ええ、もちろんよ! 真が頼んでくれるなんて、嬉しいわ。任せてちょうだい!」
真は朝食を済ませた後、自室へ戻り、デートの服に着替えた。ネイビーのシンプルなワンピースだ。着るのに躊躇を覚えるが、結衣が褒めてくれたという記憶が、真にわずかな勇気を与えていた。ワンピースに袖を通すと、改めて女の子の体を実感する。スカートの裾が太腿で揺れるたび、胸がざわついた。足元にはヒールの低いベージュのパンプスを合わせた。水色のミニショルダーバッグを小脇に抱え、部屋で最終チェックをする。
真は準備を終えると、美和が待つリビングへ戻り、鏡の前の椅子に座った。
「このシンプルなワンピースには、清楚だけど動きのあるスタイルが良いわね。軽やかさが大切よ」
美和が選んだのは「ハーフアップ」だった。耳の上の髪だけをすくい取り、頭の後ろの高い位置でふんわりと結び、そこを華奢なレースのリボンで飾る。そして、結ばずに残した下の髪は、軽く内巻きにブローして、動きとツヤを出した。
「はい、できたわ。真、見てごらんなさい」
真は恐る恐る、手鏡で自分の姿を見た。鏡の中には、セーラー服の時とは全く違う、見違えるほど可愛らしい少女がいた。ネイビーのワンピースに、清楚なレースのリボンが揺れるハーフアップ。顔周りがスッキリし、清楚でありながら、デートにふさわしい華やかな雰囲気になっている。
「わあ……すごい。お母さん、ありがとう」
真はその変身ぶりに驚き、自然と笑みがこぼれた。美和は、満足げに真の肩に手を置いた。
「真。自信を持って。可愛いわよ。楽しんできてね」
真は美和の魔法で「最高のデート仕様の自分」になったことを自覚し、再び胸が高鳴るのを感じた。
(このドキドキは、新しい髪型と服のせい? それとも、結衣との初デートだからか?)
真は複雑な心情を振り払うように深く息を吸い込んだ。
「うん、行ってくる!」
ヒールの低いベージュのパンプスに慣れない真の足取りはぎこちなく、人通りのまばらな古い郊外の町を、少し緊張しながら歩いてきた。真が最寄りの駅の改札前にあるロータリーに着くと、結衣はすでにベンチに座って待っていた。結衣は今日、いつもと雰囲気が違っていた。長い髪を後ろでゆるくシニヨンにし、目深にキャップをかぶっている。服装も、ゆったりとしたパーカーにジーンズという、ボーイッシュなスタイルだ。
「真!」
結衣は、真の全身コーディネートを熱狂的に褒め称えた。
「か、可愛い!!完璧! そのハーフアップ、レースのリボンが、真の清楚さを最大限に引き出してる!」
真は、全身が熱くなるほどの羞恥心を感じながら、すぐに結衣のボーイッシュな格好に不満をぶつけた。
「おい、結衣。なんだよ、その格好。俺だけが、こんな恥ずかしい格好させられて……」
結衣は、悪びれる様子もなく、自分が真のプロデューサーであるという役割を主張した。
「ふふ、ごめん、ごめん。でも、今日は真をコーディネートするのが目的なの!私が目立っちゃったら、真の可愛さが引き立たないでしょう?」
真は、結衣の熱意に圧倒され、反論する言葉を失った。
「……そういうもんか」真は、小さく呟いた。
結衣は、真の顔を覗き込み、ニッコリと笑った。
「大丈夫!だから、約束。次の土曜日は私がお洒落していく番。そのときは、二人で最高のデートファッションで出かけようね」
結衣の屈託のない笑顔と、「次の土曜日」という約束の言葉が、真の心に予期せぬ衝撃を与えた。真の胸が、ドクンと強く脈打った。
(次のデート……二人で、最高のファッションで)
真は、自分の心境の変化に、戸惑いを覚えながらも頷いた。
「わ、わかったよ……」
結衣は、真の返事を聞くと、さらに興奮した様子で言った。
「よし!コーディネートも合格! さあ、真!初デート、出発進行よ!」
そう言うと、結衣は躊躇なく真の右手を掴んだ。真の心臓は、驚きと結衣の体温によって一気に高鳴った。蓮に庇われた時のような、予期せぬ外的要因による動悸とは違う。これは、親密な友人の温もりと、女子として手をつないだことへの強烈な羞恥が混ざり合った、新しい種類の動悸だった。真は、この温かさを振り払うこともできず、慣れないパンプスを履き、結衣に手を引かれるまま駅の改札へと向かった。ネイビーのワンピース姿の真と、パーカー姿の結衣。二人は手をつないだまま、目的のショッピングモールがある駅へと向かう電車に乗り込んだ。
真と結衣は、最寄り駅から目的地の大型ショッピングモールへ向かう電車に乗り込んだ。車内にはそれなりの乗客がおり、真はネイビーのワンピースにハーフアップという姿で、見知らぬ人々の視線を恐れていた。真は、慣れないパンプスを履いた足を前に投げ出すことすら、恥ずかしかった。真の横で、結衣は楽しそうに窓の外を眺めている。
「真、大丈夫?そんなに固くならなくても。誰も真のこと、変だと思ってないよ」
結衣は、真の手にそっと触れた。
「むしろ、可愛いなって思ってるはず!」
真は、結衣の言葉に顔を赤くしたが、その手の温かさに少し安堵した。
「うるさい……結衣はいいよな、いつもの格好なんだから。俺だけが、こんな慣れない服で……」
「これが慣れない服なんて、すぐに言えなくなるわよ!だって、真は今日から本格的に女の子デビューするんだから!」
結衣は、楽しそうに笑った。
結衣は、真のネイビーのワンピースを見つめ、満足げに頷いた。
「それにしても、このワンピース、やっぱり正解だったね。真の長い髪と白い肌によく似合ってる。今日のショッピングで、これに合うカーディガンとか、もう少し
結衣は、真の「プロデューサー」として、すでに次の段階に進んでいた。真は、結衣の止まらない熱意に圧倒されながらも、自分のコーディネートが、結衣によって褒められていることに、わずかな誇らしさを感じていた。
「アクセサリーなんて、いらないだろ……」
真は、小声で抵抗した。
「ダメよ!シンプルな服ほど、小物で差がつくの。それが女の子のたしなみよ!」
結衣は、真の「男子の常識」を、容赦なく「女子の常識」で塗り替えていく。真は、自分の古い価値観が、結衣の言葉によって崩されていくのを感じた。
電車がショッピングモールのある駅に近づくにつれて、乗客が増え始めた。真の緊張も再び高まる。結衣は、真の表情を見て、ニヤリと笑った。
「まぁ、緊張するのはわかるけど。真、今日は絶対に可愛い服と、似合う小物を見つけるからね!可愛い女の子になるための修行よ!」
「修行か……」
真は、小さくつぶやいた。真は、人々の視線、パンプスの痛み、そして新しい自分になるためのこの「修行」に、抗いがたい興奮を覚えていた。それには、結衣との関係が深まることへの純粋な期待もあった。
「よし、そろそろ着くね!」
電車がスピードを落とし、目的地の駅に滑り込む。真は、結衣と手を取り合って電車を降りた。
電車を降りた真と結衣が向かったのは、目的のショッピングモール最寄りの駅の改札だった。そこも真たちの最寄り駅と同様に、閑静な郊外の駅で、駅前も人通りはまばらだった。真は、駅のホームを歩きながら、その人の少なさに安堵の息を漏らした。
(よかった……ここも、人が少ない。こんな格好で、人混みの中を歩かなくて済む)
真は、ネイビーのワンピース姿を周囲に晒すことへの羞恥心を抱えていたが、閑静な環境は真の緊張を大きく緩和させた。真は、ハーフアップの髪を揺らしながら、少しだけ胸を張って改札を抜けた。
駅のロータリーに出た真と結衣は、ショッピングモールまでの道のりを確認した。
「ここからモールまで歩いて10分くらいかな。ちょっと遠いよね」
結衣は、不満げな表情を見せつつも、その楽しそうな笑顔は隠せない。
「まあ、でも人が少ないから、真は安心でしょ?さあ、行こう!」
結衣は、真の右手をしっかりと掴んだ。真の心臓は、結衣の熱い手の温もりによって高鳴る。
「待って、結衣! 速いって!」
真は、そう声を上げながらも、慣れないベージュのパンプスの痛みに耐え、必死に結衣に遅れまいと歩き続けた。結衣は、真の苦闘に気づいているものの、「早く真を可愛いものに囲ませたい」という熱意が勝っているようだ。
真は、痛む足と、結衣の手に引かれる温かさを感じながら、ようやくショッピングモールの大きなガラス張りの入口に到着した。
「はぁ、はぁ……結衣、速すぎだろ……」
真は、壁に寄りかかり、痛む足を休ませた。結衣は、真の苦労をねぎらうように笑った。
「ごめんごめん!でも、着いたわよ!ここからが本番! さあ、真!可愛い女の子になるための修行を始めましょう!」
しかし、真は一歩も動けなかった。
「待って、結衣」
真は、真剣な表情で、パンプスを履いた足を抑えた。
「ちょっと足が痛い。ごめん、少しだけ座って休憩しないか? このままじゃ、まともに歩けない」
真は、せっかくのデートの出鼻をくじくことに申し訳なさを感じたが、足の痛みには勝てなかった。
結衣は、真の痛みに耐える表情を見て、すぐに事態を察した。
「えっ、ごめん!私が引っ張りすぎたね!パンプスに慣れてないのに、無理させちゃった!」
結衣は、優しく真の肩を抱いた。
「よし!まずは作戦会議を兼ねてカフェに入ろう! 座って、パンプスを脱ごう!」
二人は、モールの入口近くにあった、比較的空いている明るいカフェに入った。席に着くやいなや、真は迷うことなくパンプスを脱ぎ捨てた。解放された足の裏と指の付け根には、既に赤く擦れた跡が残っていた。
「うう……もう二度とパンプスなんて履きたくない」
真は、心底うんざりした表情で足をさすった。結衣は、自分のバッグから絆創膏を取り出し、真の足の痛む部分に手際よく貼ってくれた。
「ごめんね、真。ヒールが低いとはいえ、やっぱり普段履き慣れないとダメだよね。女の子も、慣れないお洒落は修行なのよ」
「修行か……」
真は、その言葉に、今日のデートが「楽しい遊び」ではなく、「新しい自分になるための試練」であることを改めて痛感した。真がアイスコーヒーを飲み、足の痛みが落ち着くと結衣は言った。
「よし、作戦会議再開!服は家にあるから、今日は小物とコスメに集中よ。真の美肌を活かす、簡単なメイク用品と、髪を飾る小物、そして次のデートのために歩きやすい靴を見つけよう!」
真は、「次のデート」という言葉に、またも胸がドキッとするのを感じた。
「靴?でも、ワンピースにはパンプスが常識なんだろ?」真は、結衣の「女子の常識」に逆らうように尋ねた。
結衣はニヤリと笑った。
「ふふ、常識はアップデートするものよ。真の足が痛くなるようなお洒落は、お洒落じゃない! 次のデートは、パンプスにも劣らないくらい可愛い、歩きやすい靴を見つけるわよ!さあ、行くわよ!」
休憩を終え、真は絆創膏を貼った足に再びパンプスを履いた。真は、結衣の熱意と次のデートへの期待に背中を押され、女子としての初デートのショッピングへと向かうのだった。
休憩と応急処置を終えた真と結衣は、痛む足に力を入れ、コスメ・雑貨フロアへ向かった。売り場には、色とりどりのボトルやパレットが並び、真には眩しいほど華やかな世界が広がっている。結衣は、まるで自分の庭のように慣れた足取りで、真を引っ張った。
「さあ、真!まずは日焼け止めとリップよ!真は肌がきれいだから、ファンデーションなんてまだいらないけど、紫外線対策と血色感は必須!」
真は、結衣の「メイク」への真剣さに圧倒された。
「え、日焼け止めはわかるけど……なんでリップなんだよ。それって、派手なやつだろ?」
真は、棚に並ぶ口紅を見て強い抵抗を示した。
「違う違う!これは『色付きリップ』。派手じゃないの!これが女子のたしなみよ!」
結衣は、真の腕を掴み、鏡の前に座らせた。
「いい?真の唇は薄いピンクだけど、ちょっと色を足すだけで、顔全体が明るくなるの。ほら、これ!」
結衣は、ほんのり赤みがかったリップクリームを真の唇にさっと塗った。真は、鏡に映る血色の良くなった自分の唇を見て、再び羞恥と驚きが入り混じる感覚を覚えた。確かに、塗る前と比べて顔全体が健康的で明るく見える。
「な……なるほど、これが『たしなみ』か」
真は、女子の「魅せる技術」の一端に触れたのだった。
次に二人は、ヘアアクセサリーのコーナーへ移動した。ここは真にとって、最も「女子のシンボル」を意識させられる場所だ。結衣は、真のネイビーのワンピースに合うように、真が選んだネイビーのドット柄リボンゴムと同じデザインのバレッタや、控えめなパールのヘアピンを選び始めた。
「真の長い髪は、本当にきれい!だから、飾らないともったいないのよ!」
結衣は、真の背後に回り、パールのピンを真のハーフアップの結び目の少し上に挿して見せた。真は、鏡に映るパールで飾られた自分の後ろ姿を見た。昨日までの真なら、「こんな女々しいもの、絶対に嫌だ」と拒否していたはずだ。しかし、今日は違った。
(……きれいだ)
真は、自分の後ろ姿が「きれい」に見えることに、素直に肯定感を抱いた。この「可愛らしさ」を追求するショッピングは、真にとって自己の新しいアイデンティティを肯定する儀式となっていた。
そして、結衣の提案で、二人は靴売り場へ向かった。目的は、次のデートのための歩きやすい靴だ。
「もうパンプスで泣かない!真の足が痛くなるようなお洒落は、お洒落じゃないもん!」
結衣が選んだのは、ヒールがない、光沢のある黒のバレエシューズだった。
「これなら、ワンピースに合うし、どんなに歩いても痛くならないよ!」
真は、そのバレエシューズを手に取り、安心感を覚えた。真の「女子の常識」は、「ワンピースにはパンプス」で上書きされかかっていたが、結衣は真の身体的な苦痛を優先してくれた。
真は、リップクリームとヘアピン、リボンゴム、そして次のデートのためのバレエシューズという戦利品を手に、結衣と顔を見合わせた。
「結衣、今日は……ありがとうな」
真は、心からの感謝を伝えた。
「どういたしまして!さあ、これで真の女の子デビューの準備は完璧よ!」
コスメや小物の買い物を終えた頃には、ちょうど昼時になっていた。真の足は、絆創膏の上からでもパンプスの痛みが限界に達していた。
「あーもうダメだ……足が取れそう」
真は、半泣きになりながら、結衣に連れられてモールのフードコートへと向かった。席を見つけるなり、真はパンプスを脱ぎ捨て、大きく息を吐いた。
「はぁ……天国だ」
結衣は真の足元にバッグを置いて隠してくれた。
「真、お昼ご飯、何にする?ここはクレープも美味しいし、パスタもいいよ!」
真は、緊張と慣れない歩行で食欲が落ちていたが、結衣の楽しそうな様子に引っ張られ、無難にハンバーガーを選ぶことにした。結衣は、真の食欲が戻るようにと、大きなフライドポテトをシェアしようと提案した。ハンバーガーとポテトを前に、二人はようやく緊張から解放された雰囲気で話し始めた。真は、パンプスを脱いだことで、心身ともにリラックスできていた。
「今日の買い物、楽しかったね!」
結衣は、ハンバーガーをかじりながら言った。
「あのリボンゴム、本当に真の髪に似合うよ。明日から学校でつけてみてよ!」
「う、それはまだ恥ずかしいから、次のデートからにする……」
真は、頬を赤くしながらも、買ったばかりのリボンゴムが入ったバッグをそっと撫でた。結衣は、真が抵抗しながらも新しい自分を受け入れていることを察し、さらに追い打ちをかけた。
「ねえ、真。次のデートはさ、買ったばかりのバレエシューズを履いて、このモールじゃなくて、もっとお洒落な街に行こうよ。二人で双子コーデとか、やってみたいんだよね!」
「双子コーデ!?」真は、ハンバーガーを吹き出しそうになった。
「勘弁して!」
真は拒否したが、その声には真剣な嫌悪感よりも、照れ隠しのニュアンスが混ざっていた。結衣は、真の揺らぎを見逃さなかった。
「ふふ、まあ、双子コーデは冗談としても。真がもっとお洒落に興味持ってくれるようになったら嬉しいな。だって、真と二人で遊ぶの、すごく楽しいんだもん」
結衣の素直な愛情がこもった言葉に、真の心は温かくなった。
(『二人で遊ぶのが楽しい』か……)
真は、結衣との関係が、ただの幼なじみから、秘密と喜びを共有する「女子の親友」へと、確実に変わりつつあることを感じていた。それは、蓮との友情とはまた異なる、安心感と高揚感だった。真は、ハンバーガーを平らげた。
食事の後真は脱いだパンプスを履き直した。足の痛みはまだ残っているが、メイク用品やバレエシューズという戦利品と、結衣との楽しい時間が、真の心を軽くしていた。真は、目の前で満足そうにアイスティーを飲む結衣に、改めて向き直った。
「あのさ、結衣」
「ん?どうしたの、真」
真は、恥ずかしさで顔が熱くなるのを感じたが、真剣な表情で言葉を続けた。
「今日は、本当にありがとう。服のことも、メイクのことも……結衣が一緒じゃなかったら、俺は多分、何も買えなかった」
「もう、水くさいな!私、真のプロデューサーだもん!」
結衣は笑った。真は、さらに少し躊躇した後、口を開いた。
「それから……蓮にも、何かお礼をしたいと思ってる」
結衣は目を丸くした。
「蓮に?どうして?」
「だって、誕生日の時もそうだし、学校でのことも……蓮がいなかったら、俺はもっと辛かったはずだ。だから、結衣と蓮、二人にお礼がしたいんだ」
真は、自分を女の子として支えてくれる二人の幼なじみへの感謝の気持ちが、この「女子の修行」を経て、より強くなっていることを感じていた。
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