第8話 颯希(メイ)
二つ離れた県のホテルにメイこと
俺は刑事さんと結衣と一緒にホテルの部屋でメイちゃんに初めて会った。
結衣には内緒だが、一目で俺は恋に落ちた。実物の方が断然可愛い! 世の中にこんな女性がいるのか? しかも曲を作って歌えるなんて。もう俺は死んでもいい。悪いな、結衣。
刑事は無表情をしているが、やつも同じ気持ちだったことは間違いない。救いだったのは刑事が既婚だったことだ。やつには何の資格もない。
そんな事を考えていたら結衣に引っぱたかれた。どうも表情に出ていたらしい。特に鼻の下が。そんな俺達を見てメイちゃんはクスクスと笑ってくれた。
「こんにちは。風間颯希です。わざわざ来てくれてありがとう。結衣さんは律と知り合いなんですってね。そのギター、律からもらったものなんでしょう。羨ましい」
「私達、メイさんの大ファンなんです。二人でメイさんの曲をカバーして……全曲完コピしてます!」
「ありがとう。結衣ちゃんはいい声してるね。私の曲何か歌ってくれる? 今聞きたいわ。蓮君はギター弾いて!」
「「はい!!」」
俺達はメイの歌を選んでホテルの部屋で歌った。結衣のボーカルは今までで最高だった。刑事が不覚にも涙を流してた。まあ自慢だけど結衣のボーカルはメイちゃんの次に最高なんだ。こいつ悪い奴じゃないな。
「結衣ちゃん、あなたはなんて素敵なの! 私一緒に歌いたい!」
曲が終ると、メイちゃんが拍手をして叫んだ。結衣は顔を真っ赤にして照れていた。
メイちゃんがポツリと話してくれた。
「私すごく忙しくて、作曲が上手くできなくなってきて、役者のお仕事も下手くそで、おかしくなってきたの。律っちゃんは一生懸命スケジュール調整してくれてサポートしてくれたんだけど。私は弱くて……耐えられなくなっちゃったの」
「わかります。俺も最近同じでしたんで」
「蓮とは桁が違うわよ」結衣が突っ込む。
「ううん、中学生も大変だよね。でもね失踪する時、実は律ちゃんは知っていて、わざと見逃してくれたの。ゆっくり休みなって。騒ぎは僕がなんとかするからって」
「うわ、坂本律、優しいですね!」
「結衣、律さんの呼び捨て止めなよ」
「いいの。律はいいやつですよね。でもメイちゃん。律より私の方が優しいですよ」
「自分で言ってら」
「あら、そう。じゃあ結衣ちゃんにお願いししようかしら」
「マネージャー交代ですか?」
「いえ、いつか私とバンドを組みましょう。蓮君もね」
気が付くと刑事が本署に電話連絡をしていた。
『ええ、問題ありません。本件は一件落着です。でもマスコミへの発表は慎重にしてください――』
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