2.空・・・・・・。青空。

・・・視界に入ってくるのは、空だった。


むっとする、草の匂い・・・俺は・・・草の上に寝ていた。


驚いて辺りを見回す。


見えるのは、見渡す限りの草原。


・・・顔をはたいて、自身の感覚を確認してみる。


痛い・・・。俺の感覚は正常だ。


すると、この清々しい光景もまた、俺の視力が正常に動作している事になる。


おかしい・・・。俺は、子供部屋で異世界チーレム小説という駄文を書いていたはずだ。それなのに・・・なんだ、この光景は・・・。


ふと、遠くを見てみると、何か・・・動物・・・熊の様な動物が、こちらを見ている。


その目は明らかに、俺を・・・「狙っている」目だ。


3メートルはある、その獣の肉体。その肉体差を考えれば、俺は獲物側である事は、思考をせずとも本能で分かった。


やばい・・・そう、認識した途端に、突然、目の前に、青白い四角の形の光が出現した。


何だ何だ、そのその光を見てみると、文字が書いてあった。


『キラーベア LV45』


そう書いてある。


俺は、突然の、虚空から出現した電光掲示板のような光に驚く。


何やねん、キラーベアって。なんやねん、LV45って。


そう・・・考え込んでいたら、デカイ熊は突然こちらに走り駆けて来た。


早い!熊が走ったのを確認したが、もう目の前だ。避けないと大けが間違い無しだ。避けよ・・・


ぐっしゃああああああああああああ!!


肉が破裂する音が聞こえた。





・・・・・・俺は・・・・・・俺は、何とも無かった。


手で自分の体を確認する。


全然傷が無い。服は破けてしまったが、傷一つなかった。


そんな様子に困惑したのか、熊はもう一度、俺を、そのたくましい腕で、殴りかかってきた。


熊の鋭い爪がついた拳が俺の体を直撃し、体に衝撃が走った・・・が・・・まったく痛みもない。


「・・・どうなってるんだ・・・これは・・・?」


まだ、殴りかかろうとする、熊の腕を振り払ってみると


「ぐぎゃああああああああああああああ!!!」


熊の腕が勢いよく吹き飛び、ちぎれた腕は、どこか遠い場所に飛んで行った。


熊は、恐れおののいたのか、踵を返して、逃げ出した。


俺は追いかけてみた。すると、簡単に、熊に追いつき、熊の前に回り込んだ。


熊は、回り込んだ俺を見て、驚き、そして怯えていた。


その様子を哀れに感じて、俺は、しっしと手を払って見せると、熊は、そのまま逃げだして、草原の影に消えていった。


・・・俺は、どうしたというのだ・・・。今、起きた非現実的な、出来事に困惑した。


あの、デカイ熊は一体なんだと言うんだ・・・そして、俺の熊の腕を吹き飛ばした力は一体何なんだ。そして、この果てしなく続く草原。ここはどこなんだ、俺は自宅に居たはずじゃないか。


・・・・・そういや、自室で、意識が落ちる前に、女の声が聞こえた・・・。


『・・・その願い、叶えてあげましょうか?』


そう、そんな声を聞こえたのだ。


そして、その声が聞こえる前に、俺は、ラノベの異世界世界の事を考えていた。


・・・・・・そういえば、あの熊を見た時、何か空中に文字が浮かび上がっていたな。


何か、キラーベアだか、なんだか・・・。


その二つの事象が俺の脳裏に融合し、一つの推察に至る。


そう、俺は、異世界転生という奴をしたんではないかと。


・・・・・・いやいや、そんなはずは無い。そんな荒唐無稽な事はあり得ないのだ。


しかし、今、あり得ない事が目の前に起きた。


という事は・・・俺は・・・


「ステータスオープン!!」


俺は、異世界転生物語でお約束のセリフを言ってみた。


『生崎龍一

レベル999

HP 9999

MP 9999

攻撃力9999

守備力9999

素早さ9999

運の良さ9999


全ての魔法特技を所持』



こんな風な文字列が空中に表示された。


最早、異世界転生した事は確定的だった。


「うおおおおおお!!!!やったぜ!!!!!!」


俺は興奮のあまり、その場でぴょんぴょん跳ねる。


アニメラノベ世界でしかありえない、異世界転生したし

しかも能力値は、かなり強そうだ。


何でも、俺は出来る・・・そう、モンスターも屈強な戦士もイチコロだろうし、そして何より・・・


「ハーレムが作れるぞ!!やっほおおおおおっ!!!」


そう、異世界転生と言えばハーレムである。


異世界転生の主人公は、ハーレムを作って、様々な女達をはべらかすのはお約束だ。


エルフ、戦士、シスター、魔法使い、巨乳、ちゅぱい、熟女、幼女・・・脳裏には、色んな女が思い浮かんだ。


この思い浮かんだ、女達、全部、なでポで、絆して、俺の虜にして、夜の営みもうっふんあっはんである。


想像してると、股間が熱くなってきた。


「よおおおおし!!!待ってろ、この世界に居る女!!俺が全て、ヤってやるからな!!」


俺は吠えた。雄々しい中年男性の咆哮だった。


・・・・・・しかし、所でだ・・・。


この広い草原、何もない・・・そう、何もない・・・。


俺は・・・どこに行けばいいんだ・・・?ハーレムを組むべき女が居る町はどこに行けば良いんだ?


途方にくれてしまった。





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