グレーダイヤモンド

深紅 あん

プロローグ



老夫婦が、身を寄せあってソファに座っていた。お互いの手を握りあって、絵本を描いていた。二人には孫ができるのだった。作家の夫人は、物語を。元科学者でスケッチ力に長けている旦那は絵を描いた。孫に向けて絵本を作る二人は仲睦まじくて暖かい。

静かな午後の光が、白い二人の髪を照らした。

旦那は言った。

「君の作品はどれも素晴らしかったな」

夫人は笑う。

「あの時は周りの物事全てが面白かったわ」

旦那は、色のついたスケッチが乾くとしわしわの指で触った。

「てっきり、君は私との物語を書くと思ったよ」

その旦那の手に夫人はしわしわの柔らかい手を重ねた。

「あら?書いたわよ。売りにこそ出さなかったけど」

旦那は驚いてターコイズの瞳を見開く。そして、頭をかいて「おかしいな。そんなの、読んだことも」と言うから夫人はグレーダイヤモンドの瞳を細めて笑った。さらりと自分の指にある指輪を撫でて。

「ええ。まだ鍵の中だもの」

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