山影(やまかげ)に歩みを添えて


朝のしじまを ひとつ越えるたび

胸の奥で まだ名づけられぬ想いが

木の葉のうらに揺れていた記憶を

そっと呼び起こしては 透きとおる


雲はゆっくりと 稜線を撫でて

道なき道を 道にしてゆく

足裏から沁みこむ 静かな温度

それは言葉になる前の祈り


なぜ人は山に登るのか

問いのかわりに 風が返事する

「ここでは 誰も飾らなくていい」と


やがて頂に触れた光が

まだ誰のものでもない朝を

ひとしずく 私に分けてくれる

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る