第10話 休日デート×エニグマの憂鬱

 

 休日前の放課後の帰り道。

 週末はヴァルフリート家に帰るミラちゃんを送るために、一緒に帰路ついていた。

 夕陽の優しいオレンジ色の光が包み込み、美味しそうな匂いを乗せたそよ風が頬を撫でる。こういう所は都会でも田舎でも変わらないんだな、と当然の事に心から感心してしまった。

 フッとミラちゃんを見れば、その視線は街並みに向けられていて。田舎では見たこともない煌びやかな店が立ち並び、老若男女問わず賑わっている。

 その時、ある感情が湧き上がり、何も考えずに言葉が漏れた。

「ねぇミラちゃん、明日イクシオンの観光しようと思うんだけど一緒に行かない?というか一緒に行って!お願い!でも予定が入ってたら全然大丈夫だから」

「そこまでお願いしなくとも行ってあげますよ。予定も特にありませんし。知っておいた方がいい店だけではなく、私のおすすめの店もご案内します」

「本当!?やったー!」

 胸を張って得意顔になる彼女に呼応するように夕陽が包み込み、神々しく見える。いつにも増して、なんて頼りになる姿だろう。俺はまだ数日しかこの街にいないし、なんなら任務を除けば学校と寮の往復だけだから町の事は何にも知らない。

 この街並みを見ていたら、彼女と一緒に出掛けたいという思いが溢れてきた。

 大切な人になったあの一夜は部屋にいたからどこかに一緒に行ったことがなくて、それがずっと前からの楽しみだった。

 養成学校に入って初めて休日。この思いを叶えるに絶好の機会だ。

 胸を躍らせながら、その日は眠りについた。まぁ…楽しみすぎてかなり寝つきが悪かったのだが。


 次の日。

 無理やりしゃきっとして身支度を整え、ヴァルフリート家の前へ向かう。

 起きた瞬間には楽しみで眠気なんて一気に吹き飛んだし、世界が一段と明るくなったように輝いて見えて。

 これからどういう日になるか考えただけで胸が高鳴って、体が浮くくらい軽い。ミラちゃんとのお出かけか…絶対に楽しいに決まってる。なぜだかそう確信して止まない。

 集合時間までは余裕を持ってヴァルフリート家の門に到着。あとは来るのを待つだけだ、と思っていた瞬間に扉が開き、ミラちゃんが出てきた。

「あら?今着いたんですか?」

「そうだよ~!着いた瞬間にミラちゃんが出てきてめっちゃびっくりしたよ!」

 集合時間まではまだ先だけど、まさか二人揃って同じ時間に集合場所に来るなんて偶然とはいえなんか感動してしまう。奇遇な出来事に見つめ合って笑い合ってしまった。かなりいいスタートだ。

「では行きましょうか」

「うん!よろしくね!」

 晴天の空の元、それにも負けないくらいに和やかな雰囲気の中で初めての二人でのお出かけが始まった。

 まずは騎士団になるにあたってお世話になる事が多いであろう鍛冶屋、病院、本屋を巡ったのだが、その3つのジャンルだけなのにその店の数は多く、流石王都と感心する事ばかり。

 行きかう人の多さも田舎とは比べ物にならなくて、人並みの多さに酔いそうだった。ただそれはそれとして。


「ここはイクシオンの桜の名所となっているんですが、おすすめのクレープ屋もあります。生地はモチモチでクリームも程よく甘くて、いくらでも食べられます。サービスで付いてくる紅茶も香り高く相性は最高です」

「いただきまーす!」


「ここは町の中心に位置する時計台がある噴水広場です。歴史があり、見ているだけで頭が垂れる思いですが多くの屋台も連なる場所です。この串焼きは食べ応えはもちろんの事、焼き加減や味付けが絶妙で食べ歩きにはもってこいです。少しお腹に入れたいと思うならここで間違いないですね」

「やった、いただきまーす!」


「スカイ国の歴史や文化、他国の貴重な情報等、多種多様な絵が多く収められている王立美術館。それに隣接する公園の中にあるパンケーキ屋のパンケーキは天下一ですね。ヴァルフリート家直属のシェフがここで修行していたのですが、『まだこの領域にはたどり着けない』とボヤくほどの出来です」

「わーい!いただきまーす!」


「はわぁ~たくさん食べたね~」

「そうですね。はぁ…充実した休日です」

 必要な場所巡りはほどほどに、おすすめグルメをめっちゃ食べた。

 行く先々で食べてお腹は満たされ放題。名所を案内されていたが、いつの間にかそちらはほどほどに食べ物がメインに。案内している途中でもそのグルメが目に入ると吸い込まれるよう引き付けられていき、あれよあれよという間に食べている。でもこれがいい。ミラちゃんも最初からこっちの方が本命だっただろうし。

 そして流石ミラちゃんが選んだ店の味。どれも人生最高の味といっても過言ではない。

 今は中心街のカフェでパスタとケーキを食べ終わり、コーヒーを飲んで一服している。

(あぁ、楽しいし幸せすぎる~こんなに心が休まるのは人生初かも~)

 なんて優雅で幸せな休日だろうか。人生で感じたことの無い高揚感と安らぎ。孤児院では比較的に平穏な時間が多かったのに、こんな感情になったのは初めて。

 大切な人との時間がこんなにも尊いとは…想像をはるかに超えた。ずっとこのままでいたいと我儘な感情が膨れ上がっていってしまう。でも今の俺にそれに抗う気持ちはない。

 というかミラちゃんって美味しい物には目がないよね。途端に目がキラキラと輝きだすし、圧倒的なわかりやすさ。でも…幸せそうに食べているミラちゃんを見れただけでも俺は満足だ。というか泣きそうだ。

 初めて会った時は、瘦せているというよりやつれていたから。扱いが良くないことは目に見えていたから、そんな子が今は満足いくまで好きな物を好きなだけ食べている。むしろ好物というものができている、ただそれだけで涙が出るくらいに嬉しい。

(よかったね、ミラちゃん)

「ん?そんなに感極まったような顔をして、どうかしましたか?」

「ううん、なんでもないよー。ただミラちゃんとこうして一緒に入れるのがただただ嬉しいだけだよ」

「…あの日の約束を少しは果たせているのかもしれませんね」

 スカイブルーの瞳が僅かに潤み、嬉しそうに揺れる。

 『普通の人生を2人で送る』。あの夜に俺たちが心から願っていた未来は今こうして少し叶っている。ほんの少ししか経っていないこの何でもない日常がただただ楽しくて、我儘かもしれないけどこれからもずっと続いてほしいと願い続けてしまう。

「そうだね!だからこれからも、もっと一緒にどこかに行こうね!あの日にできなかった続きを」

「フフフ、まだ始まったばかりですけど楽しみにしていますよ。この後もまだまだ連れていきたいところがあるので、ちゃんとついてきてくださいね」

「うん!ありがとう!俺も楽しみしてるよ~!」

 想像していた以上に楽しくて心地が良くて、きっとこれ普通に人生というものなんだろう。

 今までも楽しいと感じる事は多々あった。友達と過ごしたり、孤児院や田舎町でも良い人に出会い良くしてもらった。その度に幸せと喜びを感じていたけど、でもミラちゃんと一緒になって感じる幸せや喜びは何かかが違う。上手く言葉では言い表すことはできないけど、特別な感情が芽生えているのは感じている。

 この感情が何なのかはわからないけど、大切な人にだけ感じるものだと直感的に理解できる。いつの日にか、この感情がどういったものなのかを知る日が来るのかもしれない。

「じゃあそろそろ次の─」


「おやおや誰かと思えばヴァルフリート家のエニグマ、フライハイトではないか。“色々な意味”で目立っていてすぐに目についたぞ」


 俺の声を遮ってまで声をかけてきたのは、庶民が多いカフェには似つかわしくないような赤と金色のド派手な貴族服を纏った男だった。その後ろには同じような服装の男が1人と執事が3人いて、それらを含めて全員が人を見下しているようにへらへらと笑っている。その言葉も端々どころか、全面から悪意がにじみ出ている。

(あぁ…どこにでもこういう奴っているよな)

 世界は本当に無情だ。こうして大切な人との時間にも不平等に横槍が入るんだ。

 その男たちを見た瞬間にミラちゃんの顔から笑顔が消えた。スッと立ち上がり頭を下げた。俺もそれに倣って同じ動作を取る。しかし俺の事など眼中にないようで見向きもしない。

「お久しぶりです、フィンスターニス様」

 その特徴的な名前は…オブライエン隊長が取り入っている上流貴族一族の名前。

 確かに2人なら息も合うだろうね。というか目立つとか何とか言っていたけど、この庶民的なカフェで誰が一番悪目立ちしているのは一目瞭然。

「お前は相変わらず愛想がないな。その上に騎士養成学校に入るなど、上流貴族関係者としての自覚が足りないんじゃないのか?それとも騎士団に深く関わりのない我々他の貴族に対する嫌味か?」

「そのような事は一切ござい─」

「まぁ安心したまえ。気になどしていない」

 騎士団に深く関わりがないとか言ってるけど、オブライエン隊長と癒着してあの人を隊長にまで押し上げたのはこの一族だ。噂だと思って調べたら本当だった時は驚いたね。それほどまでに影響力があるのに、理由も効こうともせずにこの言い草はただただ相手を貶したいだけ。

 悪意でしかない。

(嫌になるよ、本当に)

 黒い感情がふつふつと胸を掠める。こんな感情になるのも人生初だ。


「こんな他愛もない話をしに来たわけではない。俺の貴重な時間を削ってまで来てやったんだ。本題に入ろう。この間の話だが…考え直してもらえたか?俺の弟の嫁として迎え入れようという話は?」

「…ん!?」

 嫁に迎え入れる!?ていうことはこれはミラちゃんの縁談話!?こんな奴の家に?

 危うく、せき込みそうになった。

 待ってましたと言わんばかりに、後ろにいた貴族服の男がニヤつきながら一歩前に出る。こいつが弟か。兄弟で似たようなものだな。

 だが言われたミラちゃんは顔色を一切変える事無く。

「その話でしたら先日の答えの通りお断りします。これはお嬢様の意思でもありますが、私自身の意思でもあるということを宣言させていただきます」

 溜めもなく即答で返す。骨の髄まで凍えてしまいそうなほどの冷たい声で。表情は虚無。何の感情もない。怒りすらも。

 その答えと声を聞いて心の底から安心した。ミラちゃんの相手は素晴らしい人じゃないと俺が認めませんよ!貴族相手に失礼かもしれないが、こんな悪意に満ちた奴らの所に行って碌な目に合わないのは目に見えている。

 ユニークスキル発現者と関わりがあるだけでステータスとなる貴族社会。まさかそんなものが堂々と目の前で見る羽目になるなんて思いもしなかったし、これほどまでに不快になるなんて思ってもみなかった。


「…チッ、女らしさのない捨て子のくせに」


 小声だったがその声ははっきりと聞こえてしまった。血が逆流してかのように怒りが湧いてきて、睨みつけるがスッと執事の後ろに隠れる。

「女らしさのない捨て子ですのでお役には立てません。見ての通り、私は可愛らしくはないので色々と貴族の家に入るのには不出来です」

「弟は少し風邪気味でね、舌が回っていないのだ。ただの聞き間違いだ、気分を悪くしたなら申し訳ない。しかし先代が若くに隠居生活を送り、ヴァルフリート家はまだ齢18のアイリスが当主になったばかりだ。若いとあってまだ風当たりも強かろう。これから騎士団関係で大切な時期を迎え、他の貴族とも関係を深めていかなくてはなるまい。特に我がフィンスターニス家の協力は必要だと思うのだが。ご主人を救うのが君の役目では?」

「確かにその役目は私がするものですが、その判断するのはお嬢様です。もしお嬢様が行けと命じるのならば行きますが今回の場合、お嬢様が反対の上に私の判断に任せると言ってくださったので私の意思を持ってお断りさせていただきます」

「弟は少しシャイな所もあるができた人間でね。嫁に来れば苦労もないし、ヴァルフリート家に恩返しもできる。例えばこのカフェの店長、はたまた騎士団の隊長クラスと結婚したとしても、そういった幸せは舞い込んでこないだろう。恩返しの量は大違いだ」

「そうは思いません。恩返しについても、弟様の評価に対しても、苦労の件に対しても意見の相違があるようですし、私の方に何度来ても答えは同じです。では失礼します」

 強い意志を持って拒絶を突き付けるミラちゃん。流石だ。カッコいい!

 それにしても気分が悪い。嫁にとか言っているが、どう見てもステータスとなる“奴隷”が欲しいだけのおぞましい考えだ。人を人とも思っていない。人間の欲望を煮詰めたような人間が今目の前にいるんだ。こんな気分になって当然だ。

 頭を軽く下げてその場から立ち去ろうとした時、執事の後ろから弟の方がぬっと立ちはだかりミラちゃんを鬼のような表情で睨みつける。

「…拾われた庶民以下の人間が調子に乗ってんじゃねぇよ!!てめぇみたいに捨て子で髪の短い男みたいな人間の価値なんかユニ─」


「ちょっといいですか?」


 これ以上聞かせるわけにはいかない。こんな穢れた連中の言葉を聞かせたくない。

 2人の間に体をねじ込み、間合いを作る。

 全員の視線が俺に集中。貴族の話に庶民が入ったことで相手さんの瞳には殺意を混じっている。青筋が浮き、今にも腰に付けた武器を抜こうとする寸前だ。

 でもそんなものはどうでもいい。これ以上は喋らせるつもりはない。瞬きせず目をまっすぐ見て、言葉を紡ぐ。

「見えてなかったと思いますが俺達、楽しくデートの真っ最中なんですよ。『ベリーショートで可愛らしい彼女』との貴重で幸せな時間を邪魔しないでもらえます?…行こっか、ミラさん。デートの続きをしよう!」

 そう言って俺はミラちゃんの手を握る。その手はあの頃と同じで暖かくて、触れているだけで落ち着く。鍛錬がよくされていて少し違うけど、それ以外は何も変わらない大切な人の温かい手だった。

 頑張って怒りを抑えて笑顔を張り付けているけど、本当なら罵声の1つでも浴びせてやりたい所だ。しかし相手は上流貴族。俺にだけヘイトを向けてくれるなら全然いいけど、ミラちゃんやその大切な人達であるヴァルフリートさん、メテウスさんに迷惑をかけるようなことはしてはいけない。我慢だ。

 手を握っている方とは反対の手は、うっ血しそうなほどに固く握り締められ震えている。でもこうなって当然だ。大切な人を侮辱されて怒らない方がおかしい。

 『ベリーショートで可愛らしい彼女』で、相手の言ったことを否定するに留めておく。

(運がよかったな、ゲス野郎)

 心の中で暴言を吐きつつ会計台にお金を置き、足早に去ろうとする背中に言葉が刺さる。


「貴様…名前は?」


 怒りに満ちたその声と黒い感情が漏れ出た目が、俺に集中する。本気で俺の事をそこらにいる虫けらだと思い、殺意を向けてきているのがわかるけど何ら怖くない。あの日に見てしまった目に比べたら、あの日に感じてしまった悪意に比べたら、こんなものは本物ではない。


「エドガー・アクセル・スターリースカイ。騎士養成学校の生徒です。第三騎士団の預かりになっていますので、僕が何か失礼な態度を取っていたらフリューゲル副隊長まで。あの人もユニークスキル発現者ですから話が通じやすいのでは?それと僕はヴァルフリート家が経営するグランバレー孤児院で10年ほどお世話になりましたので、教育面でご意見があれば是非ヴァルフリートさんの方へ。貴重な時間を割いていただいたのに申し訳ありませんが僕達はこれで失礼します。店長さん、お騒がせして申し訳ありませんでした。パスタとケーキとコーヒー、全部美味しかったです。ごちそうさまでした」

 店長にお辞儀をした後に一瞬だけフィンスターニスを見れば、穴でも開いてしまうほどにジッと俺の事を凝視していた。執事も同じ。ただ俺と目を合わせた弟だけは少し怯えたように執事の背中に隠れて目を逸らす。

(よかった…ちゃんと『殺意』を示せて)

 視線を交わした時に奴には、脅しでも何でもない殺意と敵意を向けた。ちゃんと俺の本気具合が伝わってくれたようでよかった。

 まぁこれで上流貴族を相手に完全に目を付けられたわけだけど。でもよかった。奴らは俺の方だけを見ている。すなわち今回の事でヘイトを向けている相手は俺に対してだけという事だ。

 フリューゲルさんやヴァルフリートさんの名前を出しておいた事で、奴らも易々には手を出してこないだろう。上流貴族だ、露骨に狙ってくるほどアホではないはず。あの地位に居続けられているには相応の理由がある。下手な手打ってこないだろう。

 これで牽制になってくれればいい。


 にしてもミラちゃんの手はあったかいなぁ~。鍛えられていても程よく柔らかいし、包み込まれる感覚で半端じゃなく落ち着く。

「エドガー君、ありがとうございました」

 扉から出て、10秒後。氷点下まで冷えるような声色は消えて、いつもの優しく包み込んでくれ声へと戻っていた。微笑んでくれているし、握られている手の力がぎゅっと強くなる。

 じわりと胸の中が熱くなった。よかった。

「大したことはしてないよ。ミラちゃんにあれ以上の言葉を聞いてほしくなかったし、もう自分を卑下してほしくなかったんだ。大切な人の言葉を自身に突き立てているのを、見たくなかったんだ」

「エドガー君…」

 ヴァルフリートさんの付き人という立場を考えて、迷惑が掛からないように自分を下げた発言をしたのだろう。自己犠牲というか、自分ではなく自分の大切な人のために。俺もその考えを少し持っているから言いたい気持ちはわかる。

 でも初めてわかった。それを見ている側の人間は辛いと。

「でもごめんね。動いちゃったけど、なんか俺が出たばっかりに後々言われそうで…」

「ああいう人達には、あのくらい言っておかないとすぐに来ますから。それに…エドガー君が颯爽と出てきた時とあの言葉は凄く嬉しかったです。私にとっては大したことでしたから」

 そう言い終わると肩を寄せて、体を密着させてきてくれた。あの日と同じように。

 服の上からでも伝わる温もりと、握られた手から伝わる鼓動で俺の胸の高鳴りはより一層と響き渡る。

 大切な人を守れた。ただそれだけで心の中に幸せが広がっていく。

 大切な人を守れる人間になりたい。そのために一緒に入れるように頑張っていかなきゃ。

 そう心の中で決意を新たに固めた。

「ミラちゃんの手はあったかいね」

「エドガー君の手だって暖かいですよ。助けてくれたご褒美に、今日はずっと手を繋いだままでもいいですよ」

「いいの!えへへ…ありがとう!これからはもっと一緒にいられるから!もう離れない!約束だよ、ミラちゃん!」

「フフフ、約束ですよ!」

 この幸せな時間がずっと続いてほしいと願わずにはいられない。

 

 でもその平穏は長くは続かなかった。

 運命の歯車が動き出そうとしていた。

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