吾輩は『ねこ』かもしれないのである
白咲 飛鳥
哲学編
第1話 プロローグ
吾悲? いやいや、吾輩。
これを誤字というのか。
ゲフンゲフン。
うむ、吾輩は『ねこ』かもしれない。
なぜ「かもしれない」か?
そりゃあ、自分がよく分からないからだ。
え? 名前があるだろって?
ないのだよ、そんなもの。悲し。
呼ばれたことはある。
「おーい、そこ」「どけ」「あっ、かわいい!」などだ。
だが、どれも吾輩の名前ではない。
――きっと、名前というやつは、呼ぶ側の安心のためにあるのだろう。
吾輩にとって、吾輩とは、ただの“もや”みたいな存在だ。
もふもふの形をした、もや。
それが今日も、陽だまりのなかで哲学している。
まったく、不思議でいて、皮肉なものだな。
まあ、それはいったん置いておいて。
では、吾輩が『ねこ』かどうかを確かめるには、どうすればいいのだろう。
試しに鏡を見てみよう。
鏡を見ても、そこに映るのは毛玉である。
寝ても覚めても毛玉である。
――しかし、毛玉だからといって、ねこだとは限らぬ。
世の中には、毛玉のような人間もいるし、
人間のような毛玉もいるのだ。
それに、ねことは何だ?
「ねこらしさ」とは誰が決めた?
……まったく、哲学とは眠気を誘う遊びである。
まあ、自分で考えてみると言い。
そのために予言をしてやろう。
この先、考えて考えて、『ねこ』というものが、
ただの『言葉』だということに気づく。
だが、またその先がある。
そのことに面倒くささを感じ、諦める。
――とまあ、こんな感じだな。
人はこうやって放置し、
いつまでもその「言葉」だけが残っていくのだ。
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