さんぽ

里山では霜が降りた土曜日の朝

いつもより元気そうな母

ヘルパーさんが母に託けた書類

一生懸命に目を通している


領収書とクリスマス会の案内

何度も何度も読み返すような素振りに

「内容はわかった?」

「わかった」

珍しく返事がきた


…ほんとかな?

なんともいえず可愛らしい


「どこか行きたいところはある?」

「ない」

「前に住んでたところとかお店は?」

「別に」

いつもの調子

淡白だけど

返事があることがうれしい


すると突然


「今から出かけたい」


…どうした?

女心と秋の空?


ヘルパーさんに許可をもらい

近くのスーパーまでミニデート

母は自分で車椅子のストッパーを外し

出かけようとしている笑


彼女がスーパーに行くのは何年ぶりだろう


雲ひとつない空の下

ゆっくりゆっくり歩きながら

私は一方通行で話しかけ続ける

…返事がないけどまあいいか…

ただ突然の一言

「お菓子は買ってくれんの?」

可笑しすぎる…


一緒に選んだキットカット

帰路についたとたん

封をあけようとする母

「ここで食べたら怒られるよ笑」


空気は少し冷たいけど

あまりにも澄みわたる空と

心地よく暖かい太陽が

たまらなかった






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