第14章:魂のリレー、美咲との対峙

大会当日。


スタジアムの空気は張り詰めていた。杏奈と恵美の胸には、先輩たちから受け継いだ「心と技」と、支えてくれる人々の想いが詰まっている。


「よーい、パン!」

銃声が鳴り、リレーが始まった。


第一走者・結衣は、持ち前の瞬発力でスタートダッシュを決め、コースを力強く駆け抜ける。


第二走者・恵美は、結衣からバトンを受け取り、リズムよく腕を振り、レーンの中盤で他チームを巧みに抜き去った。


第三走者・杏奈は、雪乃から受け継いだ「戦術力」を活かし、美咲の走りの癖を見抜き、的確なタイミングで追い抜く。


第四走者・遥は、杏奈からバトンを受け取り、冷静に相手のラフプレーをかわしながらゴールラインを駆け抜け、チームは勝利を掴んだ。


歓声がスタジアムを揺らす。


控室にて。

杏奈と恵美は勝利の喜びに浸るが、美咲が現れた。


「あんたたち、まさか私に勝ったつもり?」

美咲の声は震えている。


杏奈が前に出る。


「美咲の走りは速い。でも個人技です」


「私たちは先輩たちから『チームで走ること』を学びました。一人ひとりの走りをバトンで繋ぐ。それが勝因です」


恵美も頷く。

「個人技だけでは、私たちのハーモニーには勝てません」


美咲は唇を噛むが、認めることはできない。

「…何よ、それ。チームだって?」


飯屋が美咲の肩に手を置く。

「美咲、気にしないで。あの子たちは、あなたの才能に嫉妬してるだけ」

美咲は頷き、そのまま去った。


杏奈と恵美は立ち尽くす。


「私たち…間違ってなかったよね?」


恵美が不安そうに尋ねる。


杏奈は静かに頷く。

「間違ってない。でも、美咲はまだ気づいてない」


遠くから見守っていた遥、結衣、雪乃が歩み寄る。

「杏奈、恵美。よくやったわ」

二人は少し笑顔を見せる。


夕陽がグラウンドを染める。

美咲の心の亀裂は、まだ深まったままだった。

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