異世界召喚されたんだけど、なんか様子がおかしい
よく知らんロボ
第1話
異世界は夢や冒険に満ちた場所──。
俺もここに召喚されるまではそうなのかなって、漫画やラノベを読んでは想像してたな。
※
う……、なんだ……、寝てたのか……。
薄目を開けると、見覚えのない石造りの天井がぼんやりと見えた。
なんか薄暗いな。
それに背中や腰に伝わる硬い感触、どうやら床で寝てしまったみたいだ。
頭も酷く痛む。
それにまぶたも重い、睡眠薬を盛られたのかってくらいだるい。
起き上がろうとしても身体は金縛りにでもあったみたいに動かない。
取りあえず首だけでもと横へ向けてみると隣にも床に転がっている人がいる。それも一人や二人じゃない。
「…………!」
少し視線を上へ移して一気に目が覚めた。
寝台のような物の上で見覚えのある女性がゴツい男二人に、今まさに殺されそうになっているからだ。
いや、正確には生きたまま解体されているといった感じだ……。
女性は薬でも射たれているのか酩酊したような表情で涎をたらし、虚ろな瞳で口をパクパクと小刻みに動かしている。
手足を乱暴にぶつ切りにされ、流れ出た血液が床へと滴り落ちる。
それでも彼女は表情一つ変えないのだから余計に不気味だった。
──夢か。
とも思ったが、脳を鈍器で小突かれるような頭痛は間違いなく現実だ。
こんなシチュのホラー映画は嫌いじゃないけど、自分が当事者となれば話は別だ。早く現実に戻してくれ。
だがそう願ったところで無駄らしい、この光景はどうやら俺の妄想ではないことは確かなようだ。
生で見るスプラッターシーンには思わず声が出そうになったけど必死でこらえた、起きているのがバレたら多分殺されると思ったからだ。
心臓の音が向こうにも聴こえるんじゃないかってくらい鼓動しているが、幸いにもまだ気付かれてはいない。
いや、そうだ、だんだん思い出してきた。
たしかここは、異世界だ──。
※
──少し時間を遡る。
「ここは……」
どこかの王宮かよ。
そう思ってしまうくらいには広くて天井の高い荘厳な内装の部屋にいた。
不気味なのは、ところ狭しと床に敷き詰められた魔方陣のような紋様だ。
さっきまで街中を歩いていたんだが……。
思い返せば先程視界を覆った真っ白な輝き、あれだ。
そのあまりの眩しさに目を閉じ、開いた時にはもうここに立っていたのだ。
周囲にも大勢、少なくとも百人近くはいるおそらく日本人と思われる人達が立っている。
今のところ知った顔は見掛けていないが、みんな何が起こったか解らず動揺している。
無理もないか、多分みんな俺と同じ境遇なんだと思う。
中には「異世界だ」とか呟いて、嬉々とした表情を浮かべてる人もいるがほとんどの人は戸惑いと不安の色を浮かべている。
時間にして五分経ったくらいだ。何だかんだで日本人ばかりのこの環境に少しづつ平静を取り戻してきたんだろう、周囲がガヤガヤとザワつきだす。
その多くはスマホを取り出しどこかへ連絡しているようだ。
かくいう俺もスマホで知り合いへの連絡を試みている最中だ。が、案の定繋がらない。
当たり前か。おそらく電波もWi-Fiも飛んでいない、スマホの設定を開いたらどちらも未接続になっている。
それでももしかすれば。
そんな藁にもすがるような気持ちでスマホをあれこれいじりまわす。
皆も同じなのだろう、似たような焦燥が伝わってくるのが解る。
まあ中には呑気に動画撮影したり床の魔方陣を写真に納めている人もいるけど。
そんな周囲の様子を観察していたら部屋の端から大きな声が、高い天井に反響しながら響き渡ってきた。
「どうぞ落ち着いてくださいませ、わたくしはこのドレイク国の王、エランドール・リセロ・カールスト・ドレイクシスと申します! あなた方は勇者様としてここに召喚させていただきました! どうかその大いなる力でこの国を救って頂きたい! ですがどうぞご安心下さい、無理強いすることはいたしません、帰還を望まれる方は明日改めて元の場所へ送り返して差し上げます! ですが協力していただける方がいましたらどうぞ御願い申し上げたい!」
何をさせるのか先に言えよ、まるで要領を得ない奴だ。そして名前が長くて覚えられない、まあ覚える気もないけど。
それになんか胡散臭いな。
王と名乗る男の声がした方へと視線を向けると、階段を下りてくるのは四十歳前後のスタイルのいい赤髪のイケオジだった。
顔立ちは日本人じゃないな、でも日本語がやたらうめえ。
しかしまあ、分かりやすく豪奢な服に高そうな装飾の王冠、国王と名乗るだけあっていかにもといった感じだ。
引き連れた近衛や従者が身に付けている武器や鎧、衣服からもコスプレの様な嘘っぽさは一切感じられない。
それが妙に説得力を増してくるんだが、もしかして本当に異世界に転移したのか……?
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