第21話 未来へ
魔王の復活は阻止できたようなのだが、微妙な気まずさを感じる。
どうやら、魔王の復活はまだまだ先だったから、魔王が復活するダンジョンの中はまだ何も準備ができていなかったらしい。龍晶石に注がれた魔族の血は、血の量こそ基準に達していたが、蓄積された魔力は少なかった。
それでも、儀式をしたものが逸る気持ちで、贄を差し出し血を多く注ぐような行動をとること自体は想定されていて、誕生した魔王が少しずつ成長していくことになるはずだった。
だが、スターリー一家は魔王が生まれるか生まれないかの状態から、目一杯攻撃魔法を放ち続けた。
それも、二人の女神の加護をもらった魔法で。
誕生したばかりの龍魔王は抵抗する間もなかったようだ。
「……準備中のところ、申し訳なかったです……。でも! 私達は魔王や魔族の脅威から、子孫を、みんなを守りたいんです!」
アイナは震える声で、女神に語りかけた。
すると、先ほどの女神ルミナとは違う、男性のような声が響いてきた。
『……ふむ……。それもまた面白いではないか……。面白いので加護をやろう』
『初クリア特典もあげないと』
『おや、そうであったな!』
やがて神々の声が聞こえなくなると、結界ごと沼も消えていて、床にはコロリと二つの指輪が落ちていた。
「あ、『永遠の盟約の指輪』だ!」
その指輪の意匠には見覚えがあった。ゲームの終盤、勇者と聖女達が魔王を倒すと得られるアイテムで魔族の魔力を安定させ、人族との共存を誓うものだ。
「和平……」
これまで、魔王の誕生と魔族の侵攻を阻止することしか念頭になかったが、新たな選択肢が生まれた。
少しの躊躇はあったが、アイナが魔族の少女を治療した時から、心の奥には和平という選択肢が生まれていたのかもしれない。
レンドールという魔族の青年とジャンヌという少女は、首領の弟と妹だった。
ゲームの物語の中に、年老いた魔族の首領の姿があったが、あの首領が歳をとった姿だったようだ。
魔族の首領の後継者となったレンドールは妹の命を救ってもらったからか、和平交渉をあっさりと受け入れた。
「……恨みは消えぬが、恩もある。子孫の未来のため、受け入れる」
和平成立。魔族は北の地に留まり、交易路を開放。侵攻の芽は摘まれ、魔王復活は永遠に封じられた。
スターリー一家はノルデア王国に戻ってきた。
魔族との和平交渉に成功したことの功績で、ノルデアの国王から貴族位を授かった。
尚、一対の「永遠の盟約の指輪」の一つは、魔族の新首領レンドールが身につけていて、もう一つは父が身につけた。
最初、少女の治癒をして和平のキッカケを作ったアイナが身につけるという案も出たのだが、フリードが猛反対した。
「一対の指輪を身につけるなんて!」
「それじゃあ、アイナには貴方が用意してあげなさいな」
むすっとしたフリードに、ニヤニヤしたマリナ。ギョッとする父。ニコニコする母。
アイナは最初、よく分からずポカンとしていたが、だんだんと頬が赤く染まった。
子孫を守るため国外に飛び出したスターリー一家は、未来を切り拓き、新天地で繁栄の道を歩む。一家は北の大地が見える丘の上に立った。
アイナとフリードは手を繋ぎ、心で呟く。
「これで、子孫たちは平和に……レオーナも、笑って生きられる」
父は空を見上げた。 勇者パーティの一員としての使命、スターリー家の家長としての使命が果たされ、内なる平穏が訪れる。
「家族と共に、新たな人生を。ようやく、終わった……」
マリナは、胸に下げていたロザリオ手に取り、しっかりと握りしめた。
「家族の絆が、すべてを変えたわ」
母は内面で喜びを噛みしめる。
「みんなの努力が、実った……夫と娘たちの絆が、こんな奇跡を」
心の奥で、母としての幸福が満ちる。
「これからは、幸せだけよ。平和な日々が待っているわ。これからも、家族を見守っていくわ」
未来は、守られた。
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