第19話 魔族との戦い

逸る気持ちを抑えているのはマリナ以外の家族も同様だった。

フリードも逸る気持ちはある。だがスターリー一家が議論をしている間も、従魔のシャドを使って魔族の隠れ里の潜入調査をしていたから、そちらに集中していた。


魔族の首領達は洞窟の隠れ里集落の最奥地にある空間に集まっているようだった。

一人一人、指などを切って、石のようなものに血を垂らし祈りを捧げる儀式を続けているという。


『……人間どもめ……勇者パーティーに家族を失い、この寒地で這いつくばる屈辱を、魔王様の復活で晴らす!』


首領が呟く。


深夜になって、スターリー一家は、洞窟の最奥の空間に侵入した。フリードの従魔、シャドから詳細な位置情報を得て、転移したのだ。


「な、なんだお前達は!」


そこには祭壇のようなものがあり、赤黒い石がついた装飾品が台座の上に置かれていた。頭に角を生やした若い青年が一人いて、アイナ達を見て驚いている。

青年の目が、父の姿を捉えた。


「ああ!お前!お前は……、あの時、勇者という奴と一緒にいた……!」


魔族の青年は、父を指差して叫んだ。


「お前……、お前達のせいで、父が……!」


魔族の青年の言葉を聞いて、アイナの胸はギュッと締め付けられる気がした。一族を傷つけられること、レオーナのロザリアが破壊された場面を連想してしまう。


台座に置かれていた短剣を掴んだ青年が、咆哮を上げながら父に切り掛かった。

ガチッと父の剣と青年の剣がぶつかり合う。

マリナが風魔法で青年を斬りつけた。アイナ、フリードも攻撃を始め、母は支援魔法をかけた。


騒ぎを聞きつけて、魔族が集まってきた。弱体化しているという魔族だが、動きは俊敏で、跳躍して縦横無尽に飛び回る。

数は、魔族達の方が多かったが、鍛錬を重ねた上に、隠しアイテムで強化し、更にモフモフの結界やシャドの支援もあり、スターリー一家が優勢だった。


「もっと広い場所なら魔法をぶっ放せるのに!」


狭い場所で大きな魔法を放てば家族にも影響するかもしれない。マリナは、少しイラついて唇を噛み締めた。

後から身体の大きな男は他の魔族に比べてもレベルが違って見えた。

この男が首領か。

父が魔法を放ちながら、首領を斬りつけた。首領は弾き飛ばされて祭壇に身体をぶつけた。血塗れの手で赤黒い石を掴むと、残忍な顔でニヤリと笑みを浮かべた。


何をする気だ!?


警戒して、フリードが追い打ちで魔法を放とうとした瞬間、首領は腕を振った。何かを投げた。フリードは避けるつもりだったが、それはフリード達がいる方向からそれて飛んでいった。


「ジャンヌー!!」


叫んだのは最初に祭壇の近くにいた魔族の青年だった。その目線の先にはお腹から血を流している魔族の少女の姿があった。腹に赤黒い石がついていた装飾品が突き刺さっていた。


「兄者!一体何を!」


青年が少女のところに駆け寄り、少女の身体を支える。


「お……お兄様……?」


少女の口が弱々しく動く。目は呆然と首領の方に向けられていた。


「我ら一族の復興の為だ。ジャンヌ、魔王様の復活の礎になることを喜ぶのだ!」


首領がよろけながら立ち上がり、笑い出す。

青年は魔族の少女の腹に突き刺さった装飾品を抜き取ったが、すぐに取り落としてしまう。


「熱……!」


床に落ちたそれは、赤黒い煙を吹き出し始めた。装飾品が床に触れている部分が燃え出したように見えた。床に穴が空き、装飾品が穴の中に落ちていく。そして穴がどんどん広がり始めた。


「うわ!?」


青年は少女を抱えて、穴から離れた。途中足がもつれてゴロゴロと転がる。


「気をつけろ!穴が広がっていく!」


父が警告の声を上げた。


「はっはっはっ!」


首領はフラフラと穴の方に近づいていく。

そして周囲を見回して、口の端を上げた。


「見届けるが良い。我ら魔族の復興を!魔王様の復活を!人族どもの末路を!」


高笑いをする首領の足元に穴が広がっていき、首領は笑いながら暗黒の闇のような穴の中に落ちていった。


首領の声が聞こえなくなった時、シーンと辺りは静まり返った。


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