第7話 勇者の次男
スターリー一家は冒険者パーティーを組み、魔族や魔獣を倒す旅に出た。父は、かつての勇者パーティーの仲間である勇者の元を訪ねた。
「え? 爵位を返上して平民に? いいなー!」
勇者ジークは平民出身で、功績により子爵になった。「伯爵位を」と言われたが、「領地経営とか大変そうなので、えーと、じゃあ、子爵で」と下の爵位なら、と口にしてしまって苦労していた。何しろ、平民で戦う事しかしていなかったのに、いきなり領地を守り、貴族間の交流などもしていかなくてはならなくなったのだ。
「俺も平民に戻ろうかなー」
「父上、何を言っているのです?」
スターリー一家が、勇者ジーク、今はジーク・オースティン子爵の家を訪ねると一家で出迎えてくれた。ジークと妻のラミア、長男のアーサーと次男のフリードだ。
長男のアーサーが呆れたように父ジークを見た。
「いや。大変なんだよ。貴族ってさぁ」
「それは分かりますが、いきなり投げ出されても困りますよ」
ピシャリと言うアーサー。ジークは本気ではなかったと示すように軽く肩を竦めた。
「冒険者、ですか……」
次男のフリードは、スターリー一家を少し羨ましそうに見つめた。
「お。フリード。騎士を目指すのをやめて、冒険者になるか?」
ジークがニヤリと口の端を上げて笑った。
「騎士を目指されているんですか?」
アイナが訊ねると、フリードが頷いた。
「僕は家を継ぐわけじゃないから。いずれこの家を出ることになる。それなら騎士を目指そうかと思って騎士学校に入ることを考えていたんだけど……」
「冒険者になるのも良いんじゃないか? 登録したらすぐに活動できるぞ」
ジークが言うと、フリードは少し考えてからコクンと頷いた。
「じゃあ、僕は冒険者になる! ……仲間に入れてもらえませんか?」
「「「え?」」」」
フリード自身は、「いつか冒険者として成長して強くなったら、一緒に冒険者活動をさせてほしい」というような気持ちで放った言葉だったが、
ジークからすると、いずれ家を出て自立させないといけない次男を、信頼しているかつての仲間に預けられると考えた。
スターリー家当主であった父も、フリードが加わると男手も増えるし、バランスが取れるのではないかと考えた。スターリー一家は、父以外が女性の冒険者パーティだ。冒険者活動を始めてみると、女性の多いパーティということで、ちょっと目立っていたのだ。
今のところは、まだ、トラブルは起きていないが、場所を転々としていたら、ガラの悪いものがいる土地もあるだろう。その時までに身を守れるくらい強くさせたいという気持ちと、出来れば、あまり目立たずにやり過ごしたいと考えていた。
フリードは騎士学校に入学する申請をする前だったタイミングもちょうど良かった。
そんな、思惑が働き、急遽、スターリー一家のパーティに、勇者の次男であるフリードが加わることになってしまった。
なぜか、「ずるいー、ずるいー」と、アーサーが欲しがり妹みたいなセリフを口にしていた。アーサーはわざとふざけて見せただけだが、冒険者への憧れがあったのだ。だが、次期当主だから、貴族学園に通わないといけないし、無茶な冒険などはできないと思っていたのだ。
フリードの冒険者登録を済ませて、正式にスターリー一家の冒険者パーティに加わった。この時になって、アイナは気がついた。この勇者の次男フリードこそ、ゲーム本編の新勇者の祖先だということに。
ゲーム本編に何か影響が?
いや、すでにスターリー一家が、平民になり国を出ることを決めた時点で、ゲームの物語に多少の影響があるはずなので、今更であった。
オースティン子爵家の領地内で、フリードとの連携訓練がてら活動した後、いよいよ国外に向けて旅立つことになった。
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