効率を求め小型化を求め
はい、そうですね。
要は「狼煙」なんですけど、それをそのまま言うのも危険だと思いましたので。
「煙……それはもしかしてお祭りの時のことかしら」
そこでレルのお母さんから声が上がった。そしてそれは、まさに天啓だった。
私は狼煙を思い付いた理由として、適当な家を火事にしてしまおうと覚悟を決めてたからね。
……いえ、それはもちろんフィクションでの話ですよ。
「そうですそうです。祭りの時の篝火――という言い方で良いんですかね? ああいう時の煙って、高く上がりますよね? それはロート村から見ることが出来るんじゃないでしょうか」
考えてみれば、ロート村より標高が高いという条件はあんまり意味がないな。
でも、想像しやすくなったとは思う。
そしてロート村の住人たちは記憶を探りながら「見えるだろう」と保証してくれた。
収穫祭が少し前にあったからね。ロート村ではやってるのかは知らないけれど、山を見上げた時、気付くこともあったんだろう。
「でも、それってどういう意味が?」
煙の意味を理解してもらったところで、レルが次の順番とも言うべき疑問を口にした。この分では「狼煙」を知らないのかな?
それはレルがまだ幼いからなのか、大人も含めて誰も知らないからなのか。
それとも魔法でもっと便利になっているのか。
どれが正解であっても、私のやることは同じだ。
「村から煙が上がれば、その村の近くに巨大熊がいる事の合図になります。そうすれば、随分人手を節約できると思うんですがどうでしょう?」
出没ポイントがわかれば、山全体を山狩りする手間はなくなるなずだ。
そして、実際に巨大熊の被害が発生した時にも迅速に対処できるはず。
なにしろ山道を急いで降りて知らせる必要はなくなるわけで、
さらに兵士たちがロート村に駐在してくれるなら、安心度は増すはずだ。
しかも領主の負担も少なくなるはず。
これ別に私のアイデアでは無くて「ローマ人の物語」で読んだ、国境防衛のやり方ではあるんだよね。
前線で敵の姿を察知すると狼煙を上げる。そうすると国境線付近にある駐屯地から兵士が出動する――と塩野七生は書いていた。
確か狼煙によって、ドイツの奥地からローマまで半日で情報が伝達されたとか書いてあったような……
もちろん、そこまでの迅速性は再現できないだろう。
狼煙の上げ方で情報を細かく伝えることが出来る、なんてことも黙っておく。
ここまで言ったことでも、十分異分子的な扱いになる可能性はあるのだから。
「その方法を提案した場合……」
いち早く、私の「アイデア」を理解したらしいリーン女史が声を上げる。
「伯爵家は、先程よりも積極的に動いてくれそうに思います」
「そ、そうですか? やれそうな事を思い付いただけなんですけど……」
私の異常にいち早く気付きそうなリーン女史の前向きな意見に、私はさっそく言い訳を繰り出した。
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