体育会系クラブの罠
「はい、はい。ちゃんと歩いて。背筋伸ばして」
ライム刻んでる? と思うほどに、リズムよく𠮟られてしまった。
おかしい。今日は見学だけのつもりだったのに。
体育会系クラブに騙されている気分だ。
そして私をそうやって「指導」しているのが礼儀作法の講師みたいなポジションであるらしいエリス・リーゼ女史。
半白どころかほとんど真っ白な髪。名残、というのも変な話かもしれないけど、そこから窺ってみると元はブルネットの髪色だったのだろう。
その髪を綺麗に撫でつけて、頭上でまとめている様子はロッテンマイヤーの2Pカラーといったあたりか。
痩せたプロポーションに、飾り気のない濃い緑のドレス姿もよく似ている。
神経質そう、まとめてしまっても良い感じ。
ただメガネは掛けておらず、その瞳はアイスブルー。
金髪の孺子こと銀河帝国皇帝を思い出させる険しさだ。
履歴といえば、ローン伯爵家で長い間勤めていたとのこと。その伯爵領は、ここよりもずっと北にある領地らしくて海に面しているらしい。
海も設定されてるのか~、というのがレルから話を聞かされた私の感想だが、それは余談。
実際にリーン女史の佇まいを確認すると、
「北風がバイキングを作った」
というツェッペリ男爵の言葉を思い出してしまった。それほどにリーン女史からは厳しさを感じてしまう。
彼女は伯爵家でしっかりと勤め上げ、まとまった退職金――のようなもの――を貰って、ローン村に越して来たとのこと。
海はもう勘弁、みたいな心境でもあるらしい。
そういった経緯を思い出しながら私はしみじみと思う。
「引退を許可したのは誰だ!?」
と。
現役バリバリじゃないか。
田舎で悠々自適な生活を送るつもりがあるのなら、こんなボランティアに精を出さないで欲しい。
「はい、はい。背中が丸まっていますよ。ちゃんと伸ばして」
うう……下手に反抗すると、その分話が面倒になると思って唯々諾々と従っているわけだけど。なんともヤクいな、これは。
確か最初は「歩く姿を見たい」という話だけだったはず。
それぐらいなら、と受け入れてしまったのが運の尽きだったのだろう。
体育会系はこれがあるから恐ろしい。
ここは公民館というか集会場みたいな建物らしく、板張りで大きな広間があることが特徴だ。ハラー村には無い建物だ。
何となくダンスホールってこんな感じ? と思う空間。
そして私は今、そのダンスホールをいっぱいに使って周回している感じ。
体育館でランニングしてる感じが一番近いかな?
窓もしっかりあって採光も十分なので、体育館よりは明るいな。体育館よりは当然広くはないから、そのせいもあるんだろうけど。
で、その明るさのせいで絶賛さらし者という感じです。
「うんこ聖女」呼ばわりについてはそのままこの場所に持ち込まれていますよ、はい、はい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます