設定凝り過ぎ疑惑
テセウスの戦死が伝えられて、お母さんはこのハラー村に越してきたようだ。越して来たというよりは戻ってきたと言うべきか。
お母さんは元々、ハラー村出身であるみたいだし。
テセウスとの馴れ初めまではわからないけど、最初に生活していたのはこの山ばっかりらしい領でも拓けた場所にあるギーガーという街。
してみるとお母さんは都会で何かの仕事に就いていた、という事になるのだろう。
けれどテセウスの戦死によって、そのままギーガーに住み続けるのも難しくなったのか。それとも隣人の助けが必要になったのか。
この辺りの事情もやっぱり分からない。
でも
そしてお母さんはこの村で、あちこちの仕事を手伝いながら、私を育ててくれたようだ。
母さんは寡婦という事になるので、ミレーの名画「落穂拾い」みたいな悲惨な生活を想像してしまったが、そういう事にはならなかったみたい。
もちろん農作業の手伝いもあって、それは今でも続いている。
家の前にある小さな畑で野菜も育ててるしね。
ただ、この村の人たちは本当にいい人ばかりで、私がもっと手がかかる頃は、ほとんど無償でお母さんと私の生活を支えてくれていたようだ。
それにこの地方の領主も遺族年金……で良いのかな? とにかくそういった保証もあったようで、生活についてはむしろ余裕があったと言っても良いみたい。
だから、あの変な便利さも享受することが出来た、という事になるようだ。
そして今、お母さんはあちこち手伝いもしながら、メインは仕立てというか服飾関係の仕事をしてるみたい。一度はギーガーで生活していたことが、プラスに働いたみたいだな。
そのお母さんのもとで、幼児な私は呑気に暮らしているというわけなのだが……
思い出して欲しい。
私は元々、この世界をゲーム世界だと考えていたことを。
その前提から考えると、お母さんやテセウスの設定というか来歴は凝り過ぎなのでは? という気もする。
いや「怪盗アマリリス」であったように、芝居でもそれぞれのキャラクターに対して、膨大な設定を組み込むというやり方はあるだろう。あの漫画みたいに表に出ない脚本を書いたりして。
そうすれば、キャラの行動が自然になるというアレだ。
ただそうすると、このゲームは随分な熱意を込めて作られたという事になるわけだが、その場合はこのハラー村がデルフリ村に似ているという事については説明出来なくなってしまう。
だとすると、これは普通の異世界転生になるのだろうか?
何よりここがゲーム世界だとしても、私は元ネタのゲームがあるかどうか……それが、判断できない。
何しろ私「乙女ゲーム」というものをプレイしたことが無いからだ。
それなら、そもそも私がこの世界に転生する理由も見当たらないわけで……
うん! さっぱりわかんない! ヤクいね!
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