第11話 浮かれポンチ
「お返事でございます」
こちらも見ずに登校する彼女を背に、運転手が両手で手紙を差し出してきた。
車からは彼女ともう一人が降りてきて、もう一人の方はニヤニヤとこちらを伺っている。
「本当に返事を書いてくれたんですか?」
「はい、間違いなくマリお嬢様からのお手紙でございます」
「ありがとうございます!」
「あと、マリお嬢様から『お手紙のやり取りをさせて頂きますので、朝校門前で待ち伏せするようなことは避けて欲しい』とも承っております。『住所も書いています』と」
「分かりました!手紙書きます。有り難うございます」
少年は手紙を両手で抱きしめ、ペコペコと頭を下げている。後ろの二人が良かったなと声を掛けながらも、ほら早く学校行くぞと急かしているようだ。こんなことに付き合う友人がいるなら、悪い子ではないのだろう。まあ、パッとはしないが不潔感もなく暴力的でもない。恋する少年そのものだ、微笑ましい。3人が自転車で去った後、私も佐藤に手を振り校門をくぐった。
「何あれ?」
「面白いだろ」
「気持ち悪い」
「今朝、お嬢様から返事をもらったんだよ」
「それでか~。なんて書いてあったの?」
「それがな、まだ開けてもいない」
「開けたら地獄かもよ」
「家に帰ってから開けるんだそうだ」
手紙を胸に幸せに浸る少年を横目に、4人は明日学校に来るか来ないかで賭けを始めていた。
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