第5話 疑惑

「お前、『ホモ』って、言われてるぞ」


大笑いするカズと指差してニヤつくケン。


「誰が言ってんだあ?」


「まあ、部屋入れろや。カズがうるせぇ」


舌打ちしつつも二人を中に入れる。


「で、誰が言ってんだ?」


窓際のソファにケンが座り、カズは冷蔵庫を物色している。


「そんな怒んなって、今回のサポメンの子達よ」


「2次会で『全然、噂も聞かないですけどそっちなんですか』ってよ。」


またカズが大笑いしてやがる。


「まあ、俺ら、年も年だし。所帯持ちの俺らと違っておまえだけ一人者となりゃそんな話も出るわな」


「そりゃそうだ」


独り者=ホモってのはむかつくが、俺ら世代のこの年齢で独り者てのは変かもな。


「まあ良い。何してたんだ?って、聞くまでもないか」


「こないだ見せた曲の歌詞をな」


「おまえ、また変なオカルトネタ入れてないだろうな」


「あれ、やめてよね」


「昔の話をいつまでも。最近全くしてねえだろ」


「ふーん」


「弾きながら歌ってみてよ」


立てかけてたアコギを抱えて歌い出す。


「ちょっと部屋からベース取ってくるわ」


バタンバタンと忙しなくケンが出入りした。


カズが、俺らの話をメモっている。




男達が楽器を鳴らし歌うホテルの部屋の周りは明かりもなく静まりかえっている。

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