第5話 勇者の末路(王都ざまぁ編)
ライオネルを打ち倒したあと、俺たちは王都へと戻った。
ティアナが王女としての身分を明かしたことで、城門の兵士たちは慌てて道を開けた。
「ご、ご王女殿下!? それに……隣の男は……?」
「私の、ご主人様です」
あっけらかんと言い放つティアナ。
衛兵たちが目を剥いた。
「ご、ご主人様ぁ!?」
「えっ、あの……どういう……」
ミランが笑う。
「にゃはっ、ティアナはもうカイ様のものにゃ〜」
「ちょ、ちょっと待て、誤解を招く言い方するな!」
そんなやり取りをしていると、王城の中から、金の鎧を着た男たちが現れた。
――ライオネルの配下、勇者隊の残党だった。
「貴様……カイか!? 勇者様を陥れた裏切り者め!」
「裏切り? へぇ、じゃああいつが仲間を捨てたのは“忠義”って呼ぶのか」
怒りをあらわにする彼らを前に、俺は懐から一枚の金色の石板を取り出した。
「これを見ろ」
そこには、迷宮で記録された魔影の映像――ライオネルが魔族と取引し、仲間を生贄にした瞬間が映っていた。
「な、なんだこれは……!」
「勇者様が……まさか魔族と……!」
王の玉座の間に場が移る。
白い髭の王が、険しい表情で俺を見た。
「この映像、確かにライオネル本人か?」
「はい。彼は魔王の力を手に入れるために、仲間を犠牲にしました。俺は、その証拠を“拾った”だけです」
沈黙が広がる。
やがて王はゆっくりと立ち上がった。
「勇者ライオネル……処刑とする」
重苦しい鐘の音。
引きずられるように連れてこられたライオネルの姿は、もはや見る影もなかった。
「や、やめろ……! 俺は勇者だぞ……王に選ばれた男なんだ……!」
「お前を選んだのは、神ではなく欲望だ」
俺は静かに言い放った。
「俺から奪った仲間も、名誉も……“拾い直す”時が来たんだ」
ライオネルの瞳に恐怖が浮かぶ。
「カイ……お前だけは……絶対に許さない……!」
「許しなんていらない。俺はもう、“誰かに認められるため”に戦ってるわけじゃない」
処刑の剣が振り下ろされ、すべてが終わった。
静寂。
その中で、王が俺に向かって頭を下げる。
「勇者の名を汚した罪人を討ったそなたに、王国より感謝を」
「……俺は勇者じゃない。拾い屋だ」
そう言って背を向けると、ティアナが小走りでついてきた。
「ご主人様……お疲れさまでした」
「だから“ご主人様”はやめろ」
「やめません」
「にゃはは〜、もう手遅れにゃ」
「……お前ら、ほんと自由だな」
ルシアンが後ろから微笑む。
「ですが、貴方の背中に皆がついていく。それが“本物の勇者”というものですよ」
俺は苦笑し、夕陽の差し込む城下を見渡した。
瓦礫の中から拾い上げた人生が、こんなにも眩しく輝くとは思わなかった。
“ゴミ拾い”は今日も、世界の残骸を拾い続ける。
――たとえそれが、誰かの勇者の夢の欠片であっても。
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