第6話 イベリア歴612年 ほれる2
隣町の貴族から縁談があり、姉は眉間にシワをよせ、いつもより緊張した感じですごしていた。
けれど、いつも通りの朝が来て、姉が居ないので部屋に行ったら、ドアが少し開いていて中が見える。
「おはよう……って、アレ? 居ない」
ベッドの上には手紙……。
これは、キタ~~~。なんか面白展開~~~。興奮してきた~~~~!
『ヘルマンと旅に出ます。探さないで下さい。イレーネ』
まったく、ド定番の文章に「やったよー。いつからー? やるねー。もう、ヤッてるねー!いゃーん!」と心で叫んだ。
「母さん大変だよ~~~これ見て~~~母さん~~~~!」
「うるさいね~。お前はほんと落ち着きがないんだから、誰に似たのかね~。……何! これ……何!」
「お父さん大変! イレーネが~~~お父さん……」
「騒がしいな~。お前はほんと落ち着きがないんだから。ん! こりゃ~大変だ~~」
最終的には村長のマリオが教会に行って、状況確認に出かけた。
途中、ゴメス神社の神父が向かってきて、神父の方でも弟ヘルマンの置手紙があったらしい。今は二人で話し合いの最中だ。
あーしは内容が聞きたくて近くに行こうとするが、母さんに手を掴まれてしまった。
「大人の話だから……」
身動きが取れず、体をくねらせながら耳を爺さんの方に向け、聞き耳をたてた。
「あ~~好物が~~~」とうめきながら、見守っていた。
数日後。
貴族に事情説明の使者を出す予定だったが、国から婚姻は不許可とお達しがあった。領主が貴族家に使者を出す事になって、村長のマリオも一安心した。マリオは領主にイレーネの事を伝えたが、一連の騒動は中世ヨーロッパみたいなこの時代では見つける事もできないので、放置する事になった。
あーしは久しぶりに興奮した。三十五歳のヘルマンと二十歳のイレーネの駆け落ち劇。恋愛小説の現実版に興奮しっぱなしよ~~~~~~~~~。
いやらしい妄想を振り払いながら、寂しそうなダニ吉兄さんの背中を見て、チョット可哀そうになった。けれど、あまりにも哀愁が漂う背中に、ニヤリと悪い笑顔になる。
よ~し、明日はいじるぞ~~、と新たに決意した。
ここ数年、ブル吉はオレを見ると逃げていく。逃げると追いたくなるのが信条だ。神父の居る所で声をかけて、逃げられない様にして理由を問い詰めた。
子供の様な理由だった。数年前、林の所でオシッコしている時に、あーしが後ろからチン〇を掴んだのが原因らしい。ひどく傷ついたらしく、一応「ごめんなさい」と言って謝った。
けれど、「あと数年もしたら、掴まれるぐらい平気になるのに」と教えてやったら、「ありえない!」と怒っていた。
まったく十二歳にもなって、ブル吉ってお子ちゃまなんだから。
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あっという間に十八歳になったある日。母さんが屋敷の北側で鳥を絞めていた。
オレは数年前まで、肉は『人工肉』だと思っていた。
あまりの衝撃に気を失い、まるで貴族のお嬢の様に「ひゃ~」と可愛らしく気絶してしまった。不覚にも失禁もしていた。
そして、この世界は命を頂いているという現実に、巫女として祈りが深くなり、神父に褒められた。怪我の功名というのか? よくわからないがそんなところだ。
あの時、あーしは気絶して目が覚めた際、母と兄が覗き込む顔の間から見てしまったのだ。
広い空、雲のそばを通過する『地球の監視探査船SK-11』が雲に入るのを。
あーしは「ギャー」と声を出して、また気絶した。なんか癖になりそう~で、イヤ~。
あれから、神社の管理官と思われるニャンコに毎日悩み事相談したり、愚痴ったりしていたが、あれは三年前に生まれた本物の猫ってことを知って……。あ~しのバカ~……。
あーしの記憶では、あれはSK-11に間違いない。管理官は十年間隔でコンタクト出来ると言ってた。
あと二年で二十歳だ。ニャンコに話を聞かねばならない!
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