【完結】キラキラ☆デスゲーム~キラキラネームを変えたくてデスゲームに参加する少年少女たち
マウンテンゴリラのマオ(MTGのマオ)
第1話 「キラキラ☆デスゲーム」
ようこそ、「キラキラ☆デスゲーム」へ。
参加希望者ですね? では、ゲームの説明を致します。
「キラキラ☆デスゲーム」は、その名の通りデスゲームです。ゲームの内容はその都度変化しますが……全てのゲーム共通で決まっているのは、敗者は死亡するということです。ええ、死亡。ゲームに負けたら問答無用で死にます。
怖気づきましたか? ええ、それもいいでしょう。まだお若いんですから、命は大事になさって下さい。
……はい? それでも参加すると? まあいいでしょう。では、説明を続けます。
デスゲームの敗者は死亡すると申しましたが、当然ながら勝ち抜けば報酬が与えられます。その報酬とは……ええ、当然ご存じでしょう。改名の権利です。
「キラキラ☆デスゲーム」は、いわゆるキラキラネームに苦しむ方々を救済するのが目的です。ゲームの勝者は、その名前を自由に変えることが出来ます。戸籍データを完全に改竄することで、そこに紐づいたデータも全て書き換えることが可能です。今はマイナンバーで各所の個人情報が連動しているので、大元を変えれば全てに反映可能です。
それでは紙のデータまでは反映されない? 確かに。ですがご安心を。勝者の職場、通っている学校などに働きかけて、そちらでも改名されたことを周知します。特殊な方法で通達するので、細かい手続きなどもこちらで纏めて請け負います。
勿論、改名が目的ならば、通常の手段を用いた方が低リスクでしょう。ですが、「キラキラ☆デスゲーム」ならではの利点もあります。
まず第一に、この改名は確約されています。通常、改名には裁判所の許可が必要です。つまり、裁判所が設けている基準にそぐわない理由では、改名が出来ません。しかし、「キラキラ☆デスゲーム」であれば、そんなことはありません。どんな理由であれ、改名は認められます。
勿論、新しい名前も自由に決めることが出来ます。ひらがな、カタカナ、漢字で表現できる名前、という制限はありますが、それだけです。名字も含めて、自由な名前を使うことが出来ます。
第二に、年齢制限がありません。改名の手続きが可能になるのは十五歳以上の者だけです。十四歳以下の場合は法定代理人……平たく言うと保護者が代行することになります。しかし、「キラキラ☆デスゲーム」には年齢制限はありません。勿論、保護者の許可も必要ありません。
以上になります。……それだけ? はい、それだけです。命を懸けて、名前を変える。はっきり申し上げますと、全然割に合いません。死亡した場合、個人情報が戸籍ごと抹消されるので、社会的には死亡扱いですらありません。最初から存在しない人間となります。
言うまでもなく、人の記憶までは改竄できないので、ご家族ご友人はあなたのことを覚えているでしょう。しかし、行方不明になったあなたのことをいくら探しても見つかりません。警察に頼んでも捜索して貰えません。改名の際と同じ方法を用いて、敗者の存在を抹消するように働きかけますので。
ご自身がいなくなって、悲しんでしまう方がいらっしゃるのであれば、参加はお勧めしません。
それでも、何としてでも改名したい。そういう意気込みがある方だけがご参加頂けるゲームとなっております。
それでも参加したい、ですか……分かりました。それでは、参加手続きについて説明致します。
別室での説明となりますので、こちらへどうぞ。
◇◇◇
「皆さん揃いましたね。それでは、「キラキラ☆デスゲーム」を始めます」
男の声が部屋に響き渡る。地声ではなく、マイクで増幅された音声である。
男は中肉中背、スーツを纏った、ありふれた格好であった。しかし、頭にはシルクハットを被り、顔には白い仮面をつけたことで、完全に不審者と化していた。
「まずは、皆さんの目の前にあるタブレットに注目して下さい」
男の前方には、八組の机と椅子が円形状に並べられていた。机の前には大きく数字が書かれている。机の上にはタブレットが置かれており、操作しやすいようにスタンドで保持されていた。
そして、それぞれの席に座るのは若い男女。十代前半くらいの、少年少女だった。
「タブレットには最終確認ボタンが表示されているかと思います。それを押して、左手を肘掛に乗せると、ゲームへの参加が確定します。つまり、今ならまだ引き返せるということですね。もしも帰りたいという方がいらっしゃれば、今すぐ席を立って部屋を出て下さい。決心がついたという方は、ボタンを押して左手を肘掛に乗せて下さい」
男に言われて、少年少女たちは躊躇いながらも、指示された通りにする。タブレットに触れ、左手を椅子の肘掛に乗せると、肘掛が変形して手首を拘束した。
「はい。これで皆さんの戸籍データは消去されました。勿論、ゲームに勝ち抜いた暁には、ちゃんと復元致します。名前の欄を、皆さんの望むものに書き換えた上で。―――逆に言えば、敗北すれば皆さんはそのまま死にます。戸籍データも消えたままになるので、皆さんは最初からこの世にいなかった扱いとなります」
男の説明に、少年少女たちが動揺する。しかし、腕を拘束されている以上は、今更逃げることも出来ない。
「それでは、今回のゲームについて説明します。皆さんにプレイして頂くゲームは、人狼となっております」
すると、男の背後が光った。壁際にスクリーンが設置されており、そこにプロジェクターから映像が投影されているのだ。
スクリーンには「人狼」と大きな文字で書かれている。ゲームの説明に使うらしい。
「皆さんはご存じでしょうか? 人狼というゲームは有名ですから、ご存じの方もいらっしゃるでしょう。しかし、知らない方もいらっしゃるかもしれません。それに、今回は多少ルールにアレンジを加えているので、確認の意味も込めてしばし説明にお付き合い下さい」
男の言葉に合わせて、スクリーンの映像が変化した。八人の人型が表示される。うち七人は白い普通の人型で、一人だけが狼を模した黒いデザインの人型になっている。
「人狼とは、プレイヤーが村人と人狼に分かれて行う騙し合いです。勝利条件はとっても簡単。村人側は、人狼を全滅させれば勝利。人狼側は、村人を人狼と同数まで減らせば勝利。今回は人狼が一人ですので、村人の生き残りが一人になれば人狼の勝利ですね」
黒い人型の上に「人狼」、それ以外の上に「村人」と表示される。
「つまり、村人に選ばれた方は人狼を見つけて排除する。人狼に選ばれた方は村人を排除しながら生き残る。これを目指す訳です。では、その方法について説明しましょう」
またもや映像が切り替わる。上部に「昼」と表示され、その下には八人の人型が。
「このゲームには昼と夜が存在します。昼はプレイヤー全員で話し合いを行います。今回は、昼の時間は二十分としましょう。そして話し合いの後、投票を行います。投票で選ばれたプレイヤーは処刑され、ゲームから除外されます。ただし、最多得票数のプレイヤーが複数現れた場合は投票が無効となり、処刑はされません」
人型の上に数字が現れる。投票での得票を表現しているのだ。
「……言うまでもありませんが、ゲームから除外された方はそのまま死んで頂くことになりますね」
一人の人型の下に穴が開いて、人型がそのまま落ちていく。これが処刑されるプレイヤーなのだろう。
「皆さんの足元の床には細工がされています。ゲーム内で死亡したプレイヤーは、床が開いてそのまま地下に落下する仕掛けになっています。そしてそのまま、本当に死亡することになりますね」
そして映像が切り替わる。全体的に暗い色となり、上部には白い文字で「夜」と表示されている。
「そして夜になると、人狼がプレイヤーを一人選んで襲撃します。襲われた村人はその時点で死亡。ゲームから除外されます」
一人の人型が真っ二つになり、そのまま消滅するアニメーションが流れた。人狼に襲われたことを表しているのだ。
「その後はまた昼となり、話し合いを経て処刑、そして夜となり、人狼に襲撃され……という手順を、勝敗が決するまで続けることになります」
映像でも昼と夜が交互に繰り返され、その都度人型も減っていく。
「投票と襲撃はタブレットを使用します。そして、プレイヤーの識別には数字を用います。タブレットに表示がありますので、それを元に議論や投票を行って下さい。自身が村人なのか人狼なのかもそこに表示されていますし、ルールを読み返すことも可能なので、是非ご活用ください」
ゲームの参加者は、名前ではなく数字で呼び合う。参加者は改名の権利を賭けているので、名前にコンプレックスがある可能性が高い。その配慮だろう。
「さて、ここまでは人狼の大まかなルールでしたが……今回は多少のアレンジを加えます。それについての説明ですね」
男がそう言うと、スクリーンに「特別ルール」と表示された。
「まず一つ目。最初の昼で処刑されたプレイヤー、最初の夜で襲撃されたプレイヤーは、例外的に死亡しないこととします。最初は何も手掛かりがありませんし、駆け引きのしようがありませんからね。最初に襲われたプレイヤーを手掛かりにして、次回以降の議論や投票に活かそうということです」
男の発言内容がスクリーンに映し出される。「特別ルールその1:初日は誰も死なない」と。
「そして二つ目。人狼と村人が一人ずつ残れば人狼の勝利と言いましたが、この場合、残った村人も勝利とします。つまり、どんなに悪くても二人は生き残れるという訳ですね。―――要するに、村人とか人狼とか関係なく、生き残った者が勝者となるのです」
スクリーンの内容が更新される。「特別ルールその2:最後まで生存していた者が勝利する」。
「さて、一通り説明しましたが―――何か質問はありますか? ……なさそうですね。それでは、ゲームを開始します」
「キラキラ☆デスゲーム」、人狼ゲームがスタートした。
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