第2話 異世界召喚
俺──
スマホでYouTubeのショート動画を適当に漁っては、無意味に時間を過ごしていたはずだ。
不意にとある野球選手の動画が流れたはずだったと思う。
それはメジャーリーグのワールドシリーズとかいう大舞台で伝説的活躍をした選手の動画で、試合前の彼の何気ない発言が通訳によってめちゃくちゃカッコいい名言に意訳されて伝わってしまった、といった感じのものだったはずだ。
「『なんとしても負けるわけにはいかない』が『負けるという選択肢はない』って、ウケるな」
と、俺はベッドの上で吹き出したはずだ。
しかも結果的に大活躍して有言実行してしまってるところが余計に面白くて、「カッコよすぎるだろ」と笑いが止まらなかったはずだ。
え、なんで『はず』ばかり言ってるのかって?
それは何故かといえば、記憶が真実であることに自信が持てなくなったからだ。
だってついさっきまで家のベッドでゴロゴロしてたはずなのにだぞ?
そこでYouTubeのショート動画を眺めていたはずなのにだぞ?
なんか急に眩しい光に包まれたとおもったら、どうして俺はいま、空を落っこちているんだ──?
「うおおおあああああああああああああああ!?」
よくわからんがものすげー勢いで地面に向かって落ちている! 当然パラシュートみたいな装備はない! 当たり前だ、だっていままでベッドの上にいたんだもん!
もはや痛いくらいの風圧を全身に受けながら、それでもどうにか真下に目を凝らしてみると、どうやら広がっているのは森らしい。
ひょっとしてワンチャン木がクッションになって助かる説ある……?
「んなわけあるかああああああああ絶対死ぬううううううう!!」
流石に希望的観測すぎて自分を騙せなかった! 賢い自分が憎い!
てかあっという間にいよいよ地面が近い。つまるところ人生の終わりが近い。
「どうにか、どうにかしないとおおおおお!」
藁にも縋りたい思いが込み上げるが、悲しいかな、掴めるものといえば空気だけである。
「どうにもできねえええええやべええええええ!! 誰か、神様、神様お願い助けてええええええ一生に一度のお願いだからああああああ!!!」
最後の手段とばかりに神へ懇願する。
すると脳内に無機質な音声が響いた。
『承認。召喚特典の
え?なんだって?
召喚特典? オンリーワンススキル?
なにがなんだかわからない。
でもとりあえず確実に聞こえたのは、確定死亡回避っていうワードだ!
「うわああああああああああああああ!!」
謎の脳内音声に希望を託し、俺はついに森を突き破って地面に激突した。
衝撃と同時に巻き上がる土煙。
意識は……ある。
けれど視界が茶色く覆われてなにも見えない。
これじゃこの世かあの世かわかったもんじゃないぞ、なんて思っていると、そのうち風が塵芥を吹き流して徐々に視界が晴れてきた。
ようやく世界が鮮明になる。
とりあえず自分の体をぺたぺた触ってみる。痛くもなんともない。あちこち目で見て確認しても、まるで傷ひとつもない。
「助かった……?」
どうやらマジで死なずに済んだらしい。【確定死亡回避】とかいう未知の力が俺を救ってくれたのか。
とりあえず無事にまた自分の足で大地に立つことができた喜びを噛みしめていると……不意にか細い声が聞こえた。
「ウオユ……エラ……イム、オルフ……?」
視線を下げる。
するとそこにへたり込んでいたのは──長い白髪に金銀のオッドアイをした小さな女の子だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます