第2話 僕の地球最後の人生

「」話し声 『』心の声


2027年7月21日、仕事が終わった帰り道。いつも通り車を帰路に走らせていた。しかし、何故か夕焼けがいつもよりきれいに見えた。僕は実家に着くと、田んぼまで歩いた。夕焼けが消え始め、夜が始まってきた。僕は山から吹いてくる夏風を静かに浴び、夜に溶けた。


そんな時だった。大地が舞い踊った。僕は体ごと空を見上げていた。空にまばゆいほどの彗星が流れる。誰がこのハーモニーを味わうと思っただろうか。

「うわっ。」

『今日、流れ星が降るなんて誰か言っていたっけ?』

揺れは体を何度も胴上げする。彗星は何故かどんどん近づいてくる。

「えっ。」

『近くね。あぁ、でも綺麗だ。』

僕が地球を離れた瞬間、彗星がどこかで当たった。体が爆音を包み込み、意識が遠くなる。

『もう俺は死ぬのか。どうせなら恋したかったな、甘酸っぱい青春がしたかったな。もう無理なのか、僕は。』

頭の中の妄想の青春が走馬灯の中で見える。入学式、席替え、学校行事、諸々全ての無かった思い出が本当にあったかのように思い出されていく。男子校の工業高校出身、高卒の僕にそんな本当はもうなかったのにも関わらず、確かにその世界ビジョンで僕は青春をした。

『あぁ、いや』

「僕は青春をした。」

暴風が土砂とともに体を隠す。その前に意識は無くなっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る