第1章 世界構造と理層体系

1. 世界の根幹構造

この世界は、目に見える物質層の背後に存在する

**理層(りそう)**と呼ばれる魔力情報の層によって支えられている。

理層はあらゆる生命・物質・現象の基盤であり、

そこに流れる魔力は、世界の「命脈」とも呼ばれる。

魔力は生命の存在と循環を維持する根源であり、

世界そのものが魔力による情報構造体として成立している。

生物の誕生から死、自然の流れ、そして文明の形成に至るまで、

そのすべてが理層を介して連続的に結びついている。

理層は多層的な情報網を成し、

上層ほど抽象的で高次の法則を司り、

下層ほど物理的・生物的現象として顕在化する。

この層の循環が乱れることを「揺らぎ」と呼び、

それは自然災害・魔力暴走・精神異常といった多様な形で現れる。


2. 魔力と理層の循環

魔力は世界を構成する根本エネルギーであり、

大地や海、空気、生命を通して循環している。

その流れは「地脈」や「理脈」として観測され、

古代より“世界の血流”として重要視されてきた。

生命体はこの循環の一部として魔力を取り込み、

それを自身の活動源として利用する。

魔力の強弱は生命力と密接に関係しており、

魔力の枯渇は生命の終焉を意味する。

魔法の行使とは、この理層循環に一時的な指令を与え、

その反応を制御して現実に影響を及ぼす行為である。

したがって魔法とは、自然法則に干渉するための言語的・論理的操作であり、

文明の発展とともに体系化されていった。


3. 五行と属性体系

世界の魔力は、根源的には七つの属性に分類される。

五行(木・火・土・金・水)に加えて、極性を司る光と闇が存在し、

それらの均衡が世界の理層を支えている。


属性   理層的役割     相克関係        備考

木    生命・成長・再生  金に切られ、火を生む  精霊界では生命循環の核

火    情熱・変化・破壊  水に制され、土を生む  意志と行動の象徴

土    安定・秩序・結合  木に侵され、金を生む  理層安定の基礎

金    意志・判断・分離  火に溶かされ、水を導く 意識構造と演算の象徴

水    流動・記憶・感情  土に吸われ、木を育む  精霊や理層情報の媒体

光    創造・調和・展開  闇と対を成す      情報生成・再生の極性

闇    吸収・静寂・終焉  光と対を成す      情報の終端・保存の極性


光と闇は五行を超えた「極性構造」として存在し、

光が創造と再生を、闇が吸収と静寂を司る。

この両極の均衡が、理層循環と情報の安定を維持している。


■無属性(分類外属性)

七属性(五行・光・闇)のほかに、**いずれにも属さない「無属性」**が存在する。

これは既存の属性体系では分類不可能な魔力出力を指し、

複数属性の干渉や未知の演算によって発生することが多い。

無属性は、他の属性が物理法則や自然現象に準じるのに対し、

物理法則そのものから逸脱した結果をもたらす特異な性質を持つ。

その現象は不安定で再現性に乏しく、古代から現代に至るまで

体系的な解析は未だ確立されていない。


4. 種族構成と魔力適性

本世界における生物種は、起源・身体構造・魔力保有量・文化形成の有無によって

大きく五つに分類される。

以下は文明圏における一般的な大分類であり、

細種や上位存在については本章では扱わない。


■ 魔法族(魔族)

体内魔力濃度が極めて高く、魔力の制御・運用に長けた長寿種。

魔法文明期には理層技術や魔導学の発展を担った中心的存在であり、

今日でも高い知性と魔力適性を持つことで知られる。

繁殖力は低く個体数も少ないが、魔力特性は強く子孫へと受け継がれる。

古代には、人族や獣族が高い魔力環境に適応する過程で

変質・進化した個体が存在したと伝えられており、

その名残が現代の魔法族の血統に繋がっているとも言われる。


■ 人族(人間族)

体内魔力が低く、代謝の速い短命種。

しかし繁殖力と適応力に優れ、文明圏の主流を担う。

自らの魔力の低さを補うため、

魔法理論の体系化や魔道具・外部演算の技術を発展させてきた。

知性と応用力の高さから、多くの国家・宗教・学術体系を築く中心となっている。


■ 獣族(獣人族)

動物的特徴を残す半人半獣の種族群。

外見・能力・文化いずれも多様で、種に由来する身体的特性が強く表れる。

魔力適性は個体差が大きいが、

純粋な魔法よりも身体強化や感覚拡張といった

肉体的適応に長けた者が多い。

その発祥は動物種からの進化、または魔力環境による形質変化とされる。


■ 動物

言語や文化を持たない生物の総称。

多種多様な生態を持ち、体内魔力は微弱だが、

自然循環の一部として理層の維持に関わっている。

魔力を多く蓄える環境下では、

後天的に変異して魔物化する事例も確認されている。


■ 魔物(モンスター)

高濃度の魔力を先天的または後天的に宿した生命体。

知性の有無は個体差があり、

単なる本能のままに動くものから、人族や獣族に匹敵する知性を持つものまで存在する。

下級竜種のように言語を持たぬものは動物と重なり、

上位竜種や理層干渉能力を有する存在は魔物として分類される。


5. 世界の均衡と理層の揺らぎ

この世界は、理層と呼ばれる魔力情報の層によって構築されている。

すべての存在は理層の影響下で形を保ち、

その循環によって生と死、創造と消滅が繰り返されている。

五行と極性(光・闇)の均衡は、理層の安定を保つための根幹であり、

この調和が崩れると「揺らぎ」と呼ばれる異常が発生する。

揺らぎは局所的な魔力の暴走から、地形・気候・生命活動の変動にまで及び、

文明の崩壊や種族淘汰を招く要因にもなり得る。

古代より、この現象は「世界の警鐘」として畏れられ、

理層を読み取り、揺らぎを抑える術を求めて

多くの文明が魔法理論や信仰体系を築いてきた。


■創造神アルディアと世界の管理

この世界の理層循環と均衡は、

創造神アルディアによって監督されていると伝えられている。

アルディアは万物の流れ、生命の誕生と終焉、

そして世界の理そのものを見守る存在として崇められている。

その影響は直接的ではなく、

理層を通じて世界全体に緩やかに及ぶと考えられている。

アルディアの姿を見た者はいないが、

理層の安定と循環を「神の息吹」として理解し、

人々はその均衡の上に生活と文明を築いてきた。

世界の均衡は、光と闇、創造と終焉、理と混沌。

そのあらゆる対極が釣り合うことで成り立っている。

そして、その調律を保つ中心に――

アルディアの意思が存在すると信じられている。


6. 世界構造の総括

本世界の設定は、地球と極めて近しい構造を持つ惑星型世界であると考えられている。

物理法則と魔力法則の双方が共存し、

その複合環境の中で進化した生命体が文明を築いてきた。

魔力は惑星内部および理層循環の範囲内で安定的に存在し、

宇宙空間や惑星外環境において同様の法則が適用される可能性は低い。

したがって、この世界の理層体系は惑星内限定の循環構造であり、

魔力は惑星外に流出せず、外界では成立しないと考えられている。

創造神アルディアは、この惑星内理層の循環と均衡を統べる存在として信仰されている。

しかし、その影響が惑星外まで及ぶという記録や証拠は存在せず、

アルディアの領域はあくまでこの世界の内部に限られるとされる。

また、外的観測の観点からはこの世界を“惑星”と定義できるが、

理層構造の解析次第では“閉じた世界”あるいは“平面世界”として

定義補正する余地も残されている。

世界そのものが観測者の立場や文明の理解によって変化し得る――

それがこの理層世界の特異性である。

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