裏切り者の魔法少女に転生したけど、推しが恋人を名乗ってきて重すぎるので助けてほしい
ペン
プロローグ
「なぁ、聞いたか? 魔法少女ラピスの噂」
暗い会議室に、囁くような声。黒服の幹部たちは、深夜の作戦会議そっちのけで、妙に真剣な顔をしていた。
「ラピスが魔法少女を裏切ったってやつか」
「そうだ。裏切ってコチラ側に来たらしいが、気は抜くなよ。裏切り者はどこに行っても裏切り者だからな」
会議室のドアが、ゆっくりと開いた。
全員の視線が集まる。
「……失礼します。本日からコチラの支部に所属する事になった——ラピス、です。よろしくお願いします」
白い靴音。黒い外套の下から覗く、淡い青髪
「――ラピス」
誰かが息を呑む。空気が、一瞬で凍りつく
うん。やっぱり顔、知られてるよな
俺――いや、ラピスは軽く頭を下げた。
魔法少女、正義から悪へ落ちた女。
だが中身は、ごく平凡な元、社畜男性。
どうしてこうなったのか、いまだに理解できていない。けれど、ひとつだけ確かなのは
この世界では、俺は裏切り者ってことだ
誰も声を発せず、私を見る。値踏みする者。
性的に見る者。怯えた表情で見る者。
「えっと、気にしないで。続けてください」
なんとか言葉を絞り出すが、誰も動かない。
沈黙の中、壁の通信端末が光った。
『至急戻ってこい。――彼女が来る。』
短い一文。送信者は悪の組織のボス、
黒の魔女。胸の奥が、ひどく冷えた。
(彼女……って、まさか)
部屋の照明が一瞬、明滅する。
外で雷鳴が轟き、窓ガラスが震えた。
ガシャンと青い閃光とともに窓が粉々に砕ける。夜風が吹き込み、散った硝子がきらめく
「見つけたわ、ラピス――」
白いドレスの少女が立っていた。銀髪が光を帯び、瞳には狂気とも執着ともつかぬ色。
ああ、やっぱり。お前か……私の元仲間で何故か私と付き合ってるとか言ってくる主人公
彼女の口元が、微笑んだ。
泣きそうなほど優しく。
そして、痛いほど歪んでいた。
「たとえ裏切られても私は貴方を愛してる」
「いや……付き合ってないよね?」
声は優しかった。だが、私が付き合っていないと言うと彼女は一瞬、鋭い目つきで私を睨んですぐに笑顔になった。
(いやいや、怖いって。君って確か――天真爛漫で、仲間大好きで、笑顔で全部乗り越えるタイプじゃなかったっけ?そんなヤンデレみたいな圧出すキャラじゃなかったよね?)
思わず視線を逸らしたくなったけど、
できなかった。アリアの瞳は、
ただまっすぐに私だけを見ていた。
笑っている。でも、圧がめっちゃ怖い。
「大丈夫だよ、ラピス。あなたがどう変わっても、どれだけ歪んでも、私だけはあなたを正しく理解してるから」
(いや怖い怖い。理解してるじゃなくて理解してると思い込んでるって言い方だよそれ)
原作で見たアリアはもっと柔らかくて、どこか危なっかしいけど、絶対的な善の象徴みたいな子だったはずだ。
今、目の前にいるアリアは――
優しいけど、優しさの形が違う。
「だからね、ラピス。あなたは逃げてもいいし、迷ってもいい。でも最後はちゃんと、私のところに戻ってくるって、知ってるから」
まるで未来がもう決まっているみたいに。
まるで私の選択なんて、最初から存在していないみたいに彼女は言葉を口にする。
(何処で間違えたんだろうか……)
この世界に来た時か。
魔法少女になった時か。
ラピスとして彼女と出会った瞬間か。
ただ一つだけ分かっているのは――俺の未来は、もう普通には戻らないってことだけだ。
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