激イケメン女に口説かれる女の子

「ダニエラ、改めてありがとう。」

「いえ、そんな、ミワコ様のためでしたら、私……」

「はあ、まあいいわ。」


 だめだ、ミワコ様の偉大で美しい、澄んだ森のような荒れ狂う火山のような力を感じて気持ちが昂ってしまっている。


「ダニエラ、今の私はなんだってできるわ。火で全てを焼き尽くすことも、風で全てを吹き飛ばすことも、水で全てを押し流すことも、土で全てを揺らして崩すことも。」


ミワコ様は手を開いて魔力を動かして順番に火、風、水、土を出して見せた。

四種類も属性を扱う魔法使いなんて聞いたことがない。ただ一人、『魔法使い』を除いては。


「ミワコ様、もしかして……」

「私のことを救ってくれた貴女には、秘密を教えてあげる。」

「は、はい。」

「私の職業は『魔導士』。魔法によって人を導く者。」

「『魔導士』……」

「正直、昔は意味もわからなかったわ。冒険者として活動していた頃は、周りよりはるかに劣る魔法を使える程度だったもの。複数の属性を使うことはできたけれど、それは隠した方がいいと思っていたから、有り余る魔力で体を強化して戦っていたの。」


突然ミワコ様が消えたかと思うと、隣に座って人差し指で私の頬を突っついてきた。


「こんな風に、ね。」


興奮してぼんやりとしていたとはいえ、私の目で見えないほど速く動くなんて……てかミワコ様近くない?今までの少し影のある少し弱気なミワコ様と違って、今の自信たっぷりつよつよイケメンミワコ様と至近距離でいると失神しそう。


「ダニエラ?ちょっと、ダニエラ?!」

「ふぁ、ふぁい!」

「もう、そんなにぼうっとして、私に見とれちゃった?……くふ、いいわ。

それで、今は、昔よりもずっと、なんでも魔法を使えるような気がするわ。属性とか、身体強化とかだけじゃない。大昔、エルフの賢人が使った『エルフの歴史書』にかけた魔法や、おとぎ話でしか聞いたことがない精霊なんかが使う奇蹟みたいなもの。魔法に関することならきっと、なんでもできるわ。例えば。」


なんの前触れもなく、ミワコ様はふわりと浮いた。

そしてそのまま、手のひらを私へ向けた。

するとミワコ様の魔力が飛んでくる感覚がして、私自身もふわりと浮かび出した。


「え、きゃあ!?」

「くふ、これは空を飛ぶ魔法。魔力をかためて進みたい方向とは逆に放出したら、かなりの速度が出るわ。まだ試したことはないけれど。」


 部屋の中を、俊敏にあちらこちらへ飛び回るミワコ様を見ながら、真似しようと思ったが、止めた。

よくよく見ると驚く程緻密に魔力を動かしていた。

私は魔力の出力を零か百かくらい雑にしか扱えないため、室内でこれをするとめちゃくちゃにしてしまいそうだった。

そのまま、動かないでいると、元いたソファにすとんと落ちた。


「くふ、心配性ね。今、なにか出来るとしたら……そうね、さっきも見せた瞬時に移動する魔法とか、保護する魔法。研究とかすれば、まだまだ色々とできるようになると思うわ。」


そう言ってミワコ様は一度言葉を止めてこちらを見つめる。


「あとはそうね……まあ、夜にでも。」

「ふぇ……」


ねっとりとした目でこちらを舐め回すように見つめて、舌舐めずりするミワコ様。まずい。こんなの耐えられない。


「ダニエラ。私ね、今まで我慢してきたの。」

「ひうっ、が、我慢ですか?」


いつの間にかミワコ様は私の後ろに移動していて、右の耳元で囁いてきた。


「ええ、魔法が扱えない私なんか、かわいい頑張ってる女の子達に釣り合わないって。だからぁ、なるべくは遠くで見るだけにしようとしてたの。」


ふわりと浮いたまま、逃げるわけもないのに私の頭を抱えて、今度は左の耳に囁いてくる。も、もうむり……


「でもぉ、可愛くてしょうがないダニエラ。貴女が来ちゃった。最初は、ちょっとだけ誘惑するつもりだったのに、貴女何度も何度も私にくっついて、好き好きって感情を隠そうとしなかったじゃぁない?」


私の顔はきっと耳まで真っ赤になってて、もしかしたら頭から湯気が出ているかもしれない。


「そんな愛おしいほどに悪い子のダニエラは、きっと私と同じだと思うの。結婚するなら自分より強い人じゃないといけない。最低でも同じくらいは強くないと。そうよね?」

「は、はい。」


半分くらいしかまともに聞いてなかったが、それはそうだ。自分より格下の相手と付き合う、ましてや結婚するとしたら、それは愛玩動物とか、そんな感覚になってしまうだろう。


「まあ、貴女よりもっと悪い私は、可愛い可愛い女の子をめちゃくちゃに打ち負かして、ペットにしたいなんて思ってしまうんだけど……あらぁ?もしかしてダニエラは私のペットになりたいの?」

「あっ、いや、そんな。」


まずいまずいまずい、もしかして心の中を覗く魔法なんかあるのかもしれない。


「そうよね?いくら私でも、貴女にめちゃくちゃに打ち負かすようなことはきっと、出来やしないわ。でもやってみないと、分からないわよねぇ。だから、手合わせしてみない?」


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