欠けた月が、ぬかるみに沈む
@Kaketatuki
第1話
夕方に、夜の闇が迫るころ私は外に出て、金魚の水換えをする。金魚は、私を認識しているらしく口をぱくぱくしている。生き物を飼って思うがひたすら生の執着が強いと思う。。それしかないのが羨ましく感じる。前髪をふわりと生暖かい風が撫であげる。やさしくそして、空虚感のある足音を残していく。わたしの年齢は43歳であり、世間的には中年にあたる。そして無意識に若さの憧れなのか、若い男性に目が入ってしまう…人はうしなったものに、もどれないものに、なぜ後になって気づくのだろう。
その時水が跳ねた。水がきらりと光り上を見上げるとまんまるの月が、虚な目でわたしを見ていた。全てを見透かすようにおまえが何を考えているか、しっているぞといわんばかりに。夜の静けさ、暗さが、不安定に跳ねる心をもうとばないように押さえ込んでくる。ただ体の奥から抑えても、抑えても、モグラ叩きのように、出てきては叩かれ、出てきては叩かれ、おそらく到底抑えきれない欲望がいまかいまかと、地上に出るのを、心待ちにしている。わたしはもうおさえれなかったんだろう。
満月が欠けた月になったあの日に、2階から見た月が悲しそうにひかっていたのをみた。なぜ、とめれなかったのか言わんばかりに、固く閉じた目からは、意味にわからない涙が流れた。私がいた世界は、安全装置がついていて、いつでも、シャッターがおろせる状態だった。だれがわかるの?何もない真っ黒な砂漠のような闇から歩いてくる人がいるんなんて。それは、金属より冷たく心臓を奥深く鷲掴みして永遠に離してくれないなんて、誰が信じるのだろう。
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