閑話① 記憶の残響 ― 交錯する頁 ―
雷の衝撃が図書館の空気を裂き、棚の端に積まれた書物が小さく揺れた。
寛は盾を固く握り、隣で杖を構える悟をちらりと見る。
「……影の従者か。黒崎の仲間だな」
寛の声は低く、冷静に響いたが、その瞳には緊張と決意が混じっていた。
悟はゆっくりと頷く。
「初めて見る相手だ。だけど……お前、以前から黒崎を知ってたんだな、寛。」
寛は拳を握り直す。
「……ああ。昔、協会にいた頃、俺と黒崎は一度だけぶつかったことがある。あいつ、禁書の力に取り憑かれてて……止めるために戦ったんだ。」
悟の目が鋭く光る。
「そのときは……どうだった?」
寛は少し息を吐き、遠くを見つめる。
「あのときは、俺だけじゃ力が及ばなかった。黒崎は禁書の力に飲まれていて、どうしても止められなかったんだ。でも、今日――あかりを守るためなら、俺は全力を尽くす。」
悟は静かに杖を握り直す。
「……あかりのことも知ってるんだな。狙われてる理由まで。」
寛は軽く頷いた。
「ああ。黒崎は……かつて結に想いを寄せていた。結は俺たちが知るところではあかりの母だ。黒崎は届かなかった想いを、自分の野望に変えてしまった。だから、あかりを狙ってる。」
悟はわずかに息を詰める。
「……結の娘か。なるほど。だから黒崎は力で全てを支配しようとしてるのか。」
寛は拳を固く握り、悟を見た。
「でも、あかりはただの標的じゃない。守る価値がある。俺たちがいる限り、絶対に守る。」
雷鳴が再び響き、影の従者が杖を構えて次の攻撃を準備する。
「おい、悟。これ、初共闘だな。二人で影の従者と戦うの。」
寛の声に、悟は淡く微笑むように頷いた。
「そうだな……でも、俺は図書館の一部としてずっとここにいた。こうして守ることは初めてじゃないけど、二人で共に戦うのは初めてだ。」
寛は軽く笑った。
「相棒……じゃなく、親友として、あかりを守る。それだけで十分だ。」
悟は冷たくも妖艶な微笑を浮かべ、杖を前に構える。
「……図書館が消えれば、俺も消える。それでも、あかりを守る。代償は、俺の“存在”だ。」
寛は肩をすくめ、短く息を吐く。
「なら俺たちは、二人で全力で行くしかないな。」
雷の残響が消え、図書館は再び静寂に包まれる。
だが、影の従者の瞳は冷たく光り、黒崎の意思を体現するかのように静かに二人を睨んでいた。
「……あかり、絶対に守る」
寛の低い決意の声が夜の図書館に響く。
悟も淡く微笑み、冷静にその隣で構える。
「……共に戦おう、寛。」
影の従者は沈黙のまま動き、雷のような魔力が次の瞬間にぶつかり合う。
二人の初共闘は、まだ始まったばかりだった。
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