第9話 その名はイサト
翌朝、フロマス
昨日ゾンビとゴーレムに襲われた広場まで戻り、そこからイザベルの証言に従って森の奥に入っていく計画だ。
イザベル自身は、他二人の遺体と共に別の
「ゴーレムの残骸が無いな。動きが止まってた犬のゴーレムも」
昨日壊したゴーレムはそのままにしていたのだが、きれいに無くなっている。さすがにエミールの魔術で焼け焦げた跡はそのままだが。
「ゴーレムはまだいるはずだから、それが回収していったんだろう」
「昨日、ご遺体も回収しておいて良かったですねぇ」
リエルがのんびりした調子でつぶやく。
回収したゴーレムを修理できるのかどうかは分からないが、遺体を再度ゾンビにすることはできるだろう。知り合いのゾンビというのはあまり何度も戦いたい相手ではない。
「あのご婦人が言っていたのは、この方向でしょうかね」
もう一人の
しかし、狩人としての腕は確かだ。ロミアンが指したところには、多少偽装されているがゴーレムのものらしい足跡があった。モルク達が来たのとは逆方向、もっと森の奥の方へと続いている。
「この先に壊れた馬車があって、そこで大きなゴーレムと会って戦闘になったって話だったな」
「ちょっと楽しみだな。昨日の人型ゴーレムは、数はいたけど強くなかった」
レクシアの強気な発言に、エミールが水を差す。
「藍の目のゾンビの不意打ちには気を付けろよ」
イザベルの言うには、壊れた馬車の側でゴーレムと戦闘中に、急にゾンビが割り込んできて曲刀をドルモアの首に突き立てたらしい。服装からすると行方不明の商人、イアンのようだったが、イザベル達の方に向けた顔には、大きな藍色の目が一つだけあったという。
その目から発された青色の光線に当たったところまでしかイザベルは覚えていなかった。
おそらくはその青色の光線が眠りの〈
「イサト・マカンだっけ? モルクさんは知ってるのか?」
「元々、フェロウリングのメンバーだった奴だ。もう7,8年前かな? 確かに、藍色の目をしていた」
イザベル達は、ゾンビの藍色の目をそのイサトのものだと直感したらしい。
モルクは記憶をたどりつつ説明する。
「フロマス
「そいつがゾンビになってたってことか?」
「いや、そうじゃないはずなんだけどな」
「根拠は?」
「シャイアから居なくなった後も、別の街の冒険者ギルド支部から、時々問い合わせが来てた。シャイアに居づらくなったから、別の街に移って冒険者は続けてたらしい」
冒険者は基本的に特定の街の支部に属するが、別に移動を禁じているわけではない。もっと強い敵を探して、とか結婚したので、とか単に好奇心だとか、いろいろな理由で本拠地を別の場所に移す者も多い。そんな時、支部同士の連絡網で「前の支部ではどれぐらいのランクで、どういう冒険をしていたのか」という情報共有をしているのだ。
確か、最後に問い合わせが来たのは、デイル王国でもかなり北、魔王のうわさがあるあたりだったはずだ。
「クロエの工房に来てた藍色の目の客も、イサトなのか?」
「ああ。ほぼ間違いない」
あの時は夜で少し離れていたし、伸びた前髪のせいで顔の半分ぐらいしか見えなかった。それでも見覚えがある顔だったことには自信があるし、向こうもモルクを知っている風だった。
「クロエを脅かしたり、ゾンビになってフェロウリングを襲ったり、忙しいやつだな」
レクシアの軽口に、モルクは笑って肩をすくめた。
マカン村に居たのもイサトだとすると、マカン村で逃げたその日の夜には灰の森でゾンビになってフェロウリングを襲い、次の夜には人間の姿でシャイアの街でクロエの工房を訪ねたことになる。
モルク自身が〈
まだ何か、モルク達には分かっていない事情があるのだろう。
「見えてきたぞ」
先頭を歩くロミアンが指さした先には、横倒しになった馬車があった。
★。*†*。☆。*†*。★。*†*。☆。*†*。★。*†*。☆。*†*。★。*†*。☆
「こんにちは、クロエです!」
「んー、あの藍色の目のお客さん、イサトって言うんですね。姓がマカンってことはマカン村の出身者?」
「それはともかく、ようやく商人さんの馬車にたどり着きましたね。契約書の入った箱の回収が元々の依頼ですからね、忘れないように!」
「次話 第2章第10話『災厄の種』です。 読んでくださいね!」
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