第5話 決闘! ゴールドランクvs無色?

「じゃ、始めな!」


 簡素な開始の合図と同時に、レクシアが突っ込む。

 木製の大剣を、大上段から振り下ろし。

 モルクが持つのも同じ木の大剣だが、剣で受けるのではなく身をよじってかわす。剣風でくたびれた金髪が揺れる。


 空を斬った大剣はそのまま地をたた……かない!

 レクシアが身体全体を回転させ、無理やり剣を横薙ぎにする。


「レクシア、開幕から連続攻撃だ! 速い速い速い!」


 ライラさんの実況と観客のどよめきを聞きつつ、モルクは自分の木剣で弾く。

 ガヅンと重い手応え。

 剣の横腹を叩いて軌道をそらすだけでコレだ。これが真剣だったら押し切られたかもしれない。

 モルクは思わず感心のため息を漏らす。


「なるほど、さすがゴールドランク」

「うるせぇ、無色むしょく!」


 ののしりとともに、レクシアは更に2度、3度と横殴りに斬りつける。


「まだ止まらないレクシア! さながら暴風タイフーンのよう!」


 ライラの実況にも熱が入る。確かに、木の大剣が風を切る音が暴風に聞こえなくもない。

 モルクはもう剣を構えずぶら下げたまま、レクシアの剣戟をかわすばかり。


「しかしモルクには当たっていない! 暴風タイフーンの剣筋を見切っているのか!? だがじりじりと、じりじりと下がっている!!」


「おい、レイナ! レクシアに銀貨3枚追加だ!」

「俺は5枚!」


 モルクが押されているとみて、観客が支部長を呼んで賭け金を追加する。1人が口火を切ると、我も我もと続く者がでる。


 モルクは意識はレクシアに向けつつも、ひとしきり賭けが終わるのを見計らっていた。リングを回るようにしてレクシアの攻撃を避けていると、クロエと目が合う。藍色の瞳にうなずかれ、潮時と悟る。

 足が止まっていたので、次の一撃は避けられない。

 ──が、避けるつもりもない。


「速いけど、軽いな」


 そう挑発しながら、自分の木剣の先でレクシアの剣を跳ね上がるモルク。


「んだとぉ!」


 怒りに顔を歪めるレクシア。


「振りの速さに集中しすぎて、腰が乗ってない。最初に弾いた時より、音が軽かったろ?」


 レクシアに、彼女に賭けていた観客たちに静かな動揺が広がる。


 図星だ。


 それを見てとって、モルクはさらに不敵な笑みを浮かべた。


「それに、攻撃の組み立て方が雑だ。単に振ってても当たらないのは、気づいてたろ? 分かってるんだから、せめてリングの角に追い詰めるぐらいの思考は見せないと。ゴールドランクは脳筋で生きていけるほど甘くないぜ」


 レクシアはモルクの思惑通り、顔を真っ赤にして声を荒げる。


無色むしょくのおっさんがッ! 大怪我しないよう手加減してやってたら舐め腐りやがって!!」


 顔だけではない。

 レクシアの全身が、薄赤い光に包まれる。観客たちからどよめきの声が上がる。


「赤いスキルオーロラ!」

「〈岩斬剣〉だ!」


 レクシアは木剣を大きく振りかぶる。大剣スキルの必殺技〈岩斬剣〉の構えだ。

 熟達したスキルを使う者には、そのスキルのカテゴリに応じた色の光が灯る。赤は武技士ファイターの色。武器を振るい、立ちふさがる敵を粉砕していく職業ジョブの色だ。


「〈岩斬剣〉をマトモにくらうと、訓練用の木剣でも大怪我だろうね」


 ライラの予測は正しい。

 レクシアの元々太い腕が、溜め込まれた力でもう一回り膨れている。モルクの筋力では、剣で受けてもその剣ごと頭をかち割られるだろう。

 そう理解していながら、モルクは薄笑いを作って大剣を左下段に構える。


「オオオォォ!!」


 レクシアの雄叫び。赤い光が彼女の木剣にまとわりつき、炎めいてゆらぐ。


「くらえッ! 〈岩斬剣〉!!」


 必殺の気合いを込めて振り下ろされる剣を、モルクは己の木剣で受けた。


「バカッ! モルクよけろー!」

「おいおい、死ぬぞアイツ」


 意外な展開だったか、観客たちがどよめく。

 全力を込める分だけ威力は高いがスキも大きいのが〈岩斬剣〉。対する側なら、避けてから攻撃するのがセオリーだ。


 それをあえて、真正面から受けた。

 剣と剣が打ち合わされ、大きくきしむ。

 受けはしたが、受け止められた訳じゃない。角鬼族ウルクのレクシアはモルクより頭一つ大きいし、力も強い。


「レクシア! そのままぶった斬れー!!」


 エミールの声援に応えるように、上から力をかけていくレクシア。

 噛み合ったままの2本の剣が、だんだんモルクに近づいていく。そのままでは、押し込まれる。


 


「でも、モルクは無色むしょくじゃないよ」


 ライラの実況。

 その証拠に、モルクの胸についたジョブバッジが緑の光を放った!



★。*†*。☆。*†*。★。*†*。☆。*†*。★。*†*。☆。*†*。★。*†*。☆


「こんにちは、クロエです!」

「必殺技が出てきましたね! 〈岩斬剣〉は溜める時間が必要な代わりに威力は圧倒的! レクシアはこれが好きなんですよねー。ところで、スキルオーロラは実は私も第1話で出してるんですよ。気づいてました?」

「さてさて、真正面から〈岩斬剣〉と打ち合いに行っちゃったモルクさん!

 無色?バッジの真の力が解放されます!

 序章第6話『多色なるもの』 読んでくださいね!」

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