第4話 今までで1番緊張する夜

​~♪ ~🎶 ジュ~ッ ジュ~ッ トントン……


​いつもなら聞こえる筈のない調理器具を使う音が、キッチンから響いてくる。女の子の綺麗な鼻歌のおまけ付きで。


​……今の状況を簡単に説明すると、いつもなら一人でネトフリを観ながらスーパーで買った唐揚げ(半額)とビールで夕飯を済ませている俺の部屋のキッチンに、何故か超絶綺麗な女性(水無月朋美さん、24歳独身、彼氏募集中)が、滅茶苦茶ご機嫌な様子で料理(朋美さんが言うには青椒肉絲らしい)を作っている。


以上だ。


​どうしてこうなった?


本来の俺の予定なら、スーパーで朋美さんからの御礼の品である唐揚げ(半額)を貰って、ゆっくりと缶ビールを飲みながらネトフリを観ている筈なのに!?


​……と、とりあえず今から数時間前の事をおさらいしてみよう。


​電車を降りた俺と朋美さんは、駅から最寄りのスーパーに買い物に行くことに。朋美さんは上機嫌なご様子。


​「あ、あの~。今さらなんですが、本当にあの時の御礼は唐揚げだけで良いんですよ? 無理に朋美さんが料理を作ってくれなくても……」


​ただ朋美さんを助けただけの御礼に、超絶美人な朋美さんの手料理は俺には勿体ない。


急に申し訳なく思った俺はそう言ってみたのだが、俺の言葉を聞いた朋美さんは急に悲しそうな顔になり


​「私がお料理を作るのは御迷惑ですか?」


​としゅんとしながら俺にそう聞いてきた。


​「め、迷惑だなんてとんでもない! むしろ嬉しいですよ! ただ俺は、朋美さんが大変かな?と思っただけで」


​「私がしたくて、私から申し出たんですからそんなことは気にしないで良いんですよ。だから、御迷惑じゃなかったら、どうかお料理を作らせて下さい。お願いします!」


​朋美さんが頭を深々と俺に向かって下げてきた。


ち、ちょっ!? 朋美さん!? 何故頭を下げるの!? 止めて!? ここ、スーパーの前だよ!?

​慌てて俺は朋美さんに


​「わ、分かりました!! 朋美さんお願いしますから頭を上げて下さい!!」


​「……じゃあ私、雄二さんの為にお料理作っても良いんですね?」


​朋美さんはおずおずと上目遣いで俺にそう聞いてきた。


​グハッ!? その上目遣いは狡い! もし断るつもりだったとしても、断れないじゃないか!


​「こちらこそ宜しくお願いします!」


「はい!お任せ下さい!」


​朋美さんは笑顔になりそう俺に言ってきた。


​俺は朋美さんと一緒にスーパーへと駆け足で入店した。朋美さんが頭を深々と俺に向かって下げていた時に、周りに居た買い物途中の奥様方の冷たい視線は気付かなかったことにしよう……。ヤバいな。


俺、このスーパーに来辛くなっちゃったような気がするよ。


​スーパー内で朋美さんは買い物籠を乗せたカートを押しながら、自分の顎に指を添えて


​「え~っと、青椒肉絲を作るんだったら~、先ずは筍と~、豚肉と~、後ピーマンかなぁ♪ あっ、赤ピーマンを入れたら彩り良くなるよね~♪」


と楽しそうに呟きながら青椒肉絲に必要な食材をポイポイと籠の中に入れていく。


俺はというと、挙動不審さ満載の姿で朋美さんの後に付いていくだけになっている。端から見たら滅茶苦茶怪しい男に見えるだろう。ストーカーかな?


​「雄二さん、調味料とかはお家にありますか?」


​ニコニコ笑顔で俺にそう聞いてくる朋美さんに


​「……あるとは思うけど、普段使わないから賞味期限切れてるかも」


​「えっ!? 雄二さん、普段調味料使わないって...いつも食事はどうされているんですか?」


「ここのスーパーの半額になったお弁当と唐揚げとビールですね。朝は基本的に食べませんから」


​俺の言葉を聞いた朋美さんは本当にびっくりした顔をして


​「そんな食生活をしていたら、いずれ病気になって倒れちゃいますよぅ! お弁当じゃ無くてちゃんとした物を食べなくちゃ駄目です! メッ!! ですよ!!」


​と前屈みになりながら腰に手を当てて怒ってきた。


​「す、すみません。以後気を付けます」


朋美さんにはそう言ったけど、男の一人暮らしだから多分ちゃんとした食生活は送れないだろうな。


それと朋美さん、前屈みは止めなさい。朋美さんのご立派な2つのスイカが強調されるから。目のやり場に困る。


​「むぅ。雄二さんは気を付けるって言ってるけど、何か心配だなぁ」


​「し、心配しなくても大丈夫だから」


​「本当かなぁ?」


​「そ、そんなことより、早く買い物済ませて帰りましょう! そうしましょう!」


​朋美さんに可愛く怒られる姿を、スーパー内の奥様方にジロジロ見られるのに耐えれなくなった俺は、朋美さんのお説教を無理矢理止め、朋美さんが押していたカートを持ってレジへと歩きだした。


「何か誤魔化されたような気がするのですが? あっ、雄二さん待って下さいよ! まだ調味料を買ってませんから!」


​慌てて朋美さんは俺の後を追っかけてきた。







ここまで読んで頂きありがとうございます。


もし宜しければ コメント レビュー ♡ ☆評価を宜しくお願い致します。


今後とも拙作を宜しくお願い致します。


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