『俺はただの「良い人」なのに、命を救った超絶美人が「運命の人」だと勘違いしている件。』

猫之丞

第1話 出会い

現在の時刻は18時を少し回ったところ。


俺、神谷雄二は、仕事を終えてアパートへの帰路についていた。


​「今日も1日疲れたなぁ……。それにしても、あのハゲ! 自分のミスを全部俺に押し付けやがって! あのハゲが課長だなんて、世の中間違ってるよな、ホント」


​会社の最寄りの駅から伸びる道を、ついつい口から零れる愚痴と共に歩く。


​誰の得になるか分からないけど、一応ここで自己紹介でもしておこうか。


​俺の名前は神谷雄二かみやゆうじ。今年25歳になる、どこにでもいるしがないサラリーマンだ。


顔立ち、身長、体型、年収。全てが並みで、特に目立つ特徴の無い野郎。まあ、一つだけ特徴を挙げるとすれば、周りから「良い人」って呼ばれていることくらいかな。俺のどこを見てそう言ってくれるのか、自分ではさっぱり分からないんだけど。


​ちなみに、年齢=彼女居ない歴、である。昔から、「これは良い感じに付き合えそう!」と思う女性がいたとしても、必ずと言っていいほど、「あなたのことは良い人だとは思うけど、恋愛したいかと言われたらそうじゃない」という鉄板の台詞で振られてしまう。


​だから、最近はもう恋愛を諦めている。


どうせ俺は、一人で寂しく老後を迎え、人生を終えるんだろう。ごめんよ、父さん、母さん。孫の顔は見せてあげられそうにない。――って、言うか、父さんと母さんは3年前に交通事故で他界しているから、孫の顔もへったくれもないんだけどな。


​まあ、俺のつまらない自己紹介はこれくらいにして。早くアパートに帰って夕飯の準備をしないと。アパートでキンキンに冷えたビールと唐揚げが、汗だくの俺を待っているんだ。


最寄りの駅に到着し、プラットホームで電車が来るのを待つ。帰宅ラッシュの時間帯だからか、見る間に人が増えていく。やっぱりこの時間は混み出すなぁ。また満員電車に揺られて帰るのか。勘弁してほしい。


​そんなことを考えていると


​「ドンッ」


​と、俺の隣に立っていた女性が、人混みに押されてフラつき、プラットホームから線路に落ちそうになった。


​「えっ!?」


​線路との境でバランスを崩した女性が、小さく悲鳴を上げる。


​「おっと、危ない!」


​俺は咄嗟に女性の腕を掴み、自分の胸元へ強く引き寄せた。


​「大丈夫ですか? 良かった、落ちなくて……本当に危なかったですよ」


​「あ、あ、ありがとうございますっ! 助けていただきました!」


​心臓がバクバクしているのが分かる。女性もかなり動揺しているようだ。


「いえいえ。あなたを助けられて良かったです。この時間帯は特に混み合いますから、足元には十分気をつけてくださいね」


​そう言って、俺は安堵の気持ちを込めて女性に微笑みかけた。


​直後、けたたましい音を立てて電車がホームに滑り込んできた。


電車の扉が開くと同時に、待ち構えていた人混みが一斉に車内へ雪崩れ込む。俺もその勢いに抗うことはできず、飲み込まれるように電車の中に押し込まれていった。


​「あ、あのっ!」


女性が何か声を上げたのが聞こえた。だが、俺はもう振り返ることも、彼女の顔を見ることもできなかった。人混みの波に押され、女性の姿は瞬く間に見えなくなる。


​何か言いたそうだった気もするけど……まあいいか。もうあの女性と会うことはないだろう。


たまたま駅で出会い、偶然危ないところを助けた。それだけの出来事だ。


​そういえば、あの女性の顔、見てないな。まあいいか。俺にとっては、どうせビールと唐揚げのほうが大事だ。


​電車に揺られながらふとそんなことを思った。だか、今晩はアパートで唐揚げを揚げようか、それとも総菜屋で買ったもので済ませようか。そのことを考えた途端、俺の頭の中から女性のことは綺麗サッパリ消えていた。




​~??? side~


​今日は本当にツイてない日だ。


​いつもなら愛車の赤い軽自動車で優雅に帰宅するのに、車の調子が悪くてエンジンがかかりません。

結局、修理に出す羽目になってしまいました。さて、帰りどうしよう……。タクシーを使うべきかしら?


​そう考えて、私はバッグからスマホを取り出して電話をかけようとしました。


​……待てよ。今日は普段使わない電車に乗って帰ってみるのも悪くないかも。


もしかしたら、何か面白いこと、良いこと、運命的な出会いでもあるかも知れないし! 私の直感がそう囁いているわ。


そう思い立ち、私はスマホをバッグの中にしまい、最寄りの駅へ向かうことにしたんです。


​これが間違いでした。


​駅のプラットホームは、ものすごい人で溢れていて、立っているのがやっとの状態。


​「わわわっ! 駅のプラットホームっていつもこんな感じなの!? ミスっちゃったなぁ。こんなことなら素直にタクシーを使えば良かった。でも、もう動けない状態だし……。仕方ない。このまま帰ろう。もう電車なんて二度と使わないから!」


​そう愚痴っていると、次の瞬間


​「ドンッ!」


私は後ろから人混みに強く押され、プラットホームの端から線路に落ちそうになってしまいました。


​「えっ!?」


​ヤバい、ヤバい!! このまま落ちたら、直後に来る電車に轢かれてしまう! だ、誰か助けて……!


​そう思った瞬間、


​「おっと、危ない!」


​その声と共に、男性が私の腕を掴み、ホームへ強く引き寄せてくれました。


​し、死ぬかと思いました。私の心臓は、恐怖と安堵で恐ろしいほど早くなっています。


​「大丈夫ですか? 良かった、落ちなくて」


​私を助けてくれた男性が、優しい笑顔で声をかけてきてくれました。


​「あ、ありがとうございます! 助けていただきました、本当に!」


​私は、彼にお礼を言いながら、思わずその顔を見上げました。


​……わぁ。物凄くイケメンさんだ! 爽やかで、私の好みドストライクだわ……////// こんな素敵な男性に助けられたなんて……! 私の運命の王子様だわ!


​「いえいえ。あなたを助けられて良かったです。この時間帯は混み合いますから、気をつけてくださいね」


彼は優しい声で、微笑みながら私の身を心配してくれます。


すると、それから直ぐに電車がホームに到着し、扉が開きました。待ち構えていた人混みが電車の中に雪崩れ込み、私を助けてくれた男性は、その波に飲み込まれるように電車の中に押し込まれていってしまいました。


​ま、待って!! 私、まだあなたにちゃんとお礼が言えてない! あなたのお名前も知らないのに!


​「あ、あのっ!!」


​と慌てて声をあげたけど、私の声はあの素敵な男性には届かず、私も人混みに飲まれてしまいました。


私は電車に揺られながら、ぼんやりと


​「もう、あの人に会えないのかなぁ……」


​……嫌だ!! もうあの人に会えないなんて、絶対に嫌だ! あの人は、私の命の恩人であり、私の運命の人に違いないんだ! 恋愛経験のない私だけど、直感がそう告げている!


​彼は多分だけど、いつもこの電車を利用している。


明日もこの時間にここに来れば、彼に会えるはず!


私、 水無月朋美みなづきともみの直感がそう告げています。


​明日もこの電車を利用して帰ろう。そして彼に会ったら必ずお礼を言うんだ! そして彼のお名前を聞いて……あわよくば連絡先も……//////


​車が故障して、タクシーで帰らずに電車を利用したこと。本当に良かったと、心から思った私でした。


あの時の私、グッジョブ!!





少し前に書いていた小説を手直ししました。


また皆様の目に留まる事を期待しています。


もし良ければ コメント レビュー ♡ ☆評価を宜しくお願い致します。


これからも拙作を宜しくお願い致します。

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