魔法少女更生プログラム

UMA20

プロローグ 魔法少女⬛️⬛️プログラム


 走る。

 暗闇が支配する、森の中を美咲みさきは一心不乱に走っている。


 長い黒髪、端正な顔立ちにスラリと伸びた手足。 その容姿は男女問わず魅力的だが、 今は珍妙な格好だ。


 濃紺をベースに、銀の装甲で守られた和風の戦闘服。動きやすさを重視して短く裁断されている。だが、 その最高の衣装は 今や血と泥に塗れ、ボロボロ・・・・だった。


 美咲みさきは走る。

 ひたすらに森の中を。

 片腕はもう動かない。

 血を流しながら、足を引きずって走っていく。


 そして、

 ついに時が来た。


 暗闇に潜む木の根に美咲みさきは躓き、顔面から地面にキスをする。

 その衝撃は皮膚を破き、端正な顔に爪痕を残した。

 とめどなく溢れる涙は、痛み──ではなく。


 美咲みさきは這う。

 少しでも遠くに逃げなければ、と。

 這って這って這って。

 そして。


 音が聞こえた。


 カラカラカラン。

 不規則な金属音。

 続く小さな足音。

 走ってすらいない足音だ。


 サクサクと、雑草を踏み締める音がしたその瞬間、美咲みさきの顔色は真っ青になった。


 無作為に這いずる手を伸ばす。

 雑草を、木の根を、土を掴んで、綺麗な手を汚して、爪が割れるほどの握力で引き寄せて、しかし無駄だ。


「みーさきちゃーん?」


 追いつかれた。


「やだー、美咲みさきちゃん。可愛い顔が台無しだよ? 美咲みさきちゃんがあんまり可愛さにこだわらないのは知ってたけど、私はもったいないって思っちゃうなぁ」


 その声は妙に明るい。

 これから一つの命を摘み取ろうとする割には、異様なほどに。


「……ぁ……ぁっ……」


「だって、可愛いってことは、それだけで世界に祝福されてるってことなんだから。誰よりも強いカードを持ってるってことなんだから。女の子って、さ♪」


 カラ、カラ、カラン。

 金属音。

 その正体は、彼女──あまねが引き摺る鉄製のバットだ。

 強く殴りつけ、ひしゃげ、血がこびりついている。


 既に後頭部に一撃をくらっていた。

 二度目はないだろう。


 だが、恐怖で足がすくんでしまった。

 伸ばす腕も力が入らない。


「それなのにどうして罪を犯しちゃったんだろうね。きっと美咲みさきちゃんなら、有名大学に入って、綺麗なOLさんとして活躍して、一流企業のイケメンと結婚する未来もあったはずなんだ。──それを棒に振ってまで、美咲みさきちゃんは罪を犯した。なんでだろうね」


 美咲みさきは、喉の奥から、 震えだけが漏れる声で、


「ごめんな、ごめんなさい……」


「理由は単純だよね。魔法という超パワーを持っちゃったから。力を得てしまったから、罪を犯したんだ。貴女は、もう元の生活には戻れない」


「やめて、来ないで……お願い」


「謝るなっっ!!!!」


 涙を流し、嘆願する美咲みさきに、一言。

 あまねは目を開き、激昂した。


「お前は罪を犯した。罪人なんだ。罪人は、謝ったところで誰も許さないし、罪は軽くならない。だから、もうそんな意味ないことはやめてよね」


「助け……助けて」


「更生プログラムだなんて、笑っちゃうよ。ま、おかげで私はここに入れたんだけどさ。私の目的はただ一つ。罪を犯した魔法少女を、一人残らず殺すこと──」


 美咲みさきの言葉はもうあまねには届かない。

 美咲みさきに馬乗りになったあまねはバットを頭上で高く振り上げた。


「そう、これは更生プログラムなんかじゃない。これは、私の───────」


 そしてバットは振り下ろされた。

 それが本当の始まりだった。

 罪を犯した魔法少女を集めた、魔法少女更生プログラムの──いや。


 紅愛くれああまねの魔法少女⬛️⬛️プログラムの。


 そう。

 この物語は今から三日前に遡る。


---


読者の皆様。

数多ある作品の中から、この物語を選び、お読みくださり、誠にありがとうございます。

読者の皆様の「いいね」や「評価」、そして「熱い感想」こそ、作者のモチベーションに繋がります。

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今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

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