第2話 副隊長・ジンの特別訓練 其の弍
「さぁ、俺を殺す気でかかってこい!!」
ジンの挑発的な言葉がゴングとなり、訓練が始まった。
先陣を切ったのはノエルとライナ、そしてエイリス。
左からノエル、右からライナと、二人は左右から攻撃を仕掛ける。互いが拳をジンへ振り下ろす…だが、拳が振り下ろされる一瞬の隙にジンは上へと飛び、二人の攻撃をかわす。
かわされた二人は目を見開き、体勢を直そうとしたが時すでに遅し、そのまま二人はお互いの攻撃によって床に叩き付けれる。
一部始終を横目で見ていたエイリスは、ビトリアとアインに声を掛けた。
「ビトリア! アイン! 能力使っても良いから援護をお願い! ジンを何としてでも仕留める!」
「分かりましたッ!」
「分かった……ッ!」
ビトリアとアインの言葉を聞いたエイリスは、サーベルを握りしめ、地面に着地したジンへと走り出す。
ジンに近づいた瞬間、サーベルを彼に振り下ろすが、意図も簡単に避けられてしまう。
それを知っていたエイリスは、ジンが避ける寸前に、あらかじめ左手で作っていた氷の短剣を使い、ジンの脇腹へと刺しに行く。
だが、エイリスの手を違和感が襲う。脇腹へと刃先を向けたのに、感触が一切ない。
「エイリス、お前は動体視力が良かったな。だが……こんな見え透いたやり方では……俺を倒せないぞ?」
ニヤリと笑うジン。氷の短剣を握りしめていたエイリスの左手は、ジンが握っていた。
重りと言うハンデを背負っているのに、握っている力が強く振りほどけない。
(嘘でしょッ……!?)
焦りと驚きがエイリスを襲う。それを尻目に、ジンはエイリスの左手を握ったまま、彼を一回転させる。
目を見開きながら一回転されたエイリスは、ジンによって床に叩き付けられた。
エイリスを床に落としたジンに向けて、火の玉が二発当たる。
火の玉を作り出したのはアイン。彼の両手には、ざらざらとした素材でできた黒い手袋がはめられていた。彼は、摩擦で火を起こすことが出来る。
「エイリスだけ、見てたら……ダメだよ、ジン!」
「あぁそうだな、アイン。よそ見はダメだよな?」
火の玉が当たった直後の爆炎の中から、アインの背後にジンが立っている。
「え、いつの間に……」
絶望の色を隠せないアインだったが、ビトリアが加勢に入る。
「アインさん!」
ツタで出来た矢がジンを襲う。だが、それを意図も簡単に交わされてしまう。
ビトリアは自身の左手に傷を作り、生えてきたツタで弓と矢を作って、ジンへと矢を放ったのだ。
「ビトリア……ありが……」
「アインさん! よそ見はダメ出すよ!!」
ビトリアの大声。ジンが拳を振り下ろすと察知したアインはジンの方を見ずに、横に飛んで避けた。
アインに避けられたジンは、体勢を建て直しながら笑い始めた。
「ははっ!さすが、アインだな」
「ジン、忘れたの?僕……、相手の感情が感じ取れるの……。訓練でも、ジンの感情、簡単に感じ取れるの」
「そうだったな……。おっと、雑談はダメなようだ」
ジンに向けて、鞭のようにうねりながらツタが襲いかかって来ていた。彼はツタを何食わぬ顔で掴む。
ツタを掴まれたビトリアは、目を見開いてしまう。
「え、なんで……」
「ビトリア、こんな見え見えな攻撃は、俺には効かないぞ?」
不適な笑みを浮かべるジン。アインは隙を見て、彼に殴り掛かったが、意図も容易くジンに受け止められてしまう。
左にはビトリアのツタ。右にはアインの拳。
「だから……アイン。見え透いたやり方は俺には通用しないって、あれ程……」
二人の行動に呆れてため息を付いたジンは、右手を一瞬だけ離す。自由を獲得したアインは、攻撃を仕掛けようとしたが、再度腕を掴まれる。
今度は手首だったが、力が強くて振りほどけない。焦っているアインを無視して、ジンは片手でアインを一回転させ、床に叩きつけた。
次に、ツタを掴んでいた左手を軽く、上に振る。踏ん張って立っていたビトリアが、簡単に宙を舞う。
そして、ジンは左手を下に軽く降り下ろす。ビトリアは簡単に、床に叩き付けられた。
「ふぅ…、やりごたえがなかったな……って言っている場合じゃないか」
そう呟いたジンの背後から、エイリスとライナとノエルが襲いかかって来ていた。
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