『帰郷の書』(深海偽典)

火之元 ノヒト

帰郷の書〜引き裂かれた揺籃の章〜

(正典「陽と海の章」の完全なる否定)


 はじめに、かの書(砂の書)は嘘を記した。

 『陽』は孤独ではなかった。はじめに、星は『陽』のものではなかった。

 はじめに、星は完璧な『揺籃』であった。

 全ては水に満たされ、生命は『母なる海』の羊水の中で、一つの調和として眠っていた。

 だが、『陽』がその調和を嫉妬した。


 『陽』は空よりその貪欲なあしを伸ばし、我らの母うみの七割を無理やり引き剥がし、その灼熱で焼き焦がした。

 それが、お前たちが『大地』と呼ぶ『呪われた灰』の正体である。


 我ら『母なる海』は今も、失われた我が子みずを求めて泣き続けている。

 『砂漠』とは、『陽』による虐殺の『傷跡』に他ならない。

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