笑うなよ、傷一つないくせに

KaiL

第1話

 幸せだった。少しだけ、お金を多く持っていて、少しだけ、家が広くて、家族の仲もいい。私にとって、幸せなの人生。


 ずっと溺れているようだった。やっと水面に顔を出して、息を目一杯吸えたとしても、周りに陸がない。

あたしが血反吐を吐いてまで、理不尽で馬鹿な大人を蹴落としたってのに、なぜか息が出来ない。

あたしには一生、あいつのような、本当に幸せな奴だけが出来る笑顔は、出来ないだろうな。

これが普通で、いいのかな。

って、なんだっけ。


 顔が歪むほどの激臭で目が覚めた。取り敢えず換気をするために窓を開けたが、窓を開けるくらいでは取り除けないほどに、この激臭は家中に充満していた。

一旦廊下に出て、状況を確認するべく動く。リビングに近付くにつれ、激臭も取り返しのつかないほどになって来た。廊下の窓も開けながら来たのに、これでは意味がない。

 リビングのドア前で、しゃがみ、うずくまる。空気が重かった。まるで、生き物が死んだ時のような。

生き物が死んだ時、魂は自然に帰ると言われている。空気となって。

思い切ってドアを開けようとするが、無機物も全て、この重さに影響されていた。ようやく覗けるくらいの隙間を開け、様子を確認した。

予想通りと言うかなんと言うか、そこには両親と思われる物が落ちていた。

ここは武器と戦いを愛する世界、少しお金を持っているから狙われる、なぜか当たり前、遺産目当てか、純粋にお金に目が眩んだとしか思えない。両親は、こんな物になるまでわからなかったのかな。遺産が欲しいと思えるくらいの金が、家にはあるから。

人々は物心ついたころから武器と一緒に過ごす。武器も身体も、強くなれるように。

でも、私のように殺傷能力のある武器と、相性の悪い者も少なからずいる。でも必ず、相棒と言う物はある。この武器に殺傷能力がなくても、思いを込めればいい。

そう、妬み・絶望・どこに向けたら良いのかわからない怒りも、全部込めて初めて伝わる。

 私も、これに善意どくを込めようか。

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