第25話 9-2
舞だが修行に普通に参加するようになっていた。ただこの前の件でお菊は彼女が苦手になってしまったのである。
たんぽ槍の模擬戦も彼女から相手を何度か頼まれたがお菊は全て断っていた。
「お菊!舞の相手してあげたらええやん。対抗できるのはあんたくらいやで?」
「このままやと図に乗るで!悔しいわ!」
お凛とおいちが悔しそうに言った。舞だが腕前は本物でおいちとお凛だけでなくここの面子ではなかなか勝てなかったのである。
「別に良いじゃん。あの子は松永からのお預かり(人質)だよ?好きにさせておけば?」
それを承知でお菊は素っ気なく返したのであるが。
「舞が小次郎に抱き付いたのを根に持ってるんやろ!」
「なにおぉ!そんな訳ないでしょうが!小次郎が不甲斐ないって怒ったの!」
お菊はおいちの返しにまたも苛立ってしまったが。
「気付いてると思うけど舞って只者じゃないって。関わらない方が良いよ」
ただお菊が冷静に言うと
「そやな。全然ウチらと違うな」
お凛も同意した。
「あたしはあたしの町を撫で斬りにした松永が嫌いなだけよ。舞は松永の兵じゃなくても何か引っかかるのよ」
お菊が暗い顔で言った。
「分かった。でも小次郎の躾はお菊の仕事やで。女子相手にあれはあかんわ」
「なにさ?躾って!」
おいちの言い方にお菊は怪訝な顔をすると
「一緒に ねんね するとかや!なはは!」
おいちが手枕しながらにやりとお菊にすり寄ると
「はぁ?あんたまっ昼間から何言ってんの?破廉恥!」
お菊は怒ってしまったのであるが。
「でもあんたも14歳、小次郎も16歳やろ?別におかしくないで。雑賀の郷だとええ相手がいたら結婚するのもおるで」
「あたしは清く正しく美しくいたいのよ!」
「ほんま うぶ な振りが好きやなぁ。お菊は」
「なにおぉ!」
おいちがにやにやしながら言うとお菊は真に受けて返したが。
「でも舞の女の武器に小次郎まんまとやられたやんけ。ま、実は小次郎喜んでたりな!」
「このおぉ!」
お凛も悪乗りするとお菊は再度怒っていたが。
「まぁ ねんね は置いておいて確かに小次郎は女子の免疫無いわ。ほんまモンのくノ一相手だと一瞬で倒されるで」
お凛が冷静になって言うと
「そうだけどさ!(でもあの娘 くノ一か 。あり得るかもね)」
お菊も舞がくノ一かと思ったのである。
舞の相手だが割と腕があるこずえや一郎、おいち、お凛が多かったが勝率は舞が圧倒していた。
「小次郎!たまには勝負してよ!」
舞はつまんなさそうに小次郎に頼んだが
「悪いけど勘弁してくれよ。お菊にケチを付けられたくないんだ」
小次郎は断ったが
「小次郎!たまには舞の相手してやれよ。舞は良い腕してるから修行にはなるぜ」
一郎が横から入ると渋々だが
「分かったよ」
小次郎も受けたのである。
「ありがとね!遠慮なくどうぞ!」
そう言うと舞はたんぽ槍を構えたのである。
「じゃあ本当に遠慮無く行かせてもらうぜ」
小次郎もたんぽ槍を構えたのである。
「始め!」
清澄の掛け声で始まったのである。
「お!お菊!小次郎が舞と修行やで!舞の奴、またあの手かいな?」
「あんたねぇ!」
お菊はおいちに文句を言った後、遠目で様子を見ていた。
小次郎だが男子の間では一郎と並んで腕は良い方だった。今回も舞相手にうまく対応していた。前回抱き付かれたのでそれを考慮して割と間を取っていた。
「なかなか近寄らせてくれないわね」
舞が言うと
「この前と同じ手は食わないぜ!」
小次郎も返した。
それでも舞は巧みにたんぽ槍を操ってはじわじわと小次郎との間を詰め始めたのである。
「あちゃあ!前と同じかな?小次郎押されてるわ。お菊!今度ちゃんと躾しないとあかんで」
おいちが言うと
「余計!」
お菊は口を尖らせたのである。
「押されてるわね!そろそろ決めるわ!」
舞だが間を一気に詰めて小次郎の懐に入ろうとしたが
「同じ手は食らわねぇよ!」
小次郎はそう叫ぶと舞が懐に入る寸前に左手で舞の首筋に思いっきり手刀を浴びせたのである。
「う!」
予想外にまともに食らった舞だが気を失いかけ、ふらついた後そのままばたりと倒れたのである。
「わ!マジかいな!」
「え!」
おいちとお菊も仰天である。
「そういう男を舐めた真似はもうやめろって!」
小次郎はいらっとしながら舞に返したが。
「小次郎!やり過ぎですよ!」
「舞に謝りなさい」
清澄と悠然が慌てて小次郎を咎めたが
「ふん!人を小バカにするからだぜ。遠慮するなって言うから遠慮しなかっただけだぜ」
小次郎は悪びれず返した。
「大丈夫?」
「水でも飲むかいな」
「手ぬぐい、水で浸したで」
舞に駆け寄り起こしたのはお菊とおいち、お凛であった。
「う~ん、参った」
舞は立ち上がれずまだくらくらしていた。
「小次郎?女子(おなご)相手に大人気なくない?」
お菊が小次郎に文句を言うと
「お前な!負けても勝っても文句だけかよ!」
「なにおぉ!」
「今日は調子が良いから久々にお菊と修行してやるか」
「修行してやるですって?」
小次郎の言い方にお菊も苛立ってしまった。
「こら!落ち着け!」
「喧嘩はアカン!」
おいちとお凛が両者の間に入ったのであるが。
「受けて立つよ!」
「今日は遠慮しないぜ!お前も遠慮するなよ!」
お菊もよく分らなかったが今日の小次郎は明らかに苛立っていた。
「何さ!」
お菊は少し口を尖らせてたんぽ槍を構えたのである。
「はい!始め!小次郎!お菊!怒らない」
悠然の合図で始まると
「たああ!」
お菊は喝を自分に入れるといきなり小次郎に水平斬りを何発か仕掛けたのである。
「と!」
ただこれを小次郎はたんぽ槍で防ぐと
「お返しだ!」
小次郎得意の素早い連続突きをお菊に見舞ったのである。ただ俊敏なお菊もこれをたんぽ槍で抑えかわしながら前に進み小次郎との間を一気に詰めたのである。
そして
「躾てやる!」
お菊は叫ぶとたんぽ槍を放り投げ小次郎に抱き付いて押し倒そうとしたが
「それが気に入らないんだよ!」
抱き付こうとした寸前のお菊の右手首を空いてる手で小次郎は掴むと思いっきり逆に捻ったのである。
「痛い!」
お菊だが悲鳴を上げると手首を庇ってそのまま体勢を崩したのである。
しかし
「やったな!このお!」
お菊は倒れそうになりながら小次郎に体当りしようとしたが小次郎はまたもや手刀をお菊の首筋に食らわせたのである。
「あ!」
お菊だが意識が飛ぶとばたりと倒れたのである。
「こら!小次郎、やり過ぎですよ!」
悠然が注意したが
「でも俺の勝ちだろ?」
「う!小次郎の勝ちですがね!」
「ふん!」
小次郎だがいらいらした感じで返した。
「わ!お菊、大丈夫かいな!」
「お菊!しっかり!」
お凛と舞が慌ててお菊に駆け寄るとお菊は目を覚ましたのである。
「こら!小次郎!あんたの可愛いお菊に何すんねん!手加減せなあかんやろ!」
おいちが怒ると
「遠慮するなって言っただろ?だから本気でやったんだよ」
小次郎は悪びれずに返したのである。
「男と女は違いがあるんやで!男は少しくらい女に優しくせなあかんやろ!」
おいちが再度怒ると
「俺はお前らがすぐに女の武器を使うのが気に入らないんだよ!」
「あんたな!これは女の愛情表現やで!女にこんな言い草(セリフ)言わせたらあかんで!」
「う!それでも俺はそれが気に入らないんだよ!」
小次郎は下がらなかったのである。
お菊だが目を覚ますと立ち上がりつかつかと小次郎の元に行くと軽くビンタしたのである。
「痛っ!急に何する!」
小次郎が怒ると
「鈍感!」
お菊も怒ったのである。
「悪かったな!フン!」
「ふんだ!」
小次郎とお菊は怒りながらお互いに顔をそむけたのである。
「あちゃあ。また小次郎とお菊のケンカや」
「なんでいつも熱くなっちゃうのかな」
こずえとたまが呆れたが
「私ここに来て良かった。あの人たちやここのみんなとお友達になろ!」
舞はにこりと笑いながら言ったのである。
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