第12話 5-2

 この週の後半から女子も男子も待望の共同修行が始まったのである。

 男子の面子は下記の通りであった。


 男子の中では三河珠浄院から来た太郎兵衛が一番顔を利かせていた。身長も180センチと大柄だが横幅も態度も大柄で16歳なのに悪ガキ大将そのままで心眼らも手を焼いていた。

 丹後天橋立願如寺の平助も16歳だが彼は逆に真面目な男子で明らかに太郎兵衛を避けていた。 

 和泉の勝円寺から来た16歳の倉蔵は見た目も背丈も何もかも普通の男子だったが太郎兵衛と組んで威張る嫌な感じの男子である。

 河内慶浄寺から来た15歳の弥吉は無口で暗い子で太郎兵衛にいつもいじられていた。それを正義感のある越前恩照寺の16歳の庄助が庇い他の面子が助太刀に入るような関係で男子同士もうまくいっていないようだった。

 伊豆光西寺から来た15歳の清兵衛だが駿河の出のお静と勝手に良い仲になっていた。讃岐教光寺から来た15歳の新兵衛も阿波から来たみずなと四国同士で打ち解けていた。

 尾張西教寺から来た15歳の一郎と山城法西寺から来た15歳の小次郎だが2人とも無口だが薙刀の扱いに慣れており心眼らから一目置かれていた。


 ただ女子からはこの男子の面子は受けなかったのである。

 太郎兵衛と倉蔵の弥吉へのいじりは修行の和を乱し庄助に一郎、小次郎が参戦しよく太郎兵衛や倉蔵と揉めていた。心眼らが太郎兵衛と倉蔵を何度も注意しても収まらずまた修行で女子と組み合いをやると太郎兵衛や倉蔵は女子の胸や尻を触ると不評だったのである。


「太郎兵衛と倉蔵は最悪。あんなのとつがいに絶対なりたくない!この前も組み合いで胸とお尻触ってきた!」

 ある日の修行の休憩の時だがひなたが膨れていた。

「ウチも!すぐ触るねん!やらしいわ!あいつら!」

 まえこも膨れてた。

「心眼様が注意しても聞かないからなぁ。やれやれ」

 松丸もぼやいていた。

「心眼様が懲らしめたれば良いのにさ!」

 京香が言うと

「それが太郎兵衛のお寺が本願寺の大事なお寺なんで本願寺も言い難いって」

 こずえが呆れ気味に言った。

「ろくな僧にならないよ。それじゃあ」

 平助も呆れてたが

「あなたがきつく言うたらええやん!同じ歳やん!」

 こずえが平助に文句言うと

「言ってるよ!でもあいつら聞かないんだよ!」

 平助はこずえと揉め始めた。

「やっぱ奈阿に締めてもらおうかいな?」

 京香が言うと

「負けたらカッコ悪いから奈阿とは組まないってさ」

 平助が返すと

「性格までいやらしいんかいな!」

 京香が呆れると苦笑いが起きたのである。

 

「おい!お菊!組み合い頼むぜ」

 お菊だがその日、太郎兵衛に声を掛けられたのである。

「嫌だよ。あたしあなたが嫌いだもん」

 お菊は直球で返したのである。

「俺はお前みたいな平気で人を殺せる人間と試してみたいだけさ」

 太郎兵衛がにやりと笑いながら言うとさすがにお菊もカチンと来たのである。

「こら!あんた言い方、気を付けなよ。あたしが相手するよ」

 ただ奈阿がすぐにお菊の助太刀に入ってくれたのである。

 太郎兵衛は苦い顔をしたが

「奈阿。あたしが先に相手するね」

 お菊だが奈阿に太郎兵衛の相手をすると言ったのである。

「良いんかい?アイツはただの助平(スケベ)だよ」

 奈阿の心配をよそにお菊はたんぽ槍を構えたのである。

「本気で行くよ!ケガしても文句無しだよ!」

 お菊がきつい口調で太郎兵衛に言うと

「へへへ。さすがいい度胸してるぜ。楽しませてもうらうぜ」

「たあ!」

 お菊が気合を入れてたんぽ槍で素早い突きを始めると動きの鈍い太郎兵衛はそれをまともに受けたが倒れる事は無かった。そしていつもの通りだが自分のたんぽ槍を捨てるとお菊のたんぽ槍を握って動きを止め、お菊を引き寄せお目当ての組み合いに持ち込もうとしたのである。

 お菊だが太郎兵衛に掴まれそうになったその時である。お菊もたんぽ槍を放棄すると胴丸内に隠し持ってた模擬の脇差(木刀)を抜くと太郎兵衛の首に渾身の力で振り下ろしたのである。

「!」

 さすがの太郎兵衛もこれは避けられずまともに受けて一瞬気を失い倒れてしまったのである。

「やった!」

「さすがお菊や!」

 女子は大喜びである。

「太郎兵衛!しっかり!」

 倉蔵が慌てて太郎兵衛に声を掛け太郎兵衛は目を覚ましたが

「お菊!汚いぞ!それを隠し持ってるなんてよ!」

 太郎兵衛は珍しく激怒したのである。

「あなたがいやらしいからよ!女子だけにじゃなく人に嫌がる事ばっかりするからさ!」

 お菊が返すと

「なめるな!」

 太郎兵衛は猛然とお菊に突っ込んで来たのである。

「!」

 さすがにお菊は逃げようと思ったが太郎兵衛の前に奈阿が立ち塞がったのである。 

 奈阿は太郎兵衛と組み合うとそのまま太郎兵衛を背負い投げしたのである。

 重い音と同時に太郎兵衛は畳の上に叩きつけられたのである。

「ぶは!」

 さすがの太郎兵衛も伸びてしまった。女子は再度大喜びである。

「すげえ!」

「やる!」

 男子一同も驚いていたが

「畜生!俺の実家(寺)のおかげで三河の一向宗は今があるのも分からずこれかよ!」

 太郎兵衛は起き上がると怒りが収まらないのか捨てセリフを吐いたが

「実家は実家。あんたはあんたさ。自分の行いを改めなよ。あたしも三河衆だよ。三河衆の顔に恥を塗るのやめておくれよ」

 奈阿は厳しい口調で太郎兵衛に注意したのである。

「太郎兵衛。やめんか。おぬしが悪いぞ」

 心眼も間に入って太郎兵衛を注意したのである。 

「畜生!畜生!」

 太郎兵衛はそう言うと怒りながら出て行ってしまったのである。倉蔵も慌てて太郎兵衛を追い掛けて出て行った。


「ふう。やれやれ」

 心眼は溜息をついた。

「奈阿。ありがとう。助かったよ」

 お菊は奈阿に礼を言ったのである。

「なんの。太郎兵衛にとっては良い薬だよ」

 奈阿は屈託なく返したが

「さすが奈阿や!あ~!でも後味悪いわ」

 京香も続いた。

「後は心眼様と弥生様に頼んますね」

 こずえが言うと

「そうだな。後は大人の問題だな」

 心眼も返した。


「くう!さすがウチが見込んだお菊や!ウチの部隊で活躍してもらお!」

 おいちだがこの様子を嬉しそうに見てた。

「あんたさっきから何ぶつくさ言っとるんかいな?」

 お凛が横から入ったが

「凛凛もおまけで入れとくかな?」

「おまけってなんやねん!あんたの部隊って何やねん!」

 おいちとお凛は勝手に揉めていた。


「さ!みんなお疲れ様!また元気に走りましょう!そしてお風呂で汗を流してくださいね」

 清澄と悠然だが今日の最後の修行に走り込みを行うと言ったのである。

「えええ」

 女子は再度悲鳴を上げたのである。

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