第20話 このラインは越えちゃ駄目
キーンコーンカーンコーン
終了のチャイムが鳴った。そう、テストが終わった。
「よっしゃ〜テスト終わったー!」
隣で歓喜の咆哮をかます学人。もちろん学人だけでなくクラスは謎のお祝いムード。
そういう俺も気持ちがかなり軽くなった。ここ最近はずっと勉強していたし、テストがあるという意識が脳の片隅にずっといたからだ。
結果がどうあれ、とりあえずテストが終わったことが嬉しいのだろう。
……別の意味で終わら無いことを祈る
「よし、春!」
「僕はよしはるじゃないです」
「そういうことじゃねぇよ!」
なんだか俺も学人もテンションが高いせいで、変になってる気がする、、、
「それよりさ、春は打ち上げ来るのか?」
「……それ、クラスのか?」
「ん?そうだけど、」
聞いてない……そっか、これがイジメってやつね
「……もしかして、聞かされてないのか?」
うんうんと頭を振る
「……」
気まずい沈黙が流れていく。
お前は悪く無いだろうに、
「じゃ、じゃあ今言ったけど来る?」
「……行けたら、な。」
別に怒ってるわけじゃ無いよ?うん、怒ってない怒ってない。でもちょっと傷ついたしなぁ、どうしよっかなぁ。
「春?今日の打ち上げって行くの?」
「……美波」
「ど、どうしちゃったの?」
「誘われてなかったんだよ、俺。」
美波にも真実を打ち明ける。
「そっか、幹事だれ?◯す」
「だめだよ?」
びっくりした。急に綺麗な声でシンプルな
殺意表明が為された。
「春のこと除け者にしたんでしょ?やらないと」
「べ、別に良いよ。ちょっと忘れてただけだろ?」
美波を止めないと、これが俺の使命だ。
てか学人手伝えよ!なに傍観かましてんだ。
「美波ちゃん、今日の打ち上げは勿論来るよね?」
馴れ馴れしい態度でこちらに来たのは海野だった。明らかに嫌そうな顔をする美波、話しかけたくねぇ。責任取れよ海野……
「どうしようか考えてたとこ!」
「そうなの?今回は俺が幹事だし絶対楽しませる自信あるって!」
海野逃げて!超逃げて!何獲物の方からのこのこ寄ってきてんだよ!
「……」
「美波ちゃん?」
空気が沈む。学人は察した様にそっぽ向いてるし、なんなら俺もそっぽ向いとこ。
「ねぇ、海野くん。春って誘った?」
「春ぅ?あー、忘れたわ。来たいなら来ていいよ?柏村、」
うーん、行きたいな。こういうイベント事は結構好きだから参加したい。でもきもい!ひたすらにきもいなこいつ!後そんな事言ってたら死ぬぞ
お前、
「う、うーん。じゃあ、参加しよっかな?」
「はぁ、いいけど邪魔すんなよ?したら次からの参加権剥奪なー。あっ!美波ちゃんはぜひ来てね!」
やっと嵐が去っていった。……一難去ってまた一難というか、あいつが残していった爆弾を俺が処理しなくちゃならん。
「……美波?」
「なに?春、」
こっわ、俺に怒ってるわけじゃ無いんだろうけど、殺意の上に貼りついた笑顔が恐怖を煽る。
あいつこれ見てなんも感じないのか。どこの鈍感系主人公なん?
とりあえず、処理しますか。この不発弾を
「み、美波?俺は気にしてないし美波が気にかける様な事じゃ無いよ。」
「それはダメだよ春。あいつ◯さなきゃ」
さっきから殺気ダダ漏れだぞ。なんてね!
「美波、今日は楽しもうよ。せっかくテストも終わったし」
「でも──」
「みーなーみ!」
「……わかった、」
拗ねた子供の様に俯きしょげた顔でそう言うが、さっきまで殺意マシマシバーサーカーだったからね?
「でもやっぱり許せないよ。」
「俺が良いんだからさ、美波テスト終わりで疲れてるんだよ。なんかして欲しい事とかある?」
必死で気を逸らす俺。……まじで海野には謝礼の一つでももって来させたい。
「……なんでも?」
「今、ここでできる事ならね?」
危ないな、油断も隙もない。
「じゃあ、抱っこして頭撫でてほしいな」
俺ここで出来ることって言ったよね?教室のど真ん中でそんなこと出来な……やったことあるな、
「ほら、はやく。」
「さ、流石にここでは出来ないかな?」
「碧ちゃんにはやってたのに?」
くっ!やっぱり覚えてんのかよ!
「せ、せめて俺の部屋で──」
「部屋でいいの?分かった!」
おわたンゴ。美波と部屋で抱っこヨシヨシ?
おいおいおい、死んだわ俺。
「何してるの?早く帰ろ?」
「……はい」
□
その後帰り道に碧の乱入があったりと色々あったが、碧には帰ってもらい現在お願い実行中だ。
ナデナデ
「んっ、」
……変な声を出すのはやめてほしい。だが今はこの切実な願いも全部キャンセルされる。
「もうちょっと強くぎゅってして?」
「これ以上だと、色々当たるんだけど、」
自分で言っててきもいけど、事実だもん。
春、犯罪者になりたくないもん!
「いいじゃん減るもんじゃないんだし、」
「それ本来こっち側のセリフなんだけどなぁ」
「はやく」
「はい」
渋々なのか進んでなのか自分でも分からず、抱き締める力を強くする。……絵面やばいよなこれ。
「んんっ、幸せぇ〜」
……正直言っていい?めっちゃ気持ち良くてこっちが幸せなんすけど。
大丈夫かなこれ?中毒性を感じる。
「あの〜、いつ終わるんすかね?これ、」
「終わらないよ?」
まさかのエンドレス。
「そ、そういうわけには、、、」
「じゃあ、せめて後十時間」
せめてで負けた感出しといて十時間?てか普通に打ち上げ無視してハグし続ける事になるぞ。
「打ち上げもあるし、そろそろね?」
「チッ!」
ヒェッ
部屋に響き渡るほどの大きな舌打ち、俺の反応が察知したのか美波を撫でる右手は加速していた。
ナデナデナデ
「あっ、んん〜気持ち良いよぉ、春」
だから変な声出さないでよ、、、
相当気持ちよかった(?)のか俺のほうにもたれ掛かり、さらに近いてか髪?頭?からめっちゃ良い匂いする。
「美波やっぱりそろそろ終わ──っ!」
ハムッ
そう言い切る前に首筋に感じた事のない感覚が襲う。今の視野じゃ視界がほとんど美波で見えないけど、多分……甘噛み?されてる。
え?何してんの?
「み、美波、」
俺の呼び掛けには反応はなく、吸われたり口に含んだ部分がぺろぺろと舐められてる気がする。
これダメでしょ!犯罪ですよ!
俺は犯罪者にはならんぞ!
「うおぉぉぉぉ!」
「は、春?」
「これ以上はダメだぁぁ!」
精一杯の近所迷惑をかまして、部屋を出た。
やれるやったよ、俺は。
□
「落ち着いた?春、」
それはこっちのセリフだと言いたいけど、いったら何されるか分かったもんじゃないから言いません。
「うん、落ち着いた」
「そっか、アレってそんなに嫌だった?」
「……」
どう答えたら良いのこれ。嫌って言ったら?美波が悲しむ。良かったって言ったら?さっき回避したはずの犯罪者エンドがまた現れる。
ふんわり誤魔化そ、それが一番!
「ん〜、驚いただけだよ。美波が嫌いなわけじゃない。」
「よ、良かったぁ」
ほっと胸を撫で下ろす美波、胸に目がいく俺。
「春?」
「ごめんなさい!」
女性って視線に敏感らしい。見るつもりはなかったんだよ?ほんとほんと
「春なら良いけど、触るならそっちのもね?」
「えっ?どういうこと……」
お、俺の雄っぱいってこと?無いどころじゃないけど。……でもそれで美波のが触れる?それなら安いもんだ雄っぱいの一つくらい。
「ほら、良いんだよ?ほらほら」
「触りませんっ」
といっても触らないよ?そういうのは付き合ってからって決めてるもん!
そういえば、美波って俺のこと好きなのかな?昔の話をした後はさらに色々激しくなったけど。
「美波?」
「なぁに?」
「……いやなんでもない、そろそろ準備しよっか」
「は〜い」
今は聞かなくて良いや。本当の気持ちを聞くのが怖いのはある。でもそれ以上に聞いたら引き返せない様な気がする、、、
────────────
記念すべき20話目ですかね?
もう20話までいったというのが驚きです。
先日、週間ランキングで五十位を突破することができまして、皆さんが僕の作品を沢山読んでくれてることに感謝です!
最近はコメントを結構貰ってまして、そっちもめちゃくちゃ嬉しいです!!!
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