第7話 君のためなら仕方ない
ふぅ、いいお湯だったな。風呂入ったせいか、逆に目が覚めた、寝る前に授業の予習でもするか?
眠くなるまでの暇つぶしに何をしようか考えているとインターホンが鳴る。
咄嗟に時間を確認する。夜10時普段ならインターホンなど鳴る時間では無い。
おいおい、ルームサービスを呼んだ覚えはないぞ
あ、これ死亡フラグか
一応インターホンを鳴らした主を確認してから出ようとカメラを見る。
……碧ちゃんかい
安心はしたけど、ある意味安心できない。でも
開けないほうが怖そうだし開けます。
「はいはい、こんな時間にどうしたの碧ちゃん?」
「春くんがメッセージ返してくれないから、直接来たの、ちゃんと確認はしたよ?」
そういや、あの後メッセージ見てないや。スマホを取り出しアプリを開く。
──春くん寝ちゃった?
──春くん風邪ひかないように暖かくして寝てね
──今日は記念日だから、夜は楽しみにしてて?
──ゴムはいる?いらないよね?当たり前だけど
──春くん返事して?
──心配だしこれに返事なかったら家行くね
ふーん、これが恐怖ってやつかぁ。
人は寝てたら返事できないよ?あと、記念日って何?心当たり無さ過ぎるし、それと後半どうした
「あ、碧ちゃん、流石の俺でも寝てたら返事できないよ。」
「うーん、でもいいでしょ?どうせ今日は家行く予定だったし」
全くもって聞いてないんですけど。
「急に家ってのもなぁ、泊まりってこと?」
「うん!」
そんなに元気いっぱいで返事されても
困りますお客様、
「明日学校だよ?朝とかどうするの?」
「えぇ?春くん朝までするつもりなの?
私はいいけどぉ♡」
「何もしません、今日は帰りなさい?」
少し可哀想だが、今日は月曜日!お泊まりなんかできるか!今回は強引に行かせてもらうぞ。
ドアを閉めようとした時だった。
ガシッ
え、
閉まりかけたドアの隙間から手が伸びてきた。さきほどのメッセージの恐怖を軽く更新してきた。
「どうして?何がダメだったの?」
全部ですけど?
「あ、碧ちゃん、やめ──」
「うぅ、ひぐ、、、春くんひどいよぉ、、」
いきなりドアの前で泣き出す碧。や、やめろ、俺は悪くない。悪くないんだ
心が痛む。女の子を泣かすのはどんな理由でも
流石にくるものがある。
「わ、わかった。入れるから、ね?碧ちゃん」
「……うん」
□
またもや碧を部屋に入れてしまったが、今日は
状況が違う。一緒に寝るなんて事にはならないよな?
部屋に来る途中、夏樹には止められたが強行した泣いてる女の子をそのまま帰すわけにはいかんからね。
「……春くん?」
「ん?どうしたの?」
「もう、寝ちゃうの?」
時刻は既に11時を回っており、別に普段からこの時間に寝ているわけではないが、少し眠気を感じる時間帯だ。超健康体だからね!俺
「一旦、布団敷いてからなにするか考えよう」
「……いらない」
なんとなく言うとは思っていたけど、高校生の男女が一緒のベッドで寝るのは犯罪ですか?←犯罪になる可能性がある。
ふ、テレビ出るとしたら犯罪者側だな。将来を期待されてる選手を勘違いした男子高校生がー、
て感じかな
「碧ちゃん、流石にさ、一緒のベッドはまずいと思うんだけど」
「おねがいはるくん。ナニモシナイカラ」
疑ってくれとでも言ってるようなおねがいだな。
でもなぁ、また泣かすわけにはいかないし
「分かった。でもお互い背を向けて出来るだけ距離あけてよ?」
「むぅ」
取り付けられた条件に拗ねているかと思ったが、多分、あの感じはまだ何か仕掛けてくる。
てか何でこんな事になってるんだ?確か記念日がどうとか言ってたな。直接聞くのが早いが、それが一番難しい
なんて考えてたら碧はもうベッドに入ろうとしていた
「碧ちゃん、もう寝るの?」
こくん、と頷く
「春くんもいっしょ」
泣いた後だからかいつもと違い、しおらしい彼女は守ってあげたくなる可愛さがある。
「まぁ、明日も早いし。もう寝ようか」
と言いつつも体が動かない。これから一緒のベッドに入る相手である碧をチラッと見る。女の子らしいゆるくふわふわしたパジャマ、髪も編み込んでいたのを下ろしている。……正直抱きしめたい
「どうしたの?入らないの?」
毛布をめくって中に誘い込むように聞いてくる碧
碧が女子高生?俺が男子高生?もうこの際関係
ないぜ!
女子高生と寝る覚悟は出来てるか?
俺は出来てる
電気を消し、ベッドに向かう。その先に碧がいるだけなのに何故か意味深な気持ちが湧いてくる。
理由もなく音を立てない様にゆっくりと入り、碧に背を向けて目を瞑る。
「春くん」
返事はあえてしない。寝るだけ、俺は寝てるだけ
とても静かな空間、ただ、俺と碧の小さな呼吸だけが部屋に響く。
ススス
碧がこっちを向いたのか布の擦れる音が良く聞こえる。
「私って迷惑?」
「え?」
急な質問に驚いた。それでも一応、碧を牽制するために俺はこっちに来ない様に伝えるか声を出すか迷っていた。すると
ギュッ
「あ、碧ちゃん⁉︎」
驚きつつも小声でそう言う
「ごめんね、ごめんなさい。春くん」
予想とは裏腹に碧は泣きそうな声でそう言って背中に顔を押し付けていた。
どういうこと、、、
何が起きたか分からず、状況が状況なだけに放心していたが、泣いて震える碧に気づき背中を向けたまま話す。
「碧ちゃん、何かあったの?」
ふるふると頭を振るのを、背中越しに感じる。
「碧ちゃん、なにかあったなら遠慮なく言ってね相談相手にはなるよ。俺」
またもや頭を横に振る。だがさっきとは違い、口を開いてくれた
「……春くんは変わらないね。…ずっと優しくて私のことを一番に考えてくれる」
……ずっとか、
碧の中では俺はどんな人なんだろう
「私も春くんに近づきたくて、頑張ったけど、……また迷惑かけてる」
碧のことを迷惑だと感じた事など一時もない。逆に何故俺のことを何故好いてくれてる?のか知りたいくらいだ。
「碧ちゃん。俺は君のことを迷惑だと思った事はないよ。一切ね」
「……ほん、と?」
「あぁ、本当だ」
安心したのか震えはおさまっている。それでも、まだ抱きしめてくるこの手は強くなる一方だ。
しょうがないな、碧を安心させれるなら社会的に死んでも本望かな。心の中でほくそ笑みながら、体を碧の方へ向ける
「…え?は、はるく──」
こんな事する予定なかったんだけどな。
俺は碧を抱きしめた。
「⁉︎」
真っ正面から俺の意思で、ただ碧を安心させたい一心で
「春くん…春くん!」
抱きしめ返してくる彼女の力はさっきよりも強かった。でも、何かを確信した様な温かい抱擁だった。
また泣き出してしまったけど、それは嬉し泣きであったらいいな
────────────
7話目です!
今回はちょっと感動回かな?碧ちゃんは結構掘り下げれたんで、そろそろ次の子かな?
6話目までに反応くれた方々ありがとうございます
またまたフォローやハート、気軽にコメントお待ちしております!
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