俺を踏み台にして他の男と付き合った幼馴染が、俺の新しい彼女を見て泣き崩れている

@stay_

第1話

 大学二年の春、恋人の美咲に突然振られた俺──柊真。


 理由は「もっと刺激的な人が好きになった」。


 傷心の俺を慰めてくれたのは、美咲の元親友だった一ノ瀬楓。彼女は美咲の身勝手さに呆れ、俺に優しく寄り添ってくれた。


 そして数ヶ月後、楓と付き合うことになった俺たちは、大学のカフェテリアで偶然、美咲と遭遇する。


 新しい彼氏に振られたらしい美咲は、俺と楓が手を繋いでいるのを見て──顔面蒼白。


「ちょっと待って、なんで楓が……」


 動揺する美咲。でも、もう遅い。


 俺には楓がいる。そして楓は、美咲なんかよりずっと可愛くて、ずっと優しい。


 これは、自分勝手な元カノが後悔に打ちひしがれる様を眺めながら、新しい恋人とラブラブになっていく、ざまぁ系ハッピーエンド・ラブコメ。


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 # 『曇らせてきた元カノが、俺の恋人になった親友の妹を見て青ざめてるんだが』


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「ごめん、真。私、もっと刺激的な人が好きになっちゃった」


 大学二年の四月、俺──柊真は、一年間付き合った恋人の坂本美咲にそう告げられた。


 場所は大学近くのファミレス。いつもと変わらない、何の変哲もない昼下がり。


「刺激的な人って……誰だよ」


 俺は呆然としながら尋ねた。


「サークルの先輩。もっとかっこよくて、デートもすごく楽しくて」


 美咲は申し訳なさそうな顔をしていたけれど、どこか晴れ晴れとしていた。


「真は優しいけど、なんていうか……地味なんだよね。一緒にいても、ドキドキしないの」


 ああ、そうか。


 俺は地味なんだ。ドキドキさせられなかったんだ。


「わかった。もういいよ」


 それだけ言って、俺は席を立った。


 美咲は「ごめんね」と一言だけ残して、去っていった。


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 それから一週間、俺は授業にも出ず、部屋に引きこもった。


 失恋そのものよりも、あの軽い扱いが堪えた。


 まるで使い古された雑巾を捨てるみたいに、美咲は俺を切り捨てた。


「真、まだ寝てんの?」


 ドアをノックする音と共に、聞き慣れた声がした。


 親友の佐藤隼人だ。


「鍵開いてるぞ」


 俺はベッドの上から答えた。


 ガチャリとドアが開き、隼人が部屋に入ってくる。


「うわ、マジで引きこもってんじゃん」


 隼人は呆れた顔で俺を見下ろした。


「美咲のこと、まだ引きずってんの?」


「……別に」


「嘘つけ。顔に書いてあるわ」


 隼人はため息をついて、ベッドの端に腰掛けた。


「あのさ、実は言いたいことがあってさ」


「なに」


「美咲のこと、俺の妹も怒っててさ」


「妹?」


 隼人には一つ下の妹がいる。名前は一ノ瀬楓──いや、佐藤楓だったか。


「楓、美咲と親友だったじゃん。でも最近、美咲が他の男と浮ついてるの見て、絶縁したらしいんだよ」


「……そうなんだ」


「で、楓がお前のこと心配しててさ。今日、一緒に来てんだけど」


「え?」


 驚いて体を起こすと、ドアの向こうから小柄な女の子が顔を覗かせた。


 ショートカットの黒髪に、大きな瞳。制服姿の彼女は、どこか気まずそうに俺を見ていた。


「久しぶり、真さん」


 楓は小さく手を振った。


「お邪魔しても、いいですか?」


 ---


「ごめんなさい、美咲のこと」


 部屋に入ってきた楓は、最初にそう言った。


「私、美咲の親友だったのに……真さんがあんな風に振られるなんて、許せなくて」


 楓は俯いて、拳を握りしめていた。


「いや、楓が謝ることじゃないよ」


 俺は苦笑した。


「美咲が選んだことだし」


「でも!」


 楓は顔を上げた。


「真さん、すごく優しくて、誠実で……美咲には勿体ないくらいいい人なのに」


 その言葉に、胸が熱くなった。


「……ありがとう」


「私、美咲に言ったんです。真さんを大事にしなよって。でも美咲、全然聞かなくて……」


 楓は悔しそうに唇を噛んだ。


「だから、絶縁しました」


「そこまでしなくても……」


「いいんです。あんな自分勝手な人、友達じゃないです」


 楓は真剣な目で俺を見た。


「真さん、元気出してください。美咲なんかより、ずっといい人、絶対いますから」


 その真っ直ぐな眼差しに、俺は少しだけ救われた気がした。

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