第2話

私がいるのは、バルベス辺境伯領にあるバンガラ村だ。

辺境のさらに辺境と言えばいいだろうか?

その村で唯一の雑貨店を営んでいるのが、私の父親だ。

名前はレーンという。

商品の仕入れや搬入は父親の仕事。

母親はお会計や接客を担当している。

母の名前はマール。

雑貨屋といっても単なる雑貨屋ではない。

王国内で一番大きい商会パトリック商会の支店なのだ。


王国のパトリック商会で行商人として商人をスタートした父親が

この村に来たときに、村では珍しいくらいに美しい母親に一目惚れ。

だが、まだ青二才な父親は独り立ちをしたら結婚してほしいと口説いたらしい。

母親も都会の男に口説かれたのは満更でもなかったらしい。

そして恋した父親はがむしゃらに商会内で仕事を頑張り、独り立ちの許可をもらった。

その時は商会内でもかなり出世していたらしく、何もこんな辺境でお店を出さなくても・・っていう声も上がったらしいけど、全ては母親のために反対を押し切ってこの村に支店を出したらしい。


商会内では単なる恋のために自分のキャリアを投げ出すなんてあいつはばかだと陰口を叩かれたらしいけど、そんな陰口なんて母親と結婚できる父親にとってはどうでもよかったらしい・・。


そして二人が結婚して一年後に生まれたのが私ルルだ。


そして私はバンガラ村で親の愛情と村人たちの愛情をたっぷり注がれながら育っていった。

途中で前世の記憶が蘇るというハプニングがあったけど、それ以来はまったりとして育ったのだ。


だが、一つ。私は前世の記憶が蘇ったおかげか、文字が読めるようになっていた。

そしてそれが父親と母親に衝撃をもたらした・・というかやらかした。


「ねえ・・パパ。この商品って確かマルトン産だよね?」

「うん?そうだよ。」

「これ。マルガンになってる。」

「うん?」

レーンは眼鏡を掛け直して、商品を見る。

「本当だ・・・って!ルルお前いつから文字が読めるようになったんだい??

うわあ!!マール!マール!!大変だルルが文字読めるようになってるぞ!!」


その時は私は完璧にしくじったことを知った。

しょうがないよね?だってまだ私5歳だもん。

幼い子供の思考しか持ってないもん。


パパはすぐにママを呼んで、すぐにお店を閉めた。

ちょうどお客様が誰もいなかったのが功をなしたみたい。


「で。ルルちゃんと説明してくれるかい?君は5歳だ。そしてまだ僕たちは君に文字を教えてない。というか。そもそもこの村で文字を読めるのは少ない。

君は僕たちの娘だけどあえて聞く誰なんだい?」

「レーン。そんな言い方はないでしょう?ねえルルちゃんママの質問に答えてくれる?2×5は?」

「え?10」

「「・・・・・はあああああああああああああああああああ」」

え?え??なになになに・・。って、あ!!掛け算なんて普通の5歳はできないじゃん!!

「パパ・・ママ・・あのね・・。聞いてほしいの?」

私は父親と母親に前世のことを思い出したことを全部話した。


「・・・。まさかなあ。」

「・・・。ええ。」

「うちの娘が神の愛子なんてすっっごーーーーーい!!え??前世にどれだけ徳を積んだんだ??どうしようマール。」

「私とんでもない子供を産んでしまったわーーー!いやーん。」


私はビクビクしながらいったのに目の前の父親と母親は狂喜乱舞してる。

父親と母親は落ち着いてから話し始めた。

「ああ・・神の愛子というのはね。ルルみたいに前世の記憶を持つ子供のことを言うんだ。その子供たちは、この国に恩恵をもたらしてくれると言われていてね。国や教会で手厚く保護される対象・・・ってうわあああ!!そうだよ!神の愛子なんて知られたらうちの可愛い娘が教会や国に奪われてしまうじゃないか!!」

「あら?そうだわ!!それは断固拒否よ!!あなた!!大事なルルちゃんを国や教会に奪われてたまるもんですか!!」

狂喜乱舞した後は顔を真っ青になった両親が目の前にいた。

「・・ふう。落ち着け。とりあえずルルはパパとママと離れて暮らしたいかい?」

断固拒否!!。うちの両親は優しいしかっこいいし綺麗だし、前世では普段見かけないほどの美男美女なの。こんな目の保養が毎日補給できるところから離れるなんて断固拒否!!

「あらあらまあまあ・・。ルルちゃんたらそんなにママのことが好きなのね?」

「ルルはそんなにパパのこと好きなんだな!」

そんなの当たり前!だってうちのパパとママは最高の親なのだ!


「パパとママから離れないでいるとなると・・・。」

「最低は町民。ベストは市民になることよね。」

「ああ・・。その前にもっと大事なことがある。後少しで6歳になるだろう?

6歳の儀に参加しないといけないってことだ。」

「ああ・・それがあるわね!」

6歳の儀ってなんだろう?

「パパママ6歳の儀って何??」

「そっかこの村はルルが一番下だったな・・。」

「ええ・・今回はルルが一人だけ。後は上か下だもの・・こればっかりはよかったわぁ。」


「ルル。これだけは言っておく、パパとママはお前がどんなギフトをもらっても絶対にお前を見捨てたりしないからな!」

「ええ・・それだけは覚えておいてねルルちゃん。」

スキル・・・え??スキルなんてある世界だったの??

しかもこの世界、両親のスキルからすると結構重要だったりするの??


「あ!そうだ。6歳の儀というのは教会に行って無事に6歳になりましたという

報告をヴェルーダ神に報告をするんだ。そしてその時に神様に6歳の祝福として

ギフトをもらうことになってる。その時に神の愛子だったら神の愛子としてギフトに記載をされる。そこで記載をされるまではまだ教会も国も保護の手を伸ばそうとする寸前までになる。ただギフトが勇者、魔法関連、聖人、聖女、英雄なら、問答無用で国と教会が囲むことになる。もしそうなってもパパとママは絶対にお前を救い出すからな!!」


そっか見捨てたりしないってそう言うことか・・・。

ああ神様!お願いです。私はパパとママとずっといたいです。

ですので教会や国に囲まれないギフトをください。

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