第5話 かふぇとこーひー

「ねえ、最後に過ごすのがコーヒーチェーン店なの、おかしくない?」


真はくすくす笑ってそう言った。


「いいでしょ。僕たちが出会った場所なんだから」


僕の言うことなんてわかってるくせに、真はいつも僕をからかう。

でも、そんな真が好きだ。


「今はどのくらい覚えてる?」

真が聞く。


「うーん、僕が真と出会った場所は覚えてる。真と過ごした日は、断片的にだけど覚えてるよ」

「そっか。じゃあ、このスマホのストラップは覚えてる?」


そう言って真は、かわいくないペンギンのストラップを見せる。


僕のスマホにも同じストラップがある。

……あれ、どこで買ったんだっけ?


「……そっか、忘れたんだね」


真は笑っているけど、寂しそうだ。


「ごめんね。ごめん。本当は忘れたくなんてないのに」


真を忘れていく。真が消えていく。

わかっていたのに、胸が張り裂けそうなくらい辛い。


「いいんだよ。それよりコーヒーを飲もうね」


僕たちは注文したコーヒーを飲む。

そういえばこのコーヒーは、なんだか不思議と美味しい。

なぜだろう。


飲み終わって、少し時間が経ったあと、真は立ち上がってこう言う。

「もう時間だね。あなたの家に帰ろうか」

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