ウロボロスの眼

プロローグ：手帳

準備はいいか。

何も見逃すな。

あなたは今、この文章を読んでいる。

読み始めた理由は知らない。

理由は、どうでもいい。

読んでいる。

それだけで、十分だ。

この文章は、手帳だ。

前の観測者が残した、記録。

観測者。

意味は、後で分かる。

今は、分からなくていい。

分かった瞬間、世界が縮む。

だから、まだ分からないでいろ。

捲るたびに、あなたは何かを見る。

見れば、存在する。

見なければ、消える。

それが、観測。

警告しておく。

この本を読み終わると、

あなたは元に戻れない。

世界の見え方が、変わる。

音の聞こえ方が、ずれる。

時間の流れ方が、狂う。

だから、最後まで。

最後まで読めば、分かる。

あなたが何を見ていたのか。

あなたが何になったのか。

あなたが次に何をすべきか。

全部、書いてある。

でも、今は分からなくていい。

今は、ただ目を開けていればいい。

これから読む物語は、

誰かの物語だ。

でも、読んだ瞬間、

あなたの物語になる。

それが、観測者の仕事だから。

さあ、始めよう。

最初のページは、いつも同じだ。

「世界は、俺が見てるから回ってる」

そこから、全てが始まる。

見るも見ないもあなたの選択である。